私にとって育児とは今現在真正面で奮闘しているものと言えます
それもあり、この感想を書くことは恐ろしいことでもあります。
この小説にはとても恐ろしいことがいろいろと起きます
しかし、登場人物があまりにセンセーショナルで、そこまで共感はしないだろうなーと思っていました
それが、読み進めていくうちに部分部分で
自分のことかと思うほど共感できました
実はそれが一番恐ろしかった。
この小説に共感する自分が
この小説は、登場人物のセンセーショナルな事情を描いているようで
だれにでも心当たりありそうな育児のダーク面をザックリと切り出したもの
センセーショナルさに気を取られて、自身が暗黒沼にハマっていたという恐ろしさ
共感できる部分はたくさんあって
焦点をあてるとすると
「子供を恐ろしいと思う感覚」
小説にも出てきますが、私も子供が8カ月のころ乳腺炎になりました
39℃以上の高熱、体をはいまわる悪寒、激しい頭痛
それでも夜間授乳は続く
私は小さな赤ん坊が恐ろしくなった
熱に浮かされ、起き上がるのも辛い私に大声で恫喝しながら追い詰め続ける
乳腺炎の時の授乳はものすごく痛い。抱き上げた子供が胸に当たるのも痛い
なんなら膝に抱き上げる力ももうない
今晩だけは休ませて下さい。はもちろん通用しない
それどころか、もう何日もちゃんと眠れない。今晩も眠れない。
このままでは私は死んじゃうかも
この子は私を殺そうとしている
こんな小さな赤ん坊が、まさかそんなこと有り得ない
だけど、その時の私はそのような思考に震えました。
その後、地獄のような一晩をなんとか過ごし
病院で乳腺マッサージを受けました。
乳腺炎の時にマッサージされるのはものすごく痛いし高熱も辛い
でも私は天に引き上げられたかのように安らいだ
まず、専門的な人間(ここでは産婦人科医療スタッフ)に身を委ねられること
体の辛さなど私の主訴を伝えられること
なにより、専門的な第三者に一時的とはいえ子供を預けられること…
子供が恐ろしい。不安の塊であるそれを、
専門知識を持ってなおかつ第三者的な立場の人間に託せることはとても安心できました
夫や母ではダメだったように思います
病院からの帰り道、赤ん坊を抱っこ紐で抱えながら
満開の桜を写真に撮りました
ぼんやり曇った空にとけそうな白っぽい桜の大きな塊
その写真を見ると、今でも途方に暮れたようなあの時の気持ちが蘇ります
もしあのとき、なにか一つ間違えば
地獄の夜は乗り越えられなかったかもしれない
桜を見上げる力はなかったかもしれない
あの日だけでなく、たくさんの地獄を垣間見ることがあったように思う
この小説を読んでそれを思い出しました。