1999年のドラマ(2005年劇場公開)
「日曜日は終わらない」

なんとも牧歌的なタイトルですけど
内容は、なんといっていいか…
不気味な鬱屈!!
という感じ
これが当時NHKで放映されたってんだからさ…
(わたしは最近、契約してるケーブルテレビの再放送で視聴)
あらすじは
父親の工場で働いていたがリストラされた一也という青年
母親の家に戻ってからも居場所がない
(ちなみに両親はすでに離婚している)
祖母が車にひかれて亡くなるんだが、
母親が、その加害者の運転手とまさかの再婚
まず、この主人公の一也という青年
ほとんど喋らず、表情も変えず
求職活動にも普段着で行くし
ちょっと大丈夫ですか?
って感じ
ランパブでお気に入りのお姉さんと話してる時だけは表情があるというか
嬉しそうなんだが
かといってエロいことするでもないし
いったいなにを考えてるんだ?
受け答えもろくに出来ず
浴槽に沈んだりぼんやりと寝そべっているシーンか、
狂ったように自転車を乗り回しているシーンが多いのと
なんだか食欲だけはやたら旺盛で無言で食ってるシーンが多い
内気で朴訥な青年…という表現なのかとも思ったが
このドラマの作られた1999年
おそらく一也は私と同世代か少し上
キレる17歳が社会問題になっていたころ
一也のこの愚鈍さが逆になんか怖いな…と思って観ていたら
やっぱりやってくれました
何も言わないからって
顔色が変わらないからって
なにも思ってないわけがない
父親からのリストラ
就職はみつからない
祖母を殺した男と母が再婚
約束の日の雨
そんなことが積み重なって…なのか、なんなのか
まったくわからないが(そこがさらに不気味)一也が突然、とある事件を起こします
物語的にはそこで一区切り、前・後編に分けられそうなほど
大きなエピソードだと思うんだが
あくまでさりげなく、
そして周囲の人もあまりにさりげなく受け流してるかのよう
(不気味!!)
このドラマ、言動が激しい人や厳しいことを言う人、
言い争いや殴り合いのシーンなどはほぼ出てきません
なのにこんなに不穏

後半辺りからやっと一也の父親の苦悩だったり
物語で唯一と言える、一也の在り方へ批判的に疑問を投げかける人物が描かれ
ようやく、感情のカタルシスきたか!?
と思いきや、そうは行きません
一也は結局行けないままだったランパブ嬢とのデートなんか行ってます
このシーンもよく考えりゃ不自然で
何年も店に行くこともできなかった客とすでに店を辞めたランパブ嬢が簡単にプライベートでデート
しかも、ぼんやり海を眺めたり、なぜか山頂でキャッチボールや、しりとりをする
変なデート!
わたしこれ、もはや
一也死んだんじゃね?って思った
または、精神的な死?
精神的に未熟なまま死んだから、デートの妄想すら子供のよう
一也=死亡エンドは作中にもちょっと匂わせており
結局ははっきりしないのですが
たとえこのまま生きていたとしても、
今後、一也が主体的に幸せになることはないだろうとしか思えなかった
一也はあまりに空虚で
食う・寝る・ランパブくらい直近の欲求しかなく
この先をどうしたいとか、良くするためにどう行動しようとか
未来を建設的にを考える意欲は死ぬまで持てない人物のような気がしたからだ
未来が想像できないから、いつまでも閉塞感を感じたまま…
いっそ、死亡エンドが良かったんじゃ…
なんでこんなドラマつくったんだNHK…
こう書いてしまうと、あまりに悲壮的なドラマと思うかもしれないが
全体的にわりとさっぱり軽いというか
シュールな香りさえ漂います
脚本が岩松了とクレジットが出てなんとなく納得
これはきっと、この作品に隠されたメッセージがどうこうというより
「こういう人の、こういう生き方。」というものを楽しむ作品なのかもしれない
ちなみに、ランパブ嬢役として伝説のセクシー女優・林由美香さんが出演されてます
彼女の急逝がキッカケで劇場公開されたとか
甘い声と可愛らしい顔なのにどこか物慣れた年長者感