Sの記憶 | Dans la rideau craimoisi
片田舎のビーチリゾートに、やや時代遅れのオープンテラスのレストランがあった。
大磯ロングビーチの記憶と、グランビュー岩井の景色がごちゃ混ぜになっているのかも知れない。
古い古い記憶だった。おそらく大学一年の頃。

昔Sと一緒にいったレストランだった。
何故今そこにいるのか、わからない。
白い壁、白い階段、立ち並ぶパラソル。
誰もいなかった。

パラソルの下にSが座っていた。
数年ぶりの再開であった。
私が学生時代に作った映画の記憶が再現されていた。
そして、彼女と味わった一晩の罪なき快楽も。

私は自分の席に彼女を誘った。
私の席は、狭い二人掛けのソファーシート。
体を密着させるのに絶好の口実だった。

Sはあっさりと隣に座ったのだった。
自然に、始まった。
やがて彼女が上になり、大きな目をぱっちり見開いて私を見つめた。
浅黒い肌の小さな少女の顔。少し潤んだ、大きな悩ましい目だった。
私は何故彼女の顔をこんない仔細に覚えているのだろう。
今思い出すことはできないし、もはや写真の一枚も手元にない。

濃厚なキスが続いた。
彼女の舌は、腫れ上がったように厚ぼったく、ふっくらしていた。
彼女の小柄な肢体から考えると、幼い硬い舌のはずなのに。
柔らかい舌を私の奥まで差し込んでくるのだった。

彼女だったのだろうか。
彼女でなかったのだろうか。
私にはわからない。