この記事の内容は、様々な資料をもとに書かれています。
内容の中には一部ないしは全体を通して、資料に基づく偏見や誤りがある可能性があります。また、筆者自身による偏見や誤りがある可能性も当然否定できません。
できる限り公平かつ事実に基づいて記事を書きたいと考えていますが、この点を踏まえていただけましたら幸いです。
今回のテーマは保守思想です。戦後日本の反動として、2000年前後から急速に力をつけてきた日本の保守というものを考えたいと思います。
はじめに
敗戦後の日本では、学生たちがマルクス主義に傾倒していき、各大学で学生運動が勃発しました。60年安保の時代から、やがて左翼過激派によるテロ活動へと発展しました。
この反省から日本では80年代あたりには若者を中心に平和主義的なリベラルや社会主義が支持されるようになりました。
また長く自民党に次ぐ第二政党としての地位を確立していた社会党が、次第に社会からの信頼を失い、新党ブーム以来、誕生しては消えていくといった政党の残渣が野党勢力として残りました。
戦後日本の中核的な政党となった自民党政党は、安定して政権を維持しています。
この自民党への支持と自民党への反発という両面から2000年頃に戦後生まれの世代から保守勢力が形成されていきます。
2010年ころにはネットで一大勢力となり、いわゆるネトウヨと称されるような言論へと拡大していきます。
現在の日本の保守勢力の大多数が自民党を消極的もしくは積極的に支持しており、また基本的には反韓国・反中国を主体とした言論を繰り返しています。
実際はこれ以外にも多くの保守言論があるわけですが、基本的には自民党を軸にした、嫌韓・反中の言論が主体であるといえると思います。
それでは、この保守というのがどういったものなのか少し触れていきたいと思います。
保守の定義と現代保守の傾向
保守の定義は、様々なものがあり、良くも悪くも人それぞれという部分があります。
また保守の定義は、保守派を自認しこれを擁護する側からの定義と、リベラル派・マルクス主義者を自認しこれを批判する側からの定義の、大きく分けて二方面からの視点が存在します。
従って、人それぞれに定義が違いますので、批判している対象にギャップが生まれることがしばしば起こり、自称保守派同士であっても、お互いに批判し合い、相手に偽物のレッテルを貼ることになります。
リベラル派・マルクス主義者は保守派はいずれにせよ批判する対象なので、保守派の広がりを概ね無視して、多数派もしくはより目立つ言論の特徴を捉えて保守とまとめて捉えることになります。
また、批判しやすい所を見つけ出し、それをほぼ全ての保守派の特徴として論じ、そうすることによって保守派全体を否定するという方法が採用されます。
保守派の側からの保守の定義は、基本的には現代人の認知の在り方が前提になっています。
つまり保守派はテレビメディアやインターネットで入手した情報などが主な情報源であり、ニュースなどの影響もあり、現代の政治家や知識人についての言論がメインになります。
つまり安倍総理を支持しているのか、櫻井よしこ、百田尚樹、青山繫晴、三橋貴明、竹田恒泰など保守派とされる知識人の言論や、虎ノ門ニュースやチャンネル桜、日本第一党、チャンネルくらら、そういったメディアや組織の言論が議論の中心主題になります。
重要な点は、歴史的観点から保守を論じられることが少ないということが挙げられます。これは特に日本特有の現象とはいえないでしょうけれど、少なくとも歴史的な観点から保守思想を論じるということは欧米では、知識人がしばしば言及する部分ではあります。
この点では日本の保守言論界隈ではおおむね議論されないことが多いと思われます。
歴史的観点から見た保守
日本の保守というものを論じるとき、歴史的観点からこれを論じるのは難しい部分があるかもしれません。まず、基本的に日本では保守思想の言論の伝統がほとんどありません。
何故なら、日本において保守を唱えるために必要な進歩主義的な、あるいは啓蒙主義的な言論が沸き起こりそれに対して反発が起こった歴史が非常に浅いからです。
