「豆腐の角に頭ぶつけて
死んでしまえ事件」
倉地淳
コレの続きです

「豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件」
昭和十九年十二月初旬。大東亜戦争の戦局が厳しくなる中
帝国陸軍特殊科学研究所では、とある奇想天外な新兵器の開発が秘密裏に行われていた
空間転移式爆撃装置
もしこれが実用化されるなら、
突如ホワイトハウス上空にバクダンを降らせることもできる代物だ
さてそんな研究所で、奇妙な殺人事件が起こった
二等兵が、まるで
「豆腐の角で頭をぶつけて死んだ」かのような状態で発見されたのだ

表題作。
被害者の傍らには豆腐が粉々に散らばっていて
他に凶器は見当たらず、豆腐が凶器だと言わざるを得ない状況
その不可解な事件が、
「現実空間がひっくり返る秘密兵器」の影響で
とつぜん天地が逆さまになり、天井の角に頭をぶつけたのだろう
というトンデモ理論で不気味なほどサクサク解決。
そう、このお話の恐ろしさはここにある
まず、この空間をひっくり返し一瞬でホワイトハウスを撃破するというトンデモ兵器も
そんなばかなと笑えない
当時の日本にも、実際にトンデモな作戦がたくさんあったんだから
人間魚雷なんて最たるモノですよね
女の子たちが軍の命を受けて
せっせと作った紙ふうせんに爆弾をつけてアメリカに飛ばすなんて作戦もあった
そんなトンデモ作戦が起こり得る状況
それは、相当の戦況悪化状態ということ
追い詰められた人間はなんでもやる
二等兵が殺されたのもただの偶然ではなく、
もちろん空間が転移したなどという理由ではなく
ちゃんと真実があります
しかしそこには、説明ができないほどの狂気
追い込まれた人間の狂気がありました
そこまで人間を追い詰める戦争というモノ
何も知らないで生きてきたはずの主人公たちが、
気づけばこの大規模な狂気のなかにいるという状況
それこそがまさにこのお話のいちばん恐ろしいところ…
