「世界地図の下書き」
朝井リョウ
突然両親を亡くし、
児童養護施設「青葉おひさまの家」に暮らすことになった太輔。
ほかにも、さまざまな理由で両親と暮らすことのできない仲間たち。
そんな彼らは、
空にランタンを飛ばす「蛍祭り」を復活させようと思い立つ
それぞれの願い事とともに…

それぞれの事情を抱えながらも
仲間どうし健やかに育つ子供たちが描かれる
正直かなり最後の方まで、
彼らの事情もエピソードも、
児童養護施設を題材にした物語にはよくある内容のように感じていた
しかし、結末まで読んで思った
これは、「特殊な環境下にいる子供たちだけの話ではない」と。
私のような大人にも、まったくあてはまる話なのだと思った
すこしネタバレすると、
彼らの中には
ひたむきに努力したことがすべて塵となる者がいる。
信じたい、信じさせてほしいと想う相手に裏切られ続ける者もいる。
理不尽な扱いをされている者もいる。
それが、ランタン祭りの成功とともに
すべてカタルシスを迎えたりなんてこともない。
まったく無い。
なんなら、ランタン祭りすらも上手くいったといえるのかいえないのか。
努力すれば夢は必ず叶うなんてことはなくて
必ず相手に自分の気持ちが届くなんてこともない。
クソなことはクソなまま。
世界は広いけど、
どこに行ったとしても、似たようなクソはある。
自分にはどうしようもないことは沢山ある。
だからこそ、自分だけは自分の思うように動かせる。
この世界でクソなことに遭遇したら、逃げて逃げて、
また別の世界にどんどん飛び込んでいって
そしたらまた、クソじゃないなにかに出会えるかもしれない。
自分にはそれができると信じること
それは、おとなになっても日々いろいろなことに怯え迷っている
40代の自分にも全く同じことが言えるような気がして
結末を読んで、急にギュッと心を掴まれたように感じた。