紹介状をもって大学病院で受診したのは秋になってからだった。
視力検査・全身の検査・・・様々な検査をした中で、何故か一番記憶に残っているのは血沈検査、である。
採血されたものが、何本もの試験管に収められ並べられているのを見て「何やねん、あれ・・・」と子供心に不思議に思った。
後日、学校の図書館の百科事典で調べ、「血沈検査」という言葉を覚えたのだった。
あの検査は、恐らく重篤な角膜炎を引き起こした細菌が何かを特定するために行なっていたのだろう、と子供心に納得したのである。
詳細な検査結果を聞くため、再度大学病院に出向いたのは1週間後だった。
大学病院の医師から「残念ですが、この角膜の白濁を治す手段はもう角膜移植しかありません」と両親に告げられた。
「それは・・・どういう治療なのでしょうか?」と尋ねる父。
医師は「角膜というのは黒目の上にある透明な膜です。お嬢さんの目はちょうど瞳孔の真上で白濁しているので、常にスリガラス越しにものを見ているような状態になっています。この白濁は目薬や服薬治療ではもうどうにもなりません。亡くなった方からアイバンクに提供された、角膜を移植してやる以外、透明に戻す手立てはないのです・・・。」と告げる。
父が再度医師に尋ねる。
「アイバンクに登録した場合、どのくらいの待機期間で手術可能になるのでしょうか・・・?」
医師が再び答える。
「残念ですが、提供数が非常に少ないのです。今登録したとしても、何年待つか正直わかりません。また、お嬢さんの場合まだ身体の成長が続きますので、アイバンクに登録するのであれば成長が落ち着いた年齢、高校を卒業するくらいの年齢になってからのほうがいいかもしれません。角膜移植の手術は術後管理も重要ですし。お嬢さんが自覚をもって術後管理出来る年齢になるまで待ったほうがいいと思います。」
その話を聞いた父は、悩みに悩んだ上で、まだ小学校2年生だった私に事実を告げた。
もう、目をよくするのは手術しかない。しかし、今はまだおまえが小さいから、大きくなったらアイバンクに登録しよう、と。
大学病院に行ったら目ぇが良くなるんやろ、と思っていた私は父の話を聞いて落胆したが、すぐに大きくなったら手術できるんや、そしたら目ぇがよくなるんや、と単純に気持ちを切り替えた。
昨年亡くなった母も同じように楽観的に気持ちを切り替えた。
しかし、世の中はそう単純にはいくはずもない。
この後、学校の中で予想もしていなかった苦労に直面し、大学病院には落胆させられることになるのである・・・。
視力検査・全身の検査・・・様々な検査をした中で、何故か一番記憶に残っているのは血沈検査、である。
採血されたものが、何本もの試験管に収められ並べられているのを見て「何やねん、あれ・・・」と子供心に不思議に思った。
後日、学校の図書館の百科事典で調べ、「血沈検査」という言葉を覚えたのだった。
あの検査は、恐らく重篤な角膜炎を引き起こした細菌が何かを特定するために行なっていたのだろう、と子供心に納得したのである。
詳細な検査結果を聞くため、再度大学病院に出向いたのは1週間後だった。
大学病院の医師から「残念ですが、この角膜の白濁を治す手段はもう角膜移植しかありません」と両親に告げられた。
「それは・・・どういう治療なのでしょうか?」と尋ねる父。
医師は「角膜というのは黒目の上にある透明な膜です。お嬢さんの目はちょうど瞳孔の真上で白濁しているので、常にスリガラス越しにものを見ているような状態になっています。この白濁は目薬や服薬治療ではもうどうにもなりません。亡くなった方からアイバンクに提供された、角膜を移植してやる以外、透明に戻す手立てはないのです・・・。」と告げる。
父が再度医師に尋ねる。
「アイバンクに登録した場合、どのくらいの待機期間で手術可能になるのでしょうか・・・?」
医師が再び答える。
「残念ですが、提供数が非常に少ないのです。今登録したとしても、何年待つか正直わかりません。また、お嬢さんの場合まだ身体の成長が続きますので、アイバンクに登録するのであれば成長が落ち着いた年齢、高校を卒業するくらいの年齢になってからのほうがいいかもしれません。角膜移植の手術は術後管理も重要ですし。お嬢さんが自覚をもって術後管理出来る年齢になるまで待ったほうがいいと思います。」
その話を聞いた父は、悩みに悩んだ上で、まだ小学校2年生だった私に事実を告げた。
もう、目をよくするのは手術しかない。しかし、今はまだおまえが小さいから、大きくなったらアイバンクに登録しよう、と。
大学病院に行ったら目ぇが良くなるんやろ、と思っていた私は父の話を聞いて落胆したが、すぐに大きくなったら手術できるんや、そしたら目ぇがよくなるんや、と単純に気持ちを切り替えた。
昨年亡くなった母も同じように楽観的に気持ちを切り替えた。
しかし、世の中はそう単純にはいくはずもない。
この後、学校の中で予想もしていなかった苦労に直面し、大学病院には落胆させられることになるのである・・・。