「夢巻」
田丸雅智


 

 


美しいような、ちょっと怖いような、ユーモラスなような
不思議なショート・ショート20篇




ショート・ショートといえば、まず思い浮かぶのは

星新一


 

 


この一冊はそれともまたちょっと違って

もしも〇〇が▢▢だったら!

みたいな唐突な設定があって、それに大きな理由もなく物語が続き唐突に終わるダッシュダッシュ



なんだか不思議なテイスト笑




1.蜻蛉玉


もしも、秋空に無数に飛ぶトンボは美しい蜻蛉玉から生まれていたら…?


しかも、蜻蛉玉の素はただのガラスではなくて…


この世とあの世を繋ぐようなちょっとホラー要素もありつつ

蜻蛉玉と秋空の美しさが浮かぶような叙情的な一編



2.妻の力


もしも、悪妻にはブラックホールのような吸引力があるとしたら…?


そして、もしそうなら、良妻は…?


とんでもない悪妻だけども、旦那は大人しく尻に敷かれっぱなしみたいな夫婦いますよねぇ

真顔うんうん


1話目の美しい叙情と打って変わって

なんだかユーモラスな一篇



3.大根侍


もしも大根が扱える者にしか扱えない名刀だとしたら…!?

買い物の帰り、突如大根侍に絡まれて
大根刀での侍の修行をすることになった男の話


なにからなにまで唐突なんですが、そういう話です笑


4.みみずの大地

もしも、手帳のページがある日
広大な大地となりミミズやアサガオや野菜が生き生きと育つ
豊かな土壌となったら…!?

なんで!?の連続なんだが、そういう「もしも」物語なんだから仕方ない


スケジュールに負われ疲れ果てた人間の
「土をいじって大地とともに生きる生活がしたい…!」という現実逃避にも思える


5.白メガネの男


もしも、眼鏡こそが人間の本体で
それ以外の顔や体が装飾品なのであったら…!?


男は、自分の本体である白メガネだけ持って新しい装飾品であるところの身体を得ます
つまり、今までのメガネ以外のカラダは捨てます

死体が残るってわけね笑

ホラー濃いめの作品

すべてリセットしたくなる気持ちを表現しているのかなぁ無気力


6.リモコン


もしも、リモコンが意思を持った生き物で
ダンゴムシみたいに庭の大きな石の裏なんかに集まっていたら…?


これまた唐突な設定なんだが

リモコンがすぐどっか行ってしまい
「生きてんじゃないの!?💢」となった経験はあるのでなんか共感


7.文字

もしも、文字が立体になって
ボールや浮き輪やクッションみたいに使えたら…?


文字もそうだけど文化も少しずつ変わっていくって話かな?
文字ひとつとっても
現代は、手書きよりパソコンやスマホの文字が主流になって
人びとが文字に求める意味も必要性も変わってきていますよね


それはともかく単純に
アルファベットのOを浮き輪にするのとか楽しそうだw


8.試練

もしも、ある日、エレベーターの止まる階がルーレット形式になってしまったら…?


答え→とても大変


いやあたりまえっ!ニヤニヤ


でも、急いでる朝のエレベーターとか渋滞とかって
なんかの罰ゲームかっ!?ってくらい滞って感じるよね

そして、エレベーター待ちの時間はその場にいる人と無言の連帯感があると思う笑
それこそ、ルーレットの行く末を息を呑んで見守ってるような


9.千代紙

もしも千代紙の模様が、ホンモノの傘や鯉を材料にしていたら…?


第一話の蜻蛉玉みたいなファンタジーな話かと思いきや

思考停止している人間は千代紙の材料にもできないゴミクズ
みたいな結末でなんかヒンヤリした驚き


10.干物

もしも、服を干物にして食べることができたら…?


もう、もしも〇〇だったら?以上でも以下でもない話なんだけど笑

いい服ほど、大切に着古した服ほど味わい深い干物になるってのはなんかわかる


11.綿雲堂

もしも、美しい雲を飼育して売っているお店があったら…?


美しい雲のエサは果汁の多く含まれたジュースってところにロマンを感じた