近年の政治思想にかかわる議論において、以前とはことなり多く議論されるようになったトピックの中に、共産主義と金融資本家との関係についてのものがあります。

 

かつての大戦のとき、ルーズベルト政権が日本を戦争に引きずり込んだというのはよく言われることですが、これについてアメリカのルーズベルト政権に紛れ込んだソ連のスパイである共産主義者たちが工作をしていたとされています。日本でもよく知られるハル・ノートはソ連軍情報部の協力者であったハリー・ホワイトによるものでしたが、当時のルーズベルト政権には多くの共産主義者が紛れ込んでいました。ルーズベルトが彼らに騙されていたのか、ルーズベルトがすべてを了解したうえで彼らと行動をともにしていたのかは知りませんが、いずれにせよ、当時のアメリカの中枢には多くの共産主義者、ソ連の協力者がいたのは事実です。

 

ハリー・ホワイトのほかにも商務長官のハリー・ホプキンスやアルジャー・ヒスなどもソ連のスパイだったと言われています。アメリカの社会主義者、共産主義者が日本を戦争に引き込んだという見解の著作は多くあります。

 

彼ら共産主義者とは別に、ルーズベルト政権を影で指南していたのが、資本家のバーナード・バルークでした。ソ連の共産主義者とアメリカの金融資本家であるバルークは第二次世界大戦にあって常に同じ方向を向いており、本来対立するかのように見える、共産主義者と金融資本家は事実上手を結んでいたわけです。これを単純に利害の一致と考える人もいますが、第二次世界大戦時のアメリカにあって指導的な役割を担っていた共産主義者および金融資本家も、更に核兵器の開発を主導したマンハッタン計画の多くのメンバーがユダヤ人でした。

 

保守派の中には、コミンテルンの陰謀によって日本は戦争に引きずり込まれたというものがありますが、これと部分的には情報を共有しているにも関わらず、全体として合意に至ってないのが、日本を戦争に引きずり込んだのは、何でもない、その多くはユダヤ人だったというものが存在します。

 

これらは保守言論の中で対立関係になっています。前者は後者を陰謀論者だと非難し、後者は前者を戦後保守と非難しています。前者はコミンテルン陰謀説、後者をユダヤ人陰謀説とでも呼ぶことにしましょう。私はこの議論は後者に分があると思います。コミンテルンの仕業であるというのは確かにその通りですが、そのコミンテルンにも、コミンテルンと協力した人たち、あるいは騙されていたとされる人たちのほとんどがユダヤ人もしくはユダヤ人コミュニティと小さくない関係があった人たちというのは事実です。

 

強いては共産主義というイデオロギーをつくったカール・マルクスがユダヤ人ですし、世界で初めに出来上がった共産主義国家であるソ連の初期の指導者の多くもユダヤ人だったわけです。さらにロシア革命と連動する形でドイツで起こったドイツ革命の主要な革命家がユダヤ人でしたし、東欧のその他の革命の指導者もまたユダヤ人でした。

 

ロシア革命はユダヤ人が共産主義国家の指導層になるための革命だったという元日本共産党の党員の方がいらっしゃいますが、これはカール・マルクスの『ユダヤ人問題によせて』の理屈と矛盾しません。これを肯定するか否定するかで、世界観は大きく変わることになります。日本の歴史教科書では、ロシア革命を前後して、たくさんのユダヤ人が覚えるべき必須の人物として登場しますが、それは日本の教科書が模倣している歴史学が基本的にはユダヤ人の歴史観に基づいて作成されているからと考えることもできるでしょう。

 

ロシア革命がユダヤ人による革命だったというのはヨーロッパでは革命直後からすでに言われていたことで、ヒレア・べロックの『ユダヤ人』にも丁寧な考察がなされています。アメリカで圧倒的なロビー活動による言論のコントロールを行っているのがユダヤ人コミュニティですが、彼らには、一般の人々に知られてはならない事実があります。彼らがロビー活動をしなければならない理由は、彼らがもしそれをしなければ生き伸びられないに違いないと思えるだけの理由があるからと考えるべきでしょう。

 

一般的な日本人は基本的にはロビー活動を行いません。行う意味すら見つけられないという人が多いことでしょう。逆にロビー活動を必死にしている日本人もたまにいますが、彼らはロビー活動を必死にしなければならないだけの理由があるわけですが、それは理念や理想のためだけにやっているとはいえないかもしれません。ロビー活動を行うためにはそれ相応に熱量が必要となります。そして彼らにはそれを行わなければならないだけの熱量や動機が必ずあります。

 

世界中でナチスが行ったとされている600万人の虐殺をホロコーストとして、人類最大の悲劇であるかのように論じられますが、それとは別にソ連や中国共産党など共産主義勢力が行った虐殺や飢饉による大量死は全く黙殺されています。ウクライナで行われたホロドモールという大量死事件などは共産主義勢力が行った事件であるがゆえに、大々的には宣伝されません。これらが宣伝されると困る人たちがいるからです。特に共産圏における殺戮の中でも、ユダヤ人たちが関わった事件などはほとんどが議論されることはないのです。もし、ホロドモールが議論された日には、反ユダヤとして、ネオナチのレッテルが貼られるのが目に見えています。

 

これは彼らの情報戦略であり、彼らがこれを行わないことは彼らにとって命取りになりかねないと思えるものなのです。ヨーロッパにおけるユダヤ人問題というものは一般的な日本人がもっている常識では理解できない闇が存在しています。それは今日、ネット社会になった今、少しずつですが、彼らのタブーというものが明らかになってきています。これらのタブーが人々の目にさらされないようにするために様々な情報戦略が練られ、実践されているわけですが、私たちはそういった情報空間の上で、マトリックスのような世界で生かされているのだという、議論がまことしやかに議論されるようになってきたのが、現代という時代なのです。

 

現代社会は嘘でできているということを私たち日本人は概ね知ることができません。それが現代日本の閉塞的状況を作っているとは誰も考えもしないでしょうが、残念ながらそうなのです。