移植後3日目の朝。
朝6時に検温のために起こされる。

鏡を覗き込む。青痣は随分薄くなり、白目の充血も薄くなってきた。
だが、初日、昨日に比べれば量が減ったとはいえ、ネバネバした目やには相変わらず左目の目頭・目尻にびっしりこびりついている。
綿棒でそっと取り除きながら、いつまで続くのかな、この目やに・・・とあらためて思う。

見え方は昨日よりずっといい。朝食に出た牛乳パックのメーカー名の文字が読み取れるようになってきた。
角膜白斑を患っていた時には考えられなかったことだ。
右目を塞いでしまうと、本も新聞もまともに読めなかったのだから・・・。

朝食後、主治医に呼ばれて病室近くの診察室(教授回診をやっていた部屋)に行く。

「手術から3日経ったから、絆創膏代わりに入れていたソフトコンタクトレンズ、外すね。もし、痛みが出てきたりしたら言ってね。」

目にキズがある場合、ハードコンタクトレンズは痛くてとても入れていられないが、ソフトコンタクトレンズはキズを絆創膏のように覆い、痛みから保護してくれるバンデージ効果を発揮する。
そのため、ソフトコンタクトレンズは目に異常を発した場合の発見が遅れることさえあるのだ。
なんとなく痛みを感じていても、ソフトコンタクトレンズを載せてしまうと痛みを感じなくなるので大丈夫、と思いがちなのである。
ソフトコンタクトレンズ常用者はこの点に注意して使った方がよい。

角膜移植手術後の痛みを少しでも和らげるために、バンデージ効果のあるソフトコンタクトレンズ(度なしの使い捨てタイプ)が左目に入っていたのを、主治医は器用に外し、術後の傷口の様子や乱視の状態などをチェックする。

「今のところ問題ないね。予定通り、1週間くらいで退院できるよ」とのことで、話を聞いているだけでほっとする。

絆創膏代わりのソフトコンタクトレンズを外したあとも特に痛みが出ることもなく、病室に戻ってまたCDを聞く。

活字中毒が本・新聞の読めない状態だと本当に暇を持て余してしまう・・・。
ミスチルのCDだけじゃなく、オーディオブックなんかを持ち込めば良かったかな・・・とも思った。

もし、これから目の手術をして読書などを控えなければならない状態にある人のお見舞いに行く場合は、本人の希望を確認してオーディオブックなどを持っていくのもよいかもしれない。

昼食後、同室の角膜移植患者さんたちとおしゃべりしたりして過ごしていると、他科のおしゃべりな患者さんがいたベッドに新しい入院患者さんがやってきた。
まだ女子高生だった。
私以外の移植患者さんたちは年配の方で、彼女にとっては同世代が一人もいなかったせいもあるのだろうが、露骨に「こんな病室イヤだ、つまんない」という表情を浮かべていた。
面倒なことにならなければいいけどな・・・と、ふと思ってしまった。
同室の長期入院をしていた移植患者さんが彼女の表情に気づき、ムッとしていたからだった・・・。