会社と駐車場の距離があまりに遠い。
ふたつを結ぶ道が、小高い山を切り開いてつくった道。
その道で「まむしを発見した」と通報があった。
それは事実かもしれない。
しかし、それはケイゾクなのかどうか不確かでしかないのだ。
で、だから、会社側にいったい何をどうしろというんだ?
会社としては何か「対策」らしきものをしないといけないから、
こういったA4シートをつくって、道路の何か所かに掲示した。
何でもいいから「対策」を講じた結果を求められるらしい。
これが、従業員に対する注意喚起というわけだ。
もちろん、これによって、まむしが居なくなるわけではないし、
まむしはこちとら人間に構わず、出てくるときは出てくるんだ。
当たり前で予想できたことだが、
以来、まむしの目撃情報は届かなかった。
結局、第一報だけだったのだ。
しかし、1週間後、通報があった。
「この掲示に記されているまむしの図柄がリアリティがありすぎて、怖い。
どうにかしてほしい」
笑うしかなかった。
そこで差し替えられたのが、
文字のみ。
ほんと、ばっかじゃないの?
「まむしが出た!」と言ってきたのは一人だけ。
「この絵が怖い!」と言ってきたのは一人だけ。
たった一人のために、翻弄されなきゃいけない会社っていったい・・・・。
もちろん、
まむしの目撃情報は、一度もない。
クレーマーはどこにもいるんだった。