私たちがもし日本の歴史から保守思想なるものを掘り起こそうとしたならば、それだけでも非常な労力を要しますし、おそらくは欧米の保守思想なるものとは別の探り方をしなければならないものと思います。
欧米の保守思想の始まりについては諸説ありますが、最も重要視されるのが、フランスにおける革命に対する批判であるエドマンド・バークの言論です。
ただし、欧米の保守思想の特徴ですが、決して発展的に進歩してきたという歴史はありません。
それは哲学史や科学史や経済学史のような形を取っていませんし、政治思想でいえば、マルクス主義思想や自由主義思想と比較しても、あまり系譜というものははっきりしていません。
人それぞれ、誰を保守と見なすのかというのは統一されておらず、エドマンド・バークがそうであるように、彼自身が自分を保守主義者だとも思っていません。
アメリカの政治思想家のラッセル・カークは保守思想の体系化をこころみていますが、いずれにせよ、人それぞれに解釈が多様になっています。
保守思想の歴史はイギリスのトーリー党を起源とする保守党の歴史との兼ね合いもあります。アメリカでいいますと共和党ですが、保守党と共和党が保守思想史の中でも重要な意味づけをされています。
実際はイギリスやアメリカの保守派政治家も多様でありますし、また政治家に限らず政治思想家も多様です。
ヨーロッパ大陸ではイギリスやアメリカのような保守政党について言及されることはほとんどありません。ただしフランスの政治思想家のトクヴィルや社会心理学者のル・ボンなど知識人についてはよく言及されます。
実際にところこういった知識人の間で主張や論点には大きな開きがあり、保守とはなにかという点についてはどこかぼやけた感じが残るというのは言えそうです。
一方で、政治家から社会心理学者、哲学者、作家、詩人、歴史学者などなど、保守思想というものを歴史的に言及した言論は非常に大きな幅があるがゆえに、多角的な視点で、現在の事象を捉えようとする傾向があるという見方もできるでしょう。
ジャコバンクラブ批判
以前にも紹介した通り、保守思想の父とも言われるエドマンド・バークが保守思想の父と言わしめた著作『フランス革命の省察』の中で言及されているのは、ジャコバンクラブへの痛烈な批判です。
保守がなんであるのかどうかの定義はともかく、エドマンド・バークという政治思想家はジャコバンクラブを批判したというのが、定義がぼやけている保守というものを支持する欧米の知識人の中で大きなインパクトを残したという事実が重要なのではないかと私は思っています。
繰り返しになりますが、ジャコバンクラブはフランスのフリーメイソンである大東社
やバイエルンのイルミナティと呼ばれる秘密結社の影響を強く受けていたと言われています。
当時の大東社のグランドマスターであるオルレアン公ルイ・フィリップ2世が所有するパレ・ロワイヤルが革命家の拠点となっていたという事実もあります。
またパレ・ロワイヤルには金融業者は出入りしており、オルレアン公もまた金融業者の意向を受けて革命に関わっていたとも言われています。
フランスでの革命を対岸の火事として傍観すべきではないとしたのが、エドマンド・バークであり、イギリス国内の革命支持者であるプライス博士が旧ユダヤ人通りの教会で扇動を繰り返していること、ジャコバン派の過激な破壊的革命運動に対して批判をします。
やがて反フランス革命の機運がイギリスで高まりトーリー党の首相である小ピットは対フランス戦争へと向かいます。
こういった当時のイギリスの動きは、かなりの程度で現在のアメリカのトランプ政権とも重なる部分があると私には思えます。そしてまた現在の日本の保守言論は、残念ながらこのような歴史的経緯に目を向けないために、トランプ現象の本質がつかめないでいます。
日本の保守言論界の盲目的な親アメリカ言論がトランプ現象の解釈を歪めているのです。従って私は基本的に日本の現在の保守言論を支持することができないのです。
2000年から一貫して歪んでいた日本の保守はこうして、フランス革命の首謀者たちの思想的子孫たちをバークに反して支持しているという異様な逆転現象が起こってしまっているのです。
