超久々に感想文

謎の毒親  姫野カオルコ



 

「打ち明けてみませんか?」

かつて行きつけだった書店の壁新聞の人生相談コーナー



ふとしたきっかけから、数十年の時を経て

人生相談を投稿しはじめた主人公



書けば書くほど沸き上がるのは

幼い頃の環境に対する凄まじい違和感


今でも理解しがたい不愉快な現象


書店の店主をはじめとする第三者に初めて打ち明けることで



驚愕の事実が見えてくる



主人公の両親は「毒親」なのではないか!?




「人生相談」形式の小説だが、実体験に基づくためか


いくつかの「人生相談」が取り留めもなく散らばり、もやもやとした印象がある



「毒親」疑惑も、ストンとくる伏線の回収のような落としどころはあまりなく、


もやもやと霧がだんだん晴れていくような印象




だからこそ逆に、リアリティがあると感じたキョロキョロ



産まれた家がすでにおかしかった場合

産まれた時からいる家族がすでにおかしかった場合



その異常さに長いこと気付けないのではないか



親は禁止するけれど

周りの環境的に許されないけれど


自分にはどうしても苦痛だ。

なぜ許されないのか。苦痛に思う自分がおかしいのか。



結局答えは出ないまま、無理矢理環境に順応させて生きるしかない

子供は従うしかその環境で生きられない



そのうち、これが異常なのかどうかも考えなくなり、


ふと頭によぎったとしても無理矢理打ち消すようになる




自分の成育環境が異常だと気づくことは、

自我の不安定な子供にとっては地が割れるほどの動揺だからだ




なんとかその環境から逃げだし

自立した大人となったとき



今度は逆に、押し込めた幼い頃からの無数の「なぜ!?」が思考を邪魔してくる



なかったことにはできない

なかったことにして生きるしかなかっただけで

なかったことにはできないのだ




主人公は恐る恐る、

壁新聞の「人生相談」という間接的な方法で


押し込めた過去の「なぜ!?」と対峙しはじめる


「人生相談」の向こう側にいる書店の店主たち解答者の


そっけなくも暖かい回答に救われる気づき




私もこの本を読んで人生を振り返ると

この「人生相談」に相談してみたい事象がいくつもある。




墓の中にまで持ち越すなんてイヤ