「今日もやっぱり処女でした」
夏石鈴子


 

 

山口あおば、24歳、処女。

派遣社員で働きながら、イラストレーターの塾に通っている


「1年間だけ一人暮らしをしたい」と家を出た父

「もう朝食を作るのは嫌になった」という母

おどろきの過去を持つ同僚の福貴子さん

家族のようにごはんを出してくれたりする画塾の先生


うつむきがちのあおばが、新しい世界に出会う話





どうしてこのタイトルにしたんだろ?と途中で不思議になってくるくらい

処女うんぬんは話にあまり関係がありません笑



関係がないというか、あるんだけど

それはあくまで「性体験の有無」だけの話ではなくて



自分の人生にいままでなかった経験や世界、価値観

そういうものは、どうしても想像だけでは実感がわかないけれど


でも、想像できないだけで確かに存在はしていて

そんな新しい世界はふとした瞬間に、自分の人生にもやってくるかもしれない

というお話だと思った



そういう意味では、たしかに性体験というものは

実際やってみるまで皆目見当もつかないが、

いちどやってみると驚くほどありふれたものに変化したりするから

インパクト含めてピッタリのタイトルなのかもなキョロキョロ



処女であることだけが理由ではなく、

人間関係で心が折れて会社を辞めた経験や

まだまだ夢の途中である現状から

あおばは新しい世界に踏み込むことにどこか自信なさげである



っていうか、まだ24だし

それに、新しい世界に自信満々で踏み込める人のほうが少ないよね



でも、


還暦目前に突然反抗期のようなことを言いだして家を出た父親や

そんな父親を受け入れながらも、淡々とこれまでの自分を見つめ直す母親

むかしは「ずんどこルミちゃん」だった福貴子さん



そんなふうに、


人はそれぞれ、その人に訪れるべきポイントで

さり気なく転機が訪れて、



それが訪れたら、たとえ不安で自信がなかったとしても

おずおずと受け入れて変化していくしかない

一歩踏み出すしかないんである



あおばもきっとそうだし、

それは私にもいえることかも



踏み出すまではなにもわからない、

でも一歩踏み出したらいろいろ見えてくる



だから、まだ見えない新しい世界をやみくもに怯えてないで

そして、ずっとこの世界から出られないかもしれないと怯えたりもしないで



いつか新しい世界に出会うだろう

そのときは一歩踏み出せばいい



漠然とそう思いながら生きていってもいいんじゃないか?



そんなふうに、なんだか気持ちが軽くなるような読後感だった






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