映画
「梅切らぬバカ」
珠子さんは、忠さんをグループホームに入居させることにするが…

可哀想でしょ!も、感動でしょ!もなく
淡々と、年老いた母と自閉症の息子の生活が描かれます
この話にこんなに長時間使う?という映画はけっこうありますが
逆にこの映画はあっさり1時間半くらいで終わってしまって
拍子抜けするくらい
魅力的なふたりをもっと見ていたかったです
だけど、現実は良いことばかりじゃない
そこももちろん淡々とえがかれます
忠さんは重度の自閉症ですが、
身辺自立はできていて、
発語は少ないものの暴力性はないタイプです
それでも、地域で暮らしていくのはこんなに大変なんです
グループホームの人も、就労施設の人も、ほんとにいい人ばかりですが
圧倒的に人手不足の様子
これも現実ですよね
グループホームに反対する近隣住人も描かれます
映画では忠さん珠子さん側から観ているので
反対住人はウザい奴らだとしか思えませんが
「障がい」という、よくわからないものに対する
漠然とした不安はなんとなくわかります
映画の中でもすでに大なり小なり直接的なトラブルが起きていて
そうなれば、住民の心理的抵抗感はますます強くなるだろう
住民が全部我慢しろというのは違う
でも、ここではないどこかに行けばいいでしょとホームの人たちを追い出せばいいというのも違う
自分からはかけ離れたもの、よくわからない相手だと思うから怖い
「障がい者」「反対住民」
この垣根を取っ払って一度互いを知り合うことから始められたらなにか違うだろうか
珠子さんと忠さんの隣家に引っ越してきた里村家は
はじめは忠さんに嫌悪感を持ちますが
とあることから個人としてお互いを知り合うことで
関係性が大きく変わります
ここはこの映画の希望だと思いました
この映画の感想ではみんな言ってることだが
忠さん役の塚地武雅さんが本当にスゴイ!
新宿野戦病院の堀井さんも虎に翼の雲野先生も忠さんも同じ人が演じてるなんて凄いわ
そして、母役の加賀まりこ様もすごく良かった
年老いた役ですが、なんていうか美少女感まである
「かわいそうな母親」って感じではなく
押しの強そうな占い師みたいな仕事をしてるのも良かった
基本的に強い母なんだが、
忠さんのことになると寂しそうで不安そうなところも垣間見えて
ただ単に初めから強い母だったわけじゃないんだろうなということがわかる
物語は、あまりなにも解決できないまま終わります
忠さんはグループホームを出てしまうし
それが現実なのだ
ちらっと
「珠子さんの家をグループホームにする」なんて話も出てくるのですが
それも現実的にはムリだろうなと私は思う。
ただ、忠さんの爪噛みの癖が直ったり
馬の縫いぐるみや馬へのコダワリも少しコントロールできているような描写があったり
重度の自閉症で、もう50歳だけども
忠さんなりに緩やかに成長しているのがわかる
この先、少しずつ説明を繰り返せば
庭の梅の木を切ることを理解するようになるかもしれないし
新しいグループホームに馴染める日が来るかもしれないと思える
少し明るいラストだと思った
珠子さんは、グループホーム経営は無理にしても
放課後等デイサービス的な、障がい者やその保護者支援の仕事なんかに関わったら
ピッタリだなぁなんて思ったりして