とある事件をキッカケに、訪問介護センターを介して
寝たきりの老人たちの大量殺人事件が発覚する
犯人は、献身的な介護士の斯波(松山ケンイチ)
斯波は、「殺人ではなく救済」と言い放つ
彼を厳しく追及する検事の大友(長澤まさみ)だが、
斯波と接しているうちに彼女自身の内面にも変化が…

ストーリーはけっこう単純ですが、
丁寧に描かれているので心にまっすぐ来ます
斯波は、自身の父親の介護(ちなみに父親役は柄本明さん。スゴイ迫力…!)を通して
救いも出口もない深い穴の絶望感を味わったことをキッカケに
凶行に及びます
もちろんそんな理由ありえないと、激しく断罪する大友ですが
彼女自身も実は斯波の話を他人事と思えない事情があり
冷静を保てません
大友には、認知症の母親がいますが
幸い経済的に余裕があり、高級な老人ホームに入居しています。
これは斯波の言う
「穴におちる危険のない安全地帯からモノ言う人」そのものです
しかしその一方、生き別れた父親がおり
その父親の行く末に対し大きな責任を感じてもいます
父に対しても母に対しても、
大友には責任がないにも関わらず、結果的に負い目を抱えています
そしてそれは、たくさんの
「介護をする家族たち」にも言えること。
斯波の凶行の末
年老いた家族を失った介護者たちのなかには
「斯波のおかげで救われた」という発言をする人もいます
介護は綺麗事ではないのだとわかる
あなたの親なのだから
あなたは子なのだから
こんなありふれた言葉の呪縛で
地獄に引きずり込まれ抜け出せなくなる人がいるということ
抜け出したいと口にすることすら許されない人がいるということ
超高齢化社会を迎え
これは誰しも他人事ではない問題を扱った映画です
素晴らしい作品だと思いましたが、
あえて「ん?」と思うところをあげると
「介護はしんどい、ヘルパーのサービスを受けても家族の負担は半端ない」
「だからといって、殺人は許されない犯罪行為」
終始このせめぎ合いの映画で、答えはない問題だと思うのですが
途中、とある人物の
「迷惑をかけていいんだよ。誰だって迷惑をかけるんだよ」
というセリフがあるんです
うーん
誰に迷惑かけていいっていうけど、
結局は家族が被ってるってハナシだよね🤔
「迷惑をかけてもいい」が、この問題の答えの鍵だとしたら
ちょっと軽すぎるかなと思った
実際それで解決しないから苦しんでるし…
そして、同じく介護に疲れた末父親を斯波に殺された女性が
法廷で斯波に対し
「人殺し!」と罵るシーンがあるのですか
あれは本当に父の死を悼んでのことなのか?
もしかして
内心ホッとしている自分の後ろめたさの裏返しのようにも感じ
そうなると、
斯波って正しいことをしたって結末になっちゃわない?
さすがにその着地点はマズいよなぁ
と、ややモヤモヤしました
原作を読んでないので
映画だけではなんとも言い切れませんね
原作も読んでみたいと思いました
最後にひとつ、
この小説を映画化する途中で
障害者施設における大量殺人事件が起き
誤解を怖れ、映画化は頓挫しかかったそうです
うまくはいえませんが、私はこの映画を観て
その事件とこの問題は似ているようでいてまったく違うものだと感じました
