短編集の一話ずつレビューするのが結構楽しかったので今回からはコレ
そこへ行くな
井上荒野
一話め。
遊園地
仕事の忙しい夫の二重生活を知った妻
妻の一人称で語られるため、不気味な夫の本当の気持ちはわからない。
綿密にすべてを欺いていたようにも思えるし
なにも考えずにその場その場で、ある意味超刹那的な正直者のようにも思える。
そして、妻も心のどこかでなにか気づいていたのではないだろうか
目の前に見えている夫は、この男の氷山の一角にすぎないと
それが明らかになってからも、妻はなにもなかったように生活する
もちろん、そのようにしているだけで歪みは存在する
思わぬところに歪みが伝染する。
息子の奇妙なイタズラに。
なにも解決せずなにも説明もないまま『家族』で行く遊園地に。
では、この話の「そこへ行くな」はどこのことか
まず素性のよくわからない男には「行くな」
もしそういう男に「行って」しまって、
しかも結婚したり子供を産んでしまったなら
もう、真実をムリヤリ暴くような方向には「行くな」
というところでしょうか。
知らぬが仏って言葉もあるものね