映画
「息を殺して」


 

 

大晦日の前日、職場になんとなく残る人びと

女子社員のタニちゃん、おっさんのヤナさん、ゲーム好きなケンくん
サバゲー大好きなゴウ、既婚者の足立さん

あとは
迷い込んだ犬と、幽霊がふたり




めっちゃ奇妙な映画です


幽霊が出てきますが、ホラーではありません



が、この映画に色濃く漂う

「なにかが今現在、静かにどんどん悪くなっていってる予期不安」

みたいなものは、私がいつも苦しんでいる不安感に似てるように思った



幽霊の正体は

メンバーのひとりのお父さんと、

戦死した同僚です



そう

この物語の世界線として


「国が軍を持って、現在は戦争中ではないものの

紛争地に派兵され戦死者が出ている」

という設定なんです



映画のストーリー自体は、簡単に言えば


職場に残ってダラダラ過ごす人たちの怠い人間関係って感じで

この戦争設定はあまり関係ないっちゃないんだけど



この「確実に戦争に向かっていってる設定」というのは

観るものにとっても、おそらく登場人物にとっても

色濃く影響を与えていると思う



年末だというのに、

たいした仕事もなさそうなのに、薄暗い工場のような淋しい職場で

何日も帰らずにダラダラと残っている人たち



理解不能の行動ですが

戦争になるかもしれないみたいな世界情勢下だったらなんかわかるんだよなぁキョロキョロ



登場人物たちも、

恋人に子どもができたのにのらりくらりとかわしていたり

不倫相手の気を引きつつもごまかした付き合いをしたり

クソなやつ多めなんだけど



世界がどんどん悪くなってるのに

自分だけものごとに誠実に向き合うのは馬鹿らしいという気持ちも理解できなくはない



 

「たぶん、なにを選んでもみんな幸せにはならない」

「ずっと我慢して黙ってたらぜんぶうまくいくような気がしてくる」



こんなセリフ上差しがあるんですが



これまさに

絶望ですよね🤩

 


誰にも共感できる登場人物はいないのに
この、どんどん物事が悪化していってるような不安感はめちゃくちゃ共感できる

悪化していってるのに、自分にはどうにもできない不安感ね
我慢してたらなんとかならんかなみたいなね



正直、幽霊はこの映画になんで出てきたんだろって感じなんだけど


登場人物たちはそれぞれの抱える重苦しい気分にもはや慣れてしまって
それを表立って出すことはない


しかし中盤過ぎて、幽霊の存在が知れるあたりから
登場人物が不安や絶望や寂しさを吐露しだすシーンが増えるので


幽霊は慣れてしまって隠している意識すらない苦しみの突破口の存在だったのだろうか



がらんとした工場や、サバゲーした薄暗い森
広い空間のシーンが多いのに


めちゃくちゃ閉塞感のある映画…チーン



はじめ、画面が暗いのと登場人物が似たような作業服を着ているので
誰が誰だか、人間なのか幽霊なのか見分けがつかず
よってストーリーも理解できず


2回目を観たんですが



けっこう序盤からそこここに幽霊が出てた
意識しないところにも、いつも近くに不安はいるってことなのかなぁ


何度も観たらさらにいろんな考察が出来て興味深そうな映画なんですけど

いかんせんなんか不安な気持ちになるので…
勇気がいります…


ただ、よくわからないなりに面白かったです