秋、10月。
主治医がいる大学病院に、入院した。

主治医が語ってくれたことによると、私が手術を受けることには学内倫理委員会で反対があったと聞いた。
右目をレーシックで視力回復しているのなら、危険を伴う角膜移植をわざわざやらなくても良いではないか、と。
それを「本人の強い希望がありますから、移植手術を受けさせてあげてください」と、教授・助教授他医師たちを説得してくれたのは主治医であった。

他に入院時の諸注意を聞き、病室に入る。

私が入院した病院には全国各地から角膜移植を希望する、重篤な症状の患者さんが大勢いらしていたので、通常の角膜移植であれば、入院期間はおよそ1週間である。(重症の場合はもっと長くなる)

他科の入院患者さんと同室の6人の大部屋。
わたしと同じ眼科の患者さんは私を含め3人。
その3人ともが角膜移植の患者だった。

一人の方は目に薬品が入って移植が必要になった方で、既に手術を終え、術後管理のため入院がまだ続いていた。
私と同じ日に入院したもう一人の方は、主治医の執刀を明日受ける予定の患者さんである。

問題は、他科の入院患者さんに、ひどくおしゃべりな人がいたことだった。
悪気はないのだろうが、大声でこんなことをベラベラと病室でしゃべる。

「角膜移植の患者さん、難しい症例の方が多いから、というのもあるんでしょうけど、何度も何度も入退院と移植を繰り返しているんですってね~、ほんとに大変よね~~」と。

この言葉を聞いたときは、「個室にしてもらったほうが良かったかな・・・」と、真剣に思ってしまった。

明日、移植手術を控えている患者二人がいる前でよくこんな無神経なことを平然と言えるな・・・と、今思い出しても本当に呆れてしまう。
まあ、こういうタイプの人間は相手にしないに限る。

気持ちを切り替え、消灯時間に素直に寝る。
手術はいよいよ明日、午後執刀開始である。