小川洋子著 妊娠カレンダー
表題作は、少し神経質な姉の妊娠を機に
その体調や精神の大きな変化に巻き込まれて
自分の感覚までおかしくなってきてしまう妹目線の話。
妊娠がテーマだってのに
よくもまぁここまで即物的というか、
ときにはグロテスクともいえるほどの表現
それと同時に、おぞましいものを見つめすぎて
妙に美しく見えてくるような



さすがの小川洋子作品という感じです。
つわりのシーンではそれにつられてこちらまで食欲が減退するような

(嘔吐シーンがあるとかそういう意味ではなく、もっと食べること自体に幻滅してしまうような)
つわりが終わり食欲が増進しひたすら食べまくる姉の描写は
いじましさすら感じる表現で、これはこれでゲンナリするのです

このおぞましさがなんとも言えず気持ちいい



汚い描写はひとつもなくて、むしろ
それをこんなに美しく表現する?って感じなんだけど、妙にグロい
幸せなお花畑みたいなイメージも多い妊娠だけども
実際に経験した感想としては
そもそもホルモン大移動で肉体的にも精神的にも
ちょっとモンスターに近づくようなところあったと思うんですよね
その、人間以外のなにかモンスターになってしまったような姉を
静かで美しい筆致で描いた小説です
わたしのつわりの思い出でも
大前提として、吐いてばかりとか水分も受け付けないというほどのひどいつわりはありませんでした
体調不良時にジャンクフードを求めてしまうという話をしましたが
私はつわりもそういうところがあって
気持ち悪い
気持ち悪いんだけど、食べないともっと気持ち悪い。

食べてる間だけは気分がよくて、

食べ終わった途端にまた気持ち悪い

という性質のものでした
しかもその食べられるものがね
やっぱりコッテリハイカロリー



夫が気を使って
「そうめんでも茹でようか?」とかいうんですけど
それこそ
「そうめんとか気持ち悪いから言わないで!!」



「唐揚げなら食べられそうかも…
」

って感じ
あっさりした食べ物とかなんだか逆に気持ち悪いんですよね
「つわりで気持ち悪い。ナポリタンなら食べられそう」
「つわりで気持ち悪い。牛丼なら食べられそう」
「つわりで気持ち悪い。カレーにチーズのせれば食べられそう」
かくして夫は、
「つわりだから」のひとことですべて片付けられ
毎日、首を捻りながらハイカロリーフードを用意するのであった
気持ち悪いのにそんなもん食べたいの…??



まさにモンスター
そして、つわり開けの食欲もまたモンスター級になるのでした…