2020年
コロナ禍をきっかけに、東北への移住を決めた釣りマニアの西尾(菅田将暉)
住居のオーナーである百香(井上真央)と、その親衛隊の面々
百香の父(中村雅俊)
クセ強な地元民と、リモートワークで繋がる東京の同僚たちの間で
東北の空き家を利用するプロジェクトを進行することになり…

釣りダイスキ、魚ダイスキな西尾がコロナ禍をきっかけに東北に移住し
そこで地元民に揉まれながらも釣りと地元グルメを楽しみ馴染んでいく移住ストーリー
かと思いきや、それだけにとどまらず
田舎の過疎化問題
空き家問題
田舎の閉塞的な人間関係
東京の人間との価値観の相違
などといった難しい問題も繊細に描かれていると思う
そして、東北なのでもちろん東日本大震災のことが描かれます
映画の舞台になった2020年、世界はコロナ禍一色に陥ったが
そのとき、震災や原発のことを考えていた東北以外の日本人はどれくらいいるんだろう
正直、それは過去の大問題で
今はあたらしい大問題「コロナ禍」に精一杯という人は多くなかっただろうか
震災から9年たって
当然津波はおさまったし、原発のニュースも減った
だけどたった9年
実際に傷付き喪った人たちが癒えるにはあまりにも少ない時間だ
映画に出てくる東北の人々は
ときに人懐こく、ときに攻撃的で、ときに優しく、ときに図々しいんだが
誰一人として震災の傷の痛みを自分から語る者はいない
それは、この9年で
気の遠くなるくらい自問自答と諦めを繰り返した結果のように思う
そして、東京から移住した西尾のような
「東北以外の人」は、
あの日から気軽に「東北が好き」と言えなくなったところはないだろうか
魚が好き、海が好き
だからどうした、あの日の悲劇をどれくらい知っているのかと
東北の人に何も言われてないのに
勝手に脳内で自分を責めるような気持ちがありはしないか
それに対して、居酒屋のケンちゃんという人物がひとつの答えをくれる
「ただ、見てくれれば良い。たまに見に来てくれれば良い」
え?そんな感じでいいの?
それは許容?
それとも線引き?
話は変わるが、
この映画の菅田将暉さんを私の
ベスト・オブ・マイ菅田将暉に認定したい
しらないよ
ちょっと変わったキャラを演じてることがおおいイメージだが、
この、ただ健やかに釣りを愛する普通の青年役がめちゃめちゃ魅力的でした。
あと、ふつうの格好すればするほど見た目の良さが際立つっていうか〜
作品のマドンナ、百香を演じるのは井上真央
ほんとうにかわいい
しかし、言葉少なな百香もまた多くのものを背負っています…
車の中でMDを聴くシーン、
彼女の背負うモノの大きさにボロ泣きしました…
これは…彼女に前に進めだのそのままでいろだのなんにも言えねぇ…
(でもそれを言うのが田舎の人たちなんだけど)
地元民役の池脇千鶴と三宅健がでてくるんだが
個人的にこのふたりは怪演と表現したい
「田舎の人」をよくも悪くも煮詰めた濃ゆい演技だと思いました
三宅健を俳優として良いと思ったのはじめてかも…すいません
池脇千鶴といえば、「そこのみにて光輝く」という映画では
菅田将暉と姉弟役で
これまた魅力的な女性の役をやっていたんだが
俳優さんてスゴイよね