「るり姉」
椰月美智子


 

 

さつき、みやこ、みのりの三姉妹は

叔母のるり子が大好き。


オトナとコドモの中間のるり姉

いつも明るくて楽しいるり姉


ある日、そんなるり姉が入院した



再読です



はじめて読んだ時は切なくて胸が苦しくて

しばらく読み返せないと思いました



というのもこの本、すこし変わった構成でして

時系列がズレています



第一章でるり姉の病気がわかり、

そしてそれは想像以上に悪いもので…

と、いつも通りの明るく平凡な毎日に重く影を落とすところから始まります



そして次の章からはその数カ月前、約1年前と

時系列を遡るかたちでお話が進みます



読者としては

るり姉やるり姉を愛する家族たちのことを心配したまま、


病気の心配なんてなにもなかった頃のお話を読むことになるのです



るり姉が病気になる前の日々だって、


三姉妹の母、けい子(るり子の姉)は職場でイヤな目に遭っていたり

さつきやみやこは別れた父親に複雑な想いを抱えていたり

いいことばかりでもありません



だけど読者(私)としては、一章目を読んだからなおさら


過去の「あたりまえの幸せ」がまぶしい



朝起きて、挨拶をかわしたり、学校や仕事へ行って

1日が終わって家でごはんを食べたり

クリスマスにはみんなと集まったり

たまにはどこかへ遊びに行ったり



2章以降の登場人物たちは基本的に
これから待ち受ける不安のことなんて知る由もなく
当たり前を生きている


だけど読者(私)は願わずにいられない 
どうかどうか、この奇跡みたいな当たり前の幸せがずっと続きますようにと

そして、それが叶わないかもしれないことを第一章を読んですでに知っているんです


でもこれは、もしかしたら現実に生きている私たちにも同じことがいえますよね


毎日不満を言ったりグズグズしてばかりだけど
まわりには、小さな奇跡がたくさんある

まるでそれは当たり前のような顔して
ずっとずっとこの先もありつづけるかのように


だけど奇跡なんて、ずっと続くという保証はどこにもないんだ


そう思うと急に胸が苦しくなる
そして、急に目が眩む感覚
あまりにキラキラした「あたりまえ」が多いことに気づいて。


ツライ…
と、ここまで読んで思っていたのですが


最終章は第一章から4年後の未来が描かれています


るり姉の発病から4年
幼かった三女・みのりも高校生です


この章は救いだと思いました
人は前に進めるという奇跡。


るり姉の起こした数々のミラクルはなかなか誰しも真似できることじゃないけど…


ただ少しずつ前に進むこと
これは誰しも持つ奇跡のパワーなのではないかと希望がわくラストとなった


というか、
けっこう意外なラストだったので
ぜひ読んでみてほしい!
ステキなラストですおねがい