実際に、現代の日本の保守は、リベラルや共産主義者と同じようにフランス革命の支持者なのです。それは戦後教育によって刷り込まれた価値観であるにも関わらず、自分たちのことを保守派だと思っていますが、実際は保守の起源とされる思想とは全く別ものなのです。
保守の逆転・ネオコン現象
日本の保守思想の逆転現象は、単に日本国内だけが原因とはいえないでしょう。
まず現在の自民党を思想的に形成していったアメリカの勢力にはニューディーラ―と呼ばれる共産主義者が多く、戦前に日本の敗戦革命を目指していた日本の共産主義者と呼応して日本の政治システムを構築していきました。
共産主義というのは新世界秩序を目指す人たちのツールのようなものです。自民党は戦後、保守思想というものとは無関係に、親米という形だけで国家を再建していきました。親米といっても現在のトランプ政権のようなアメリカではなく、ディープステートのアメリカです。
もちろん日本のためではなく、新世界秩序のための日本というものが目指されます。ニューディーラ―は決して過激な共産主義者ではありませんので、日本は戦前の教育システムの影響もあって、経済大国としての地位を築き上げます。
このことは新世界秩序を目指すデイヴィッド・ロックフェラーを中心とした勢力にとっては目障りでした。
時を同じくしてアメリカでは奇妙な逆転現象が起こっていました。それはアメリカのトロツキストが保守主義に転向するというものです。
以前にも紹介しましたが、ノーマン・ポドレツやアーヴィング・クリストルといったトロツキストが保守に転向し、トロツキズムの保守思想、新保守主義(ネオコン)の思想を生み出しました。
これによって、レーガン政権まではある程度重んじられてきたラッセル・カークに見られるような保守が追いやられていきます。
ここに誕生したのが秘密結社スカル・アンド・ボーンズに所属している元CIA長官のブッシュ大統領です。これにより完全に共和党の主流派がネオコンに占拠されていきました。
それまで特に民主党で勢力を誇示していたディープステートが共和党すらも支配する時代がアメリカで長くつづくことになります。
この影響は日本にも大きな影響を与えたと考えるべきでしょう。1970年代前半に三極委員会が設立され、日本の政界や経済界、財界もディープステートの影響下に置かれます。
戦後マッカーシズムの影響で一時は勢力を大きく削がれたディープステートも、ブッシュ政権で概ねアメリカのすべてを支配します。私はこの時代には既に世界の保守勢力が完全に瓦解したと思っています。
保守勢力がトロツキストによって簒奪されたわけですから、右から左までが、ユダヤ人の手に落ちたわけです。これは日本にも大きな影響を及ぼしました。
日本の現在の保守派も自分たちがまさかトロツキストの思想を支持しているとは想像もしていないことでしょう。トランプ政権に代わったと言っても、このことが分からないがゆえに、ディープステートを批判できません。
これが今日の日本の保守派の最大の問題の一つなのです。
まとめ
私は日本のリベラル政党も批判しますが、同時に保守政党も批判します。リベラル派やマルクス主義者も批判しますが、保守派も批判します。
彼らは自分たちが同じ思想を目指しているとは気が付かずに互いに罵り合っていますが、民主主義のスローガンでグローバリズムを目指しているという点で彼らは同じなんです。
日本をどこの馬の骨ともわからないグローバリストに明け渡しているということを全く気が付くことがありません。彼らが批判するロックフェラーの思想、イルミナティの思想が、実は自分たちの思想の根幹にあるということに気が付きません。
日本の問題とはこういうところにあり、日本の伝統を大切にしたいと考えている保守派であっても実は自ら伝統を破壊することに手を貸しているという事実を見ないようにしているのです。
さいごの一言
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