「毒母の息子カフェ」 
尾道理子


 

 

第一希望の大学に落ち、無気力なままの大学一年生

祠堂雅玖(しどう がく)


あるとき、風変わりな美しいカフェオーナーの男

土久保覇人(どくぼ はひと)

から強引に誘われ、カフェ『どくぼの息子』でバイトしはじめる



バイト仲間は、一風変わった者たちばかり。

そして共通するのが、

みんな育った家と、実の母親に消化しきれない思いを抱えていること…



雅玖の場合は、生まれたときから母親というもの自体を知らない。

自分はなぜこのカフェに呼ばれたのか?

自分の母親は、毒母だったのか?



オーナーの名前「土久保」と、「毒母」がかけてあるのか、

バイトはみんな毒母育ちみたいな設定



毒母の物語といえばたいてい母と娘で

当たり前だが母との関係に悩む息子もいるわけだが、

物語としては個人的に新鮮だった



表紙の、イケメンキャラ満載のイラストと、

登場人物の凝ったネーミング(主人公の名前もなかなか覚えられない)

ラノベっぽい印象とは裏腹に



それぞれが抱える母親への複雑な想い

そして今現在も苦しんでいる


という、重い心情が描かれます。


「それでも母なりに自分を愛そうとしていた」

と、信じようとする気持ちも同時にあるのが切なかった


確かにそうかもしれないが…愛を振りかざして何やってもいいわけじゃないし…



そして、断ち切ることや乗り越えることだけがゴールではない

それぞれが普通のものとして存在できる場所が大切

と、こころのキズをリセットしきれない者たちに寄り添う



個人的には、主人公の苦悩の多さが若干蛇足だったようにも思う

・父との関係

・大学受験失敗

・失恋と友達との関係

・叔母に育てられた子供時代の不遇など



ここはむしろ

・顔も知らない母への憧れや淋しさ

・もしかしたらひどい母親だったのかもしれないという恐怖心

だけに絞ったほうが話は分かりやすかったようにも思う



でもこの作品

第五回角川キャラクター小説大賞というコンテストで読者賞に選ばれた作品らしいんですよ


たしかにどの登場人物もキャラが立っている

それぞれに違った魅力のあるキャラクターたちでした



キャラ立ち大事だよね!