「くらやみガールズトーク」
朱野帰子
少女だから、娘だから、女子だから、嫁だから、妻だから、母親だから
女たちが感じる鬱屈、閉塞感、孤独感、不公平感
第一話
「鏡の男」
自分を軽視するくせに依存してくる実家を捨て
6畳一間の鉄筋コンクリートマンションに移り逃げた「私」
いつしか、恋人の男と半同棲するようになった
しかし彼は夢遊病気味で、ときどき別人の男のようになる。
どっちが本物の彼?
もしかして私がおかしいの?
残酷な事実から目を背けようとするのは防衛本能だと思う
実の親からの冷たくひどい扱いは、ユニークな親なのだと
恋人の粘着質で強引な自分勝手さは、頼れる彼なのだと
辛い現実をねじ曲げて解釈する
成長する間、いつも軽視され否定され続けるのが当たり前だと
自分を尊重されること自体がよくわからなくなる
尊重されたらむしろ不安になったり
逆に、必要以上に尊重を求める「繊細ヤクザ」になったり
主人公はこれまで、違和感にあえて気づかないことで
自分を守って生きてきたのだと思う
前の住人が残して行った薄気味悪い忘れ物もなんとなく見て見ぬ振りできる
なぜか大量の入浴剤が天井裏にビッシリ
だけど、いつも自分都合の場所に鏡を片付けてしまう恋人に
はじめて違和感を抱いた
物語の最後では…
不安な予感しかないんだが…
主人公の彼女が、
ギリギリセーフで違和感に向き合う
ことを祈るばかりである