米欧の最新鋭銃器が流入し、特定の族長を支援することで戦争が多発するようになった。特に、第一次世界大戦でオスマントルコが敗退した後は英仏を中心とする列強が恣意的に国境を策定し、自国に有利な準植民地を捏造したのである。それでも、族長制による部族が消滅することはなかった。イスラム教を権威とした族長がオラが村の代表として議員や知事となって部族を統治してきたが、所謂(いわゆる)鶴の声が民主主義を押さえこんできた。カショギが発する「報道の自由」は一部の文化人には納得出来ても、一般の大衆にとっての報道とは族長の鶴の一声なのである。

 民主主義ではない。報道の自由が無いのはある意味で真実であろうが、それがアラブ社会の伝統文化であるとも言える。そこへアラブの春と称する米欧文化を無理やりねじ込んだのがオバマである。北朝鮮に民主主義や人権、自由と報道の自由を強制したようなものだ。アラブ社会の伝統文化を尊重し平和をもたらそうとすれば、族長会議(ロヤジルガ)を優先し民族合意を取り付けるべきだ。サウジアラビアは米国に次ぐ世界第2の産油国である。エジプトとトルコがスンニ派の盟主の座をサウジに譲ったから、米国と交渉するアラブ代表は今、サルマン皇子であると言って良い。そのサウジはシーア派大国イランを敵視してイスラエルと準同盟を結んでいる。そして、トランプにとって嬉しいことに、米国製武器を12兆円も購入すると合意したのだ。クルド族を支援し、反体制派の盟主ギュレン師を保護する米国をエルドアンは快く思わない。だからロシアやイランに接近し反米姿勢を示すのだが、その作戦の一つがカショギ事件ではなかろうか。米国と連携するサウジへの攻撃だ。

 カショギが在トルコ総領事館に入って後、7分間で殺害され切断されたと報じられている。殴られ薬物を注射された上、生きたまま体を切断されたと生々しい殺人を伝えるのだが、一体誰が情報を漏洩したのだろう。トルコ当局は婚約者がカショギのスマートウォッチから音声を聞いて録音したとされる。しかし、常識的に考えれば総領事館に設置された盗撮、盗聴機器と内部の工作員が機能したのだろう。

 ※ 明日へ続く