とにかくうちに帰ります 津村記久子著
職場でしか会わないけど、毎日毎日会っている同僚のことは
狭く深く知っていたりする。
「職場」でおこる狭い人間関係を、淡々と丁寧に描いた短編集
表題作の「とにかくうちに帰ります」は、
日常である「職場」に豪雨と帰宅困難という非日常が食い込んでくる様子が描かれる
知らなかった同僚の一面
屋根や温かい食べ物や飲み物のありがたさ
家族や人間関係の心強さ
「小規模なパンデミック」は
職場内で感染症が流行したときの人々の動向を描く。
2010年頃の作品なので、当時の新型インフルエンザの流行を題材になっているのかなと思ったが
新型コロナウイルス流行初期の混乱にあまりにも酷似していて驚いた。
人によって危機感の度合いがバラバラでそこから生じる齟齬や
体調不良でも欠勤する抵抗感
衛生用品の不足なんかが。
自然災害、感染症の流行という大きい事件だけでなく
職場のちょっとしたピンチや、ちょっとした嫌な奴、ちょっとした不気味な事件
それらを通して同僚に対して心の中で
静かにツッコミをいれたり、密かに尊敬していたり
温度が低めの淡々としたお仕事小説です
熱すぎなくてところどころ笑えるから
ずっと読んでいたい感じ
こんな感じであからさまにブチ切れる人は出てこない