「うどん陣営の受難」
津村記久子
主人公・小林の勤務する会社では
四年ごとに会社の代表を決める選挙がある
主人公がなんとなく所属する穏健派:緑山一派は早々に脱落し
残るは若干強硬派の藍井戸一派・黄島一派の一騎打ちである
社内では、なんとか票を集めようとあれこれと裏で画策が働き…

帯には「ドタバタ社内政治コメディ」とあって
確かにユルく笑える文体なんだけど
わたし、読んでるうちにだんだん怖くなってしまいました
まるでこれ、まさにこの日本の政治に起きていることとまったく同じように感じて…!
いや、政治についてきちんと知っている人ならば違う印象を持つかもしれないけど
私のように、選挙には行くが
どの政党も耳障りのいいことを言っているだけで実現しないのではないか、
または耳障りのいいことの裏でとんでもない理不尽な企みが進行しているのではないかと不信がある
だからといって、この状況を打開する策も思い当たらず
疑ってるわりに、目先にぶら下げられた恩恵に目を奪われやすい
けっこうそんな人多いのではないだろうか
主人公・小林も、緑山派に属しているものの
政治的なことにはそこまで関心はなく
(強硬派を推すより夢物語であろうとも穏健派のほうが平定化できるだろうという意図はある)
なんなら緑山派の会合へも、会合で振る舞われるうどん目当てに足を運んでいる
そして、勢いを増す二大巨頭
藍井戸VS黄島の醜聞リーク合戦(パワハラや政治とカネの問題)

さらに、スパイのような者を送って
他派に属するものを少しずつ囲い込んで洗脳するような動きも

そういうときに狙われるのはやはり
気持ちが一時的に弱っている人や、不満を抱えている人。
小林と同じく緑山派の、ペットロスで落ち込んでいる池田先輩が狙われます。
ほんとまさに、魑魅魍魎の世界といえるんだけど
なら自分はどういう身の振り方をすべきなのかも具体的にはわからない。
ん?なんかおかしいなと思っても、まわりが拍手をしたらつい同調してしまったり。
どこに投票しても同じだというあきらめもある。
わかりやすい待遇とか手当てとかに気持ちがつられてしまう時もある
政治も大事だけど、目の前の生活だっていっぱいいっぱいだもんね
よく考えたほうがいいってのはわかるけど
その余力がない
だけど投げ出してしまったら、きっと後悔する
ただ、この物語における救いは
緑山派の人たちは、政治に関しては若干頼りないというかユルいんだけど
仲間を思いやったり尊重する気持ちがあることだと思う。
小林は他派のスパイから池田先輩を守るんだけど、
それは緑山派を減らさないためではなく、池田先輩自身に納得する判断をしてもらうため。
政治とか社会とか、大きい話ももちろん大事だけど
まずはすぐ近くの人を大事に思い尊重したいよね
とにかく緑山派の人たちはうどんが大好きで
その一点で団結しているようなところさえあり、
なにかとうどんを食べているので
読了後は無性にうどんが食べたくなりました。
そして、次の選挙には、
私なりにいろいろ調べて考えて臨もう!っと思ったんでした
