「リアルワールド」
桐野夏生


 

 

母親を殺して逃走する少年、ミミズ


ミミズの隣家に住む女子高生、ニンナことトシコ

ニンナの友人たち

ユウザン、キラリン、テラウチ


とんでもない事件を引き起こしたミミズを遠巻きに眺めつつも

興味や羨望が抑えられない女子高生たちのひと夏


やがてそれは思いもよらぬ事態に…





ミミズの当てもない逃亡劇、

それに対する女子高生たちそれぞれの複雑な心境から目が離せず

どんどん読めた驚き



特に、高校3年生の女子たちの


自分はトクベツ、自分はくだらない、

自分は不幸、自分は強い、

自分以外みんなバカ

自分以外みんな幸せ

あの子だけはみんなとちょっと違って頭が良い(あの子だけは自分に釣り合う)



みたいな、とにかく

自分自分自分中心で世界をみている感じ

がすごく身に覚えがありますわ滝汗



自分の世界の狭さとか、相手の浅はかさなんかはよく見えてるのに

自分の幼さや矛盾にはなんとなく目をつぶっている感じ



山中十四子という落ち着き払った本名でありながら

「ホリニンナ(堀仁和と書くらしい)」という自分だけの本名を設定するなんてところもよだれ



「本当の自分」はこんなんじゃないっていう

厨二心を思い出してワーとなる



そして、物語は絶妙なバランスで

危険さと軽妙さの舵取りをしながら進んでいたんたが



突如起こる

ジェットコースター的悲劇


桐野夏生作品らしい容赦なさガーン




あくまで現実は残酷なもの


実際、殺人なんかして

殺人犯なんかに憧れたりして

どこまでもお気楽な逃避行なんて続けられるわけがない



自分が悩んでいるように、他の人も悩んでいる

そして、自分ではどうしようもできないことの多さ

それは、死ぬまで続く焦り

だけど、死んだらすべてが終わって取り返しがつかない



これ上差しこそが現実の世界を生きること

なのではないだろうか



それをひと夏で嫌と言うほど知ってしまった彼女たちは

もう自分が「誰が別の人間」であるかのようにスカして生きることはできない



今までもこれからも自分と自分に起こったことを受け止めて

リアルワールドを生きていくしかない



当たり前のように思えるそんなことが

なんだかものすごく絶望感のあることのように思えてくる読後感…真顔