「闇祓」
辻村深月


 

 

不気味な転校生・要

彼に出会ってから、澪のまわりでは奇妙なことが起こるように。


連鎖する、侵食する人間関係の闇の物語



いやーー

おもしろかった!



読みやすいからどんどん読めるから、

だいたいこんな感じの物語かなーと察しやすいと思ったら

ぜんぜん違う展開に!



これもたぶん

境界性パーソナリティ障害とか

自己愛性人格障害

とか、近年ではそういう分類をされるような

歪な人間心理を描いた物語だと思われる。



かつてストーカー物のブームがあったように、

こういう人格障害物も近年多いように思うけど、



この物語が独特なのは、

そういう人格障害をもつ人物が周囲を闇のパワーで巻き込むのではなく

その闇のパワー自体が人を呼び寄せ、人格を乗っ取り、さらに周囲からパワーを吸うことで

なんと「家族」という形を保っている、という点



そう書くと、まるでそれは物語の中にしかない異常状態を描いたホラー作品のように思えるが



闇のパワーはなにも魔法のパワーで人を呼び寄せ人からパワーを吸い取るのではない

普通の人間と同じ言葉や行動で誘い込むのだということ

ただそれは、とても巧妙で絶妙なタイミングで効果的に使われる



この物語がいちばん怖いのは種明かしの最終章ではなく、

最後の最後のエピローグだと思う



え⋯こういうのってもしかして

自分のまわりにもあるかも?


さらには

自分自身が意図せずに毒を撒き散らしてることってあるのかも⋯?



たとえば、

自分は良かれと思ってとか

ここはこうすべきだ、などと思い込んで



意図せずに、いや無意識で意図的に

強い言葉を選んだり、相手をコントロールするような言動をとることが

自分には絶対にないといえますか⋯?



タイトルの「闇祓」は、闇を振りまく人間を祓うこと。


そして「闇ハラ」、つまり自分の心の闇を一方的に他者に押し付け相手の心を搾取する行為

「闇ハラスメント」



ダブルミーニングになっているのです…滝汗