「WANTED!!かい人21面相」
赤染晶子
同じ高校で同じバトン部の楓は小学校からの友達。
楓は「ちょっと変わった子」だった
そんなある日、かの有名な
「グリコ・森永事件」が起きる
日本中が「キツネ目の男」に翻弄されるなか、
楓の様子もだんだんおかしくなり…

誰もが知る
「グリコ・森永事件」である
「菓子」という身近なものに毒が仕込まれ
無差別に狙われる対象に、自分も入っているかもしれない
そして、たびたび発表される犯人からの奇妙な声明文
もしかしたら、いますれ違った人や電車で隣にいた人が犯人かもしれない
当時の人々は、まるで自分たちひとりひとりも
事件の当事者のように感じたのではないだろうか?
主人公は、「楓の友達」という存在で
エキセントリックな楓とは対照的に、おとなしく控えめなキャラクターであるが
そんな主人公すらも少なからず感化される
代わり映えのしない日常に、
新聞のなかのニュースが頭上に降って来る
そのことが、今までの日常を壊したいような気持ちにさせる
主人公が、とにかくなすすべもないまま
「脇役」の象徴ともいえる
「地球上で最も滑稽なマズルカステップ」をひたすら踏むシーンは
怒りすら感じるのになんだか笑えた
人は、必死であればあるほどどこか滑稽なものだ

ちなみに、この本には表題作のほか二編が収録されているのだが
これらに関しては
私にはまったく理解できませんでした…
魅力的な文章というか、
若い頃の私なら、意味がよく理解できなくても
この文章の雰囲気だけで心地好い気分になっていたように思うのですが
感受性が乾いた今となっては
「結局なんだったの…」と、途方に暮れてしまった
なので表題作以外の感想文は無しです…
