「その扉をたたく音」
瀬尾まいこ
ミュージシャン志望の29歳ニート、宮路
夢を掴みそこね、手放しそびれ、いまだに親の援助を受ける毎日
ある日、ギターで余興をやらせてもらった老人ホームで
サックスの「神」に出会う
これほどまでに音楽の才能がありながら、
サックスの「神」、渡部は
老人ホームで健やかに働く介護士
宮路は、なんとか「神」・渡部に近づきたいと老人ホームへ通う

・やんちゃだが意外ときちんとしている人物像
または
・人当たりが良いながらもどこか相手と一線ひく人物像
・どちらも基本は礼儀正しく、相手を思いやり、愛されキャラで
大きく傷つけ合ったりはせず少しずつ絆が深まる
・どっちの人物にも、ふだんは見せない葛藤や寂しさがある
という、私からすると
瀬尾まいこ作品あるあるなんだけど
やっぱ良いよね~
この作品では、老人ホームが舞台で
老いと死が避けられないテーマとしてあるのが
他の作品とはひと味違って良かった。
宮路の夢を諦めるか否かの30歳という年齢が対比的だ
サックスの「神」・渡部は
途中から「なにかの作品にすでに出てきたキャラなのだろうな」ということに気づいた
どうやらこの作品らしいです
前日譚があるせいか、この作品では渡部の過去はあまり明かされないけれど
それは逆に良かったと思う
この作品では、優しいけれどどこか寂しげな渡部が
それだけではなく
ちょっとシビアで厳しいところがあるのも良かった
すべてがうまくはいかないし
寿命も老いも逃げられないし
叶わない夢もあるけれど
それでも、知らない場所で咲いてる小さな花みたいに
小さな奇跡はそこここにあると
予感させるラストも良かったです