おまじない
西加奈子



声に出さない言葉。声に出さない気持ち。


祝福のような言葉。呪いのような言葉。


祈りのような気持ち。


そんな短編集



一話目



「燃やす」




少女の祖母は、孫である少女を、女の子らしくしなさいと育てた



少女の母親は、娘である少女が、女の子らしくすることを嫌った

一方、息子たちの男性性を憎んだ



少女はやがて成長する








一見、少女の母親が自分の思想を娘に押し付ける毒親に見えるけれど


その毒は、さらに母親である少女の祖母から受け継いだものだろうと想像する。



女らしくあれと願うこと

女らしさに屈辱を覚えること

男性性を憎むこと



それらは表裏一体だ



ほんの幼い頃から少女を何層にも取り巻いた呪いは


どこまで、どうやって振りほどいていいか少女自身にはなすすべがない



用務員のおじさんが燃やす炎は、少女を呪いから救い癒す炎だと思った


こういうわかりやすい呪いばかりじゃない