2003年。会社経営の父親と反目し、なにもかもがおもしろくない20歳の翔悟。
ひょんなことから1980年へタイムスリップ。
そこで出会った若かりし日の父親、大輔。
2003年では地位を嵩に来た高圧的な父親であったが、
1980年の大輔は、会社を辞めたくて仕方がない新入社員。
実は親子同士の
時をかけるモラトリアムな二人
1980年にタイムスリップした意味を考えた翔悟は、ある計画を思いつく
清水義範先生の長編作品です。
結構分厚い本だけど、するすると読めました
中身がないという意味ではなく、むしろ内容盛りだくさん
若者の心細さやいらだち、
実は親子なのだが、同年代のふたりに芽生える友情のような親愛の気持ち
そんなところも丁寧に描かれます。
登場人物がみな基本いいやつで話が早く、
タイムスリップという荒唐無稽な設定がベースにあるにもかかわらず
「それやっちゃったらさすがにアウトでしょ」というような
なんでもアリな展開にはならず、辻褄が合う行動をとる
例えば途中で、翔悟は大輔に自分が未来人だと明かすのだが
自分が大輔の子供で、いつ生まれてどういう人生になるのかなどということは敢えて明かさない
大輔の未来の人生に影響を与えるかもしれないからだ。
1980年と2003年の文化の違い
世界情勢の変化
コンピュータの進歩(大輔はのちにコンピュータ関連企業を興す)
清水義範作品に特徴的な「なるほど~」となる知識もふんだんにはいりつつ
怪しげな産業スパイの登場や、翔悟の計画
そもそも、もとの世界に戻れるのか!?というスリリングさもあり。
はじめは苛立った若者でしかなかった翔悟が
読んでいるうちに
頭が切れて柔軟だけど筋は通す
めっちゃカッコイイ青年に思えてくる
強いて言うなら、
1980年ではあんなに朴訥として不器用で優しい大輔が、
2003年でどうして子供を蔑んでまで学歴や就職にこだわるようになったのか
そのへんの説明がもう少しあったらよかったと思う
まあ社長として生き抜いて行くうちにそう変わったのだと解釈。
読みやすいけど読みごたえがある、
なんとなく心が温かくなるような不思議なタイムスリップ小説です