私が角膜移植手術を受けた約10年前には、術式としては全層角膜移植と表層角膜移植のほぼ2種類しかなかった。
その後の医療技術としての角膜移植の進歩を考えると、ちょうど、部分移植の臨床試験が始まった頃・・・だったでもあると思う。
以下に、術式について書いてみよう。
1、全層角膜移植
角膜の全5層を、すべてドナー(臓器提供者)からレシピエント(臓器移植を受ける側)に移植する。
私が移植を受けた当時は、昨日紹介した円錐角膜、水泡性角膜症、角膜白斑などの症例で多く行われていた。
リンパ球を含む房水に接する内皮細胞がドナーのものと置き換わるため、拒絶反応が起こりやすく、およそ3割で発症する。
2、表層角膜移植
私が受けたのがこの表層角膜移植の1種である、深部表層角膜移植である。5層ある角膜の、最深部の内皮細胞とそのすぐ上のデスメ膜のみ残して除去し、ドナーから提供された角膜上皮・ボーマン膜・角膜実質を移植する。リンパ球を含む房水に接する内皮細胞はレシピエントのもののままなので、拒絶反応を起こす確率は非常に低くなる。
ただし、デスメ膜・内皮細胞を合わせても0.2ミリ程度の厚さしかないため、注意深く除去しても突き破ってしまう危険性があり、全層角膜移植に比べると、医師にとっての術式難易度が上がる。(突き破ってしまった場合は全層移植に術式変更される)
医療技術が進歩し、最近では角膜の部分移植も行われるようになった。
昨日紹介した症例の水泡性角膜症では、内皮細胞のみの移植が行われており、円錐角膜なども表層角膜移植が多くなっているようである。
また、昨日紹介したスティーブンス・ジョンソン症候群、化学熱傷などの場合は、以前は単純に前走角膜移植を実施してもしばらく経つとまた角膜が白濁してしまっていた。
黒目の白目との境に、角膜上皮の幹細胞があることが近年わかり、上記2つの症例ではその幹細胞もダメージを受けていることが多いので、まず、幹細胞を培養し、それを移植して上皮細胞の再生があるかを確認し、全層移植などを行うようになった。
また、近年では再生医療の研究が進み、角膜も人体の他の組織を用いて人工的に再生しようとする研究も活発に行われている。
元々、角膜は血管のない組織で、移植手術の中ではもっとも拒絶反応の少ないもの、と言われているが、それでも他人の組織を移植することによる拒絶反応発症の危険性は常に伴う。
手術から10年以上経過した人が突然拒絶反応に見舞われた症例もあるそうだ。
再生医療の研究がもっと進んで実用化されれば、こうした危険性からは解放され、移植臓器の不足に泣かされる人もいなくなるかもしれない。
しかし、身体にメスを入れることに起因する危険性から解放されることはおよそありえないだろう。
入院・手術を約1ヶ月後に控えた私は、医学書などで移植手術がどういうものなのか、に改めて向き合っていた。
ドナーがいて、初めて移植が成り立つ、その事実を正面から受け止めながら、静かに入院の日を迎えたのだった。
その後の医療技術としての角膜移植の進歩を考えると、ちょうど、部分移植の臨床試験が始まった頃・・・だったでもあると思う。
以下に、術式について書いてみよう。
1、全層角膜移植
角膜の全5層を、すべてドナー(臓器提供者)からレシピエント(臓器移植を受ける側)に移植する。
私が移植を受けた当時は、昨日紹介した円錐角膜、水泡性角膜症、角膜白斑などの症例で多く行われていた。
リンパ球を含む房水に接する内皮細胞がドナーのものと置き換わるため、拒絶反応が起こりやすく、およそ3割で発症する。
2、表層角膜移植
私が受けたのがこの表層角膜移植の1種である、深部表層角膜移植である。5層ある角膜の、最深部の内皮細胞とそのすぐ上のデスメ膜のみ残して除去し、ドナーから提供された角膜上皮・ボーマン膜・角膜実質を移植する。リンパ球を含む房水に接する内皮細胞はレシピエントのもののままなので、拒絶反応を起こす確率は非常に低くなる。
ただし、デスメ膜・内皮細胞を合わせても0.2ミリ程度の厚さしかないため、注意深く除去しても突き破ってしまう危険性があり、全層角膜移植に比べると、医師にとっての術式難易度が上がる。(突き破ってしまった場合は全層移植に術式変更される)
医療技術が進歩し、最近では角膜の部分移植も行われるようになった。
昨日紹介した症例の水泡性角膜症では、内皮細胞のみの移植が行われており、円錐角膜なども表層角膜移植が多くなっているようである。
また、昨日紹介したスティーブンス・ジョンソン症候群、化学熱傷などの場合は、以前は単純に前走角膜移植を実施してもしばらく経つとまた角膜が白濁してしまっていた。
黒目の白目との境に、角膜上皮の幹細胞があることが近年わかり、上記2つの症例ではその幹細胞もダメージを受けていることが多いので、まず、幹細胞を培養し、それを移植して上皮細胞の再生があるかを確認し、全層移植などを行うようになった。
また、近年では再生医療の研究が進み、角膜も人体の他の組織を用いて人工的に再生しようとする研究も活発に行われている。
元々、角膜は血管のない組織で、移植手術の中ではもっとも拒絶反応の少ないもの、と言われているが、それでも他人の組織を移植することによる拒絶反応発症の危険性は常に伴う。
手術から10年以上経過した人が突然拒絶反応に見舞われた症例もあるそうだ。
再生医療の研究がもっと進んで実用化されれば、こうした危険性からは解放され、移植臓器の不足に泣かされる人もいなくなるかもしれない。
しかし、身体にメスを入れることに起因する危険性から解放されることはおよそありえないだろう。
入院・手術を約1ヶ月後に控えた私は、医学書などで移植手術がどういうものなのか、に改めて向き合っていた。
ドナーがいて、初めて移植が成り立つ、その事実を正面から受け止めながら、静かに入院の日を迎えたのだった。