「おいしいごはんが食べられますように」
高瀬隼子


 

 

ソツのないサラリーマン二谷と

仕事もできるしやる気もある女子社員押尾

仕事はいまいちだけど、女性らしい気配りを忘れない芦川さん


いっけん「アットホームな職場」に潜む違和感



タイトルと表紙のホッコリ感に騙されたけど


すんげーザワザワする話!


どいつもこいつも不穏!



押尾は、仕事にはマジメだしやる気も能力もあるけど 

なぜ自分ばかりという不公平感もあり、

のらりくらり嫌な仕事から逃げてまわりから配慮されていてる芦川さんが気に入らず  

こっそり嫌がらせしたり彼氏を取ろうと画策する



芦川さんは能力、体力的に仕事に向かないけど

それ以上に精神的に幼くてちょっとハードなことからは逃げてしまう

そしてなぜか、可憐な芦川さんに周囲もそれを許さなければいけない雰囲気

芦川さんもそれを知ってか、周囲に媚びることにだけは長けていて、

そこにやりがいを見出してるフシまである

大変な仕事からは逃げるのに、毎日手作りお菓子を持ってくるとか。




二谷は仕事も気配りも人間関係も上手く、余計な自己主張はしないが

内心、なにもかもを憎んでいるしうんざりしている

芦川さんのことも見下しているが、同時にそこに惹かれてこっそりつきあっている




私的には

押尾<<芦川さん<<<<二谷

の順でキモい

押尾は意地悪ではあるがけっこう普通だと思った



二谷、歪みすぎてキモい!



二谷がここまで歪んだのもいろいろな原因があるのだろうが

とりあえず言えるのが


クソな職場からは早く逃げるが勝ち

真顔コレね



二谷はかなりの社畜で、

これではゆっくり食事を味わうとかバカくさくなるでしょうね



そして、健康な職場ならば

芦川さんもここまで異常に大事にはされないし

結果的にここまで芦川さんも憎まれてはないだろう



手作りお菓子?

甘いもの苦手なんで、ダイエットしてるんでパスします!ありがとう!

で終わる



人間、心をすり減らす環境にずっといて

それが自分の気持ちの有り様が原因だと自分を責めていたら

いつしか訳がわからなくなって

好きだったモノを憎んだり

本当に憎んでるモノから目を逸らすために、見当違いなモノを憎んだりしてしまいそうだ



それが、押尾にとっては「仕事」

二谷にとっては「食事」なのかなと思った





芦川さんは終始、あざとくて媚びてズルい女のように描かれているが、

私はなんだか気の毒にもなった



精神面、知能面において未成熟で

芦川さんは自分のなにが悪いか、どこをどうしたらいいかわからないのではないか



だからこそ、自分が唯一得意だと自信のあるお菓子作りや媚態で頑張ろうとしてしまう

その頑張り方が「職場」ではふさわしくないことに気づかない



そしてこの「職場」には

それはおかしいよ、そこじゃないでしょ、と正してくれる人はいない



おかしな風潮をおかしなモノとも思わず助長する人もいれば

おかしいと思いながらも流される人もいて


そして、この風潮で苦しんでいる人がいることを

内心楽しんでる人すらいるんじゃないかとまで思う




きっと芦川さんは、そんな自分をとりまく嫌な悪循環に気づいてはいるものの

その核心を掴むまでには思考が及ばない

気の毒な女性なのではないか



と、思ったんだけど



最後の一文読んでなんか背筋が冷えた



あれぇ…?もしかして芦川さん、

全部わかった上でやってる…?




この小説、よく考えたら

・二谷を中心とする第三者視点

・押尾の視点

のみで構成されてるんですよね



つまり、芦川さんは終始

他人から見た印象だけで描かれていて

彼女の真意はわからない



芦川さん視点でこの物語を読んでみたい

怖いもの見たさでしかないが、けっこう地獄絵図なのではないだろうか





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