「パパ」
岡部えつ


 

 

ニューヨークで出会った奈子とミンミ


奈子よりも10歳若く美しい娘だが、気分屋で自堕落なミンミ


そんなミンミに振り回されないないよう警戒しつつも

妙にミンミに惹かれてしまう奈子の

自分の内面を見つめ直す約二十年間の物語



時に迷走する女友達との無軌道な関係を長期間にわたって描いた作品


その題名が「パパ」

ということに、はじめ違和感がありましたが



奈子は、幼い頃に危険を顧みず趣味の登山で亡くなった父へ

ミンミは、3歳から離れて暮らしている業界人の父へ

それぞれ複雑な想いを抱えていて


それが少なからず、大人になってからの人生に支障をきたしています


だからやっぱり

この「パパ」はふさわしい題名なのです



だけど読み進めて思った


奈子とミンミ、抱えている問題は似ているようで大きく違う



奈子は自身のことを

「医者や学者なら、この欠陥になにか名前をつけてくれるだろうか」

と思う



それってたぶん

「愛着障害」とか「アダルトチルドレン」とか


もっというと

「境界性人格障害」とか「自己愛性人格障害」とかなのだろう



ミンミにも同じことが言えると思うが


ミンミと奈子で大きく違うところ



そのような記述は一切ないので、私の勝手な推察を書くのは軽はずみかもしれないが

ミンミは知的な問題があるのではないか。ってこと



おちょくって書いてるわけじゃなくてですね



20年の物語を読む限り、ミンミが自活できていた時期はほとんどない

常に誰かに寄りかかって生きている



それも、経済的な援助だけでなく

文字通り生活能力がない



おなじく父性に飢えた奈子とミンミだが

奈子は欠落感を持ちながらも仕事をし自立し、目標も持っている



ミンミは親が世話した仕事すらも続かず

お金の管理もできず

学びや将来の展望どころか、朝自分で起きることも難しい



これらすべて、先に挙げたような「こころの問題」として片付けるのは無理がある



きっと本来ならもっと幼い頃に両親が気づくような問題が見過ごされてきている

それこそがミンミの不幸でもあるのだけど



知能がIQというかたちで数値化されることに疑問を覚えることもありますが

ミンミのケースはもっと早い時点でなにかわかっていれば

もう少し生きやすかったのではないかと思った



さてそんな物語のラストだが


奈子は思わぬかたちでミンミの現在を知ることになります



きっとこれで良かったんだ、という現在なのですが

私はミンミの根本的な問題は見過ごされたままだと感じたので

どうしても不安は拭えないな、という感想でした




 

 

感想文★