マーケットアドバイス


⒈市場概況
○米国では7月の消費者物価指数を含む複数の物価指標が鈍化、ついにインフレがピークに達し、利上げが想定よりも早い時期に終わるのではないかという楽観的な見解が広がり、主要株価指数は、S&P500が4280、ダウ30種平均33761ドル、ナスダック総合指数は13047まで大幅に上昇した。
投資資金が市場に大量に滞留していて、何か買わないとと感じる投資家は多く、わずかでも利上げ停止が見えればチャンスを逃すまいとリスク資産に殺到している。
一方、債券市場は比較的冷静で、米国10年債利回りは2.8%前後で推移、FRBの金融引き締めを引き続き警戒している。
○発表された4〜6月期の米国企業の業績はインフレにより売り上げが増加、また企業がコスト削減とコストの転嫁に努めた結果大幅な下方修正は避けられた事も支援材料となった。
○テクニカル分析では、「半値戻しは全値戻し」「50年以降安値から5割上昇した後安値を割ったことはない」などの強気な見方がある一方、①個人のコールオプション取引が急増した今の状況は過去は下落の兆候②現在の債券と株式のボラティリティ格差(4.9倍)は危険水準で、過去5倍を超えると株価が大きく下落した③ナスダックバブル崩壊時は安値から7回も大幅に戻したが、最終的には8割下落したなど、強弱が入り混じった分析がされている


⒉今後の見通し
○米国債券市場は金融機関などマクロ分析に基づき行動する投資家が多く予想も慎重になりがちな一方、株式市場では短期の値幅取り狙いのヘッジファンドや個人投資家の思惑も多様で値動きが経済の実勢から離れることも多く、債券市場のほうが転換点を予見することが多いと言われいる
○流石に来年利下げの見方は無くなったが、年内の利上げの休止の可能性を織り込みもう一段の株価の上昇の可能性はあるが、インフレの見通しやそれに伴うFRBのスタンス、企業業績への不安や中国景気への懸念から株価の上昇には持続性が乏しいと思われる。
・インフレ率は8.5%とまだ高くたとえインフレがピークに達したとしてもしつこい水準に留まる可能性が高い。
サービス価格特に家賃の上昇がインフレ圧力を高めている主因で、コアサービス価格は驚くほど高く基調的なインフレは鈍化していない。
クリーブランド連銀の極端な上下の数値を除いた7月の物価上昇率は7%で、前年同月比で過去最高を記録している。
インフレの粘着性は増していると考えられ、その背景には依然として解消されない労働力不足やエネルギーがある。
現在の石油価格の下落は米国政府の日量100万バーレルの戦略石油備蓄の放出による一時的なもので、秋になると石油価格は上昇するとみられている。
最大のリスクはFRBが引き締めを停止することでインフレが急激に戻る事で、足元のハイテク株や仮想通貨の上昇のような投機的な投資家心理は景気減速とは相容れないもので、結果FRBは引き締めを継続せざるを得なくなる。
・7月のISMによる米製造業景況感指数で在庫指数が上昇を続け1980年代以降の最高水準に達する一方、新規受注は急低下、過剰在庫の発生を示唆しており、後半の米国企業業績の落ち込みが懸念される
・日本の4〜6月期の企業業績は円安が寄与して経常利益で前年比12%増と予想以上に好調だったものの先付きについては慎重な見方が多い。
中国では消費者が節約志向を強めており中国人民銀行による預金者向けのアンケートによると所得見通しは01年以降で最低を更新、日本の機械受注に3〜6か月先行すると言われる中国企業の設備投資意欲が3〜5月急激に悪化しており、日本企業は業績の回復は一時的で今後の下振れリスクを警戒している。
・野村證券によると中国では13〜20年に事前販売した住宅のうち6割しか引き渡しされず、この間住宅ローン残高は26兆元増加、21年には建設停止となったプロジェクトは全体の2割に達する可能性があるとしている。
高齢化、出生率・婚姻率低下でGDPの30%を占める不動産市場のピークは終わったことは間違いなく、今後の中国景気の減速は不可避。
○米国株式市場は、これまでのインフレや利上げの影響が浸透する中、9月からFRBの量的な引き締めが2倍の月950億ドルに加速する事で不安定な展開が予想される。依然として投機筋のショートポジションは積み上がっており、ウクライナ情勢も膠着状態で、株価のもう一段の上昇の可能性はあるが持続性は期待できない。


⒊戦略
○市場が不安定な中では上昇の後に大きく反落する傾向があるので株式のリターンは低くなるのではないか
○債券市場の方に先見性があり中短期の米国の債券を一定額組み入れるのが望ましい。
○米国株式市場は物色がハイテク株よりもIT大手に集中してきており、特にアップル、マイクロソフトなどの4社に資金が集中的に流入しており、S&P500全体に占める割合は22%を上回る高水準、特にアップルは7.6%に達した。
このような集中は不況抵抗力を評価したもので景気の先行きに対する不安の表れである。
成長株の動きに魅力を感じるかもしれないが、ここはディスクレショナリー、インフラ、ヘルスケアなどディフェンシブ銘柄は投資した方がいい。
それでも企業利益に強気なら成長株よりも割安な景気敏感なエネルギーや銀行を選好。
○新興国については近年債務の増加した国々ではドル金利の上昇の影響がこれから本格化してくるので投資は慎重なスタンスで臨みたい。
現在米国の金融当局による、ヘッジファンドのポートフォリオの開示について厳しいルールの適用の検討が始まっている。このルールの導入が決まると流動性の劣るハイイールド債やハイイールドローン市場で大きな混乱が予想されるので、ハイイールドについてはより慎重なスタンスが望ましいと思う。