「中学んとき」
久保寺健彦 


 

 

この町には二月中、三月中、四月中、五月中の、4つの中学校がある

(ちなみに一月中は廃校)


そんな町の中学に通う「中学三年生男子」たち四人のオムニバス



もと中3女子だった私にも身に覚えのある

イライラ、ドキドキ、ムラムラ、ズキズキがいっぱい



ただ、表紙や帯の感じから

もっと笑えるノスタルジーかと思いきや



当時のドロドロとヒリヒリが甦るリアルな中3感



私は現在四十代なかばの中年女性でして、子供を育てていまして

育児を通して過去の自分を追体験する感覚もあるのですが



正直、中学時代の追体験がいちばんキッツイ!!


アレを二度と繰り返したくないし

自分の子供が同じ想いをするかと思うと震える!!



いや、とくに大きななにかがあったわけじゃないんですが


細かいことは山ほどあったよなぁ

自分ではどうにもできない世界との違和感、敗北感、どうしようもない破壊衝動



本書は短編集


うまく行かない恋愛の四角関係を描いた「純粋恋愛機械」

少年の持て余す苛立ちをを描いた「逃げ出した夜」



そして、お約束のテーマというか

イジメをテーマに描かれる「ハードボイルドなあいつ」



どのお話も、感じたことのある気持ちがそこここに散らばっていて
読んでいて胸が苦しくなってゲンナリするほどチーン


一番好きなのは
そろばんに打ち込む中3生を描いた「願いましては」


そろばんもそうだが、当時夢中になったことや打ち込んだことは
たいてい大人になるまでにはやめていることが多い

あの頃だけの、あの頃だからこその一生懸命

でも、あの頃はそれが世界の大半だったし
それに打ち込むこと、それを目指すことが未来に続くまっすぐな一本道だと信じて疑わなかった


登場人物たちも、そろばんを大人になるまでにやめてしまう者もいるだろう
だけど、この中3の一時期に
受験や恋愛と肩を並べるくらいそろばんに打ち込んだことは
生涯忘れることはないし、将来の自分にもなにかしら作用する

私にもたしかにそんな「たった一つのモノ」があった気がする



わたしの中学時代はよくわからないけどとにかくハードで理不尽でしんどかったガーン

あの頃の苦しさが、今になっても半分は説明がつかないし
半分くらいは説明できる気がする

それを、これからこの狂騒を通り抜ける我が子たちに伝授したいとよく思うが
きっと親の言うことなんて響かないんだろうね〜


15歳を切り抜けた者だけが、
15歳を語れる!
ニヤニヤ名言ぽくあたりまえのこと言う