「ニキ」
夏木志朋
「周りから浮くこと」
「人と違うこと」
を、過剰に意識する高校生・田井中広一
そんな彼がひょんなことから
美術教師・二木良平の異常な秘密を知る
田井中は二木に執着し…

田井中広一が昔から感じる周囲との違和感
なんとか周りに溶け込みたいと思う一方で
自分は人と違うと周囲に知らしめたいと自己顕示欲が暴走する
それがめちゃくちゃ身に覚えがあってキツかった
「ふつうの活発な少年」に見られたくておかしな方向に暴走してしまい
結果的に好きな大人から嫌われてしまうという少年時代のエピソードは
心情がわかりすぎてしんどかった
良いとか悪いではなく
「相手が無意識に求めてる自分」が、本当の自分とズレているだけ
それだけがこんなにもいたたまれない
対して
田井中が掴んだ二木先生の秘密というのは
ネタバレしますと
ガチロリコンで美術教師をする傍らロリコンエロ漫画家として活動している
という衝撃的なもの



こりゃー周りと違うとか相手が求める自分とズレてるとか
そんな生易しいモンじゃない

バレたらなにもかも失う爆弾級の秘密を握ってしまうのです
田井中は二木を嫌悪する一方で
「人と違う自分」を飼い慣らし「ふつうの世界」をサバイブする先輩として、
二木へ憧れのような複雑な気持ちを抱きます
ただまぁ、まずツッコミを入れたいのは
抱えてるリスクが田井中と二木では違いすぎるだろってのと
二木はロリコン漫画に昇華することで
自身のロリコン気質を完璧にコントロールしているという設定なのだけど
そもそも
ロリコン漫画家ってみんなロリコン嗜好なのかな?
ってことね
イジリー岡田さんも、エロいのはネタだけで
本当は下ネタ苦手なとても真面目な方らしいじゃないですか
突然のイジリー岡田
たとえ仕事だとしても美術教師がロリコン漫画家してる時点でヤバいっちゃヤバいんだが
二木が小児性愛者でいながらあまりにも理性的で爽やかすぎやしないか
もっと小児性愛者として、うえっとなるようなエピソード欲しかったですね
ポプラ社ではギリギリかな…
※二木が子供を襲うエピソードが欲しいって意味ではないです
小児性愛者でも、実際に誰かを傷つけずに性欲をコントロールしてる人はいると思うんですが
だとしても、
小児性愛者以外の人にしてみたら拭えない生理的嫌悪感があると思うんです
二木にも、そのように読者が反射的に嫌悪感を抱いてしまうようなエピソードが欲しかったかなと
物語のラスト
田井中のクラスメイト吉田によって、
二木や田井中の秘密が暴露されるピンチに陥ります
吉田、ほんとにチンケなイキリ散らかし野郎なんだけどさ…

彼はいちおう
「大多数」側の人間
大多数側ってだけで、どんなチンカス野郎でも市民権を得られるってのもまた真実
だからこそみんな、
「大多数」でいたがる
そして、人間は型で押したように同一ではなく
「人と違う」部分があるのもまた別の真実
その「人と違う」部分が、もし「大多数」に受けいれられなかったら…
それが白日のもとに晒されたら…
「大多数」の人々も、そんな恐怖を抱いているのかもしれない
だからこそ「異質」なものを目ざとく見つけては、それを囃し立てる
自らの擬態から目を逸らさせるかのように
私も、自分では普通だと思ってる本能が一般的には異常って可能性もあるのかしら

だってそういうのって、深ければ深いほど
他人と答え合わせしたりなんてしませんもんね
例えば、性癖についてとかさ笑
もし、今まで気づかなかっただけで私の性癖が異常だったとしたら…
もうここまできたら、気にしません!
自分を貫きます笑
