「蛇行する月」
桜木紫乃


 

 

それぞれの時代を生きる6人の女たち

彼女たちに共通するのは、「須賀順子」との思い出


順子のことを考えると、なぜかザワザワする

幸せがなにかよくわからなくなる


彼女たちを通して「順子」の生き様を追う25年間の物語



1984年、1990年、1993年、2000年、2005年、2009年の6章から成り

それぞれ別の女性が主人公となっています



彼女たちはみんな…現在の生活に悩んだり不満を抱えてはいるものの 

たとえばブラックな職場や、不倫恋愛や、マリッジブルーなど

そこまで大きく転落する者はいない印象



なんなら「順子」の人生がいちばんアリャリャって感じダッシュダッシュ



なのに、彼女たち6人の内面を読んでいると

しめっていて、汗ばむような、その一方で凍えるような、歯噛みするような

人間臭すぎる「渇望」を感じます



そしてみんな、なぜだが「順子」のことが気になる



さっきも書きましたが、順子の人生がいちばん…なんていうんだろう

表面的にみれば不幸せ、にみえるというか



順子は高校時代、担任教師に横恋慕してなりふり構わずアタックして大問題になったり

その後就職先ではかなり年上の男と不倫した挙句逃避行します

子供もできたのに籍を入れてもらえることもなく

綺麗とは言えない中華料理店を営み裕福とはいえない暮らしをし

成長した息子は手術が必要な進行性の目の病気がある



6人の女たちは皆、過去に順子と関わったことのある人たちで

折に触れて現在の順子のことを知っては呆然とします



順子が過酷な毎日を送ってるからではなく

順子がいつでもとても幸せそうだから



え?順子、今そんな感じなの?

順子ほんとうにそれで幸せなの?


じゃあ一体、幸せってなに?

みたいなね



彼女たちは彼女たちの価値観で、もっとよりよくもっと幸せを渇望しているんですが

順子と会って、その価値観が一気に揺らぐんです



順子という人は決して聖人ではないと思う

担任教師にマンガみたいなアタックして玉砕するし

妻子持ちのおっさんと逃避行しちゃったり

よく言えばひたむきな不思議ちゃんで、悪く言えば周りが見えない迷惑な人



だけど、彼女が幸せなのは本当だと私も思った



2009年の最終章では

順子の高校の同級生・直子は順子と久しぶりに再会する



もちろん順子は幸せそうだ。

彼女はもはや、今後の人生にいつか用意されているだろう死さえも楽しみなのである



ほんと?順子それマジ?

順子の人生って、なんだったんだ…真顔


って私も思ったよ


でも順子が幸せなのは揺るぎない事実だ



どの人生にも平等にいえるのは

未来のことは誰もわからないってこと


なにが起きるかわからないし、結局は誰しも運命に翻弄されるしかないといえる



どんな運命でも幸せになれるとか、

どんなときも幸せを感じるべきだとか、

そんなこと私はまったく思わない



だけど、だれがどんな人生に幸せを感じるかは人それぞれで

他人が決めつけたりするものではないんだな



そしてそれは私の人生にも言えることなんだ

私の人生がまわりからどう見えようと、幸せかどうかは私が決めていいというか


そう思うと、なんだか妙に奮い立つような気持ちになった






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