​この話は
中途障がいになった僕の20年の歩みです。


僕は全盲で車いす。


のちに彼女(さち)に聞いた僕の印象は


『チャラい障害者』だった。


初めて障がい者が集まる会に来ていた


彼女(さち)に少し遅れてやってきた僕は


彼女(さち)が座っている場所から


テーブルを二つ挟んだ向かい側に車いすごと


テーブルについた。


そして僕は隣に座っていた女の子と


仲良く楽しそうに話しを始めたかと思うと


いきなりその女の子の頭を撫ではじめ


かなり長い間、僕は頭を撫でていたらしい。


僕はよく覚えてないのだけれど・・・。


その女の子もニコニコ嬉しそうだったので


その女の子が僕の彼女だと思っていたらしい。


イチャイチャしているように見えたのだろう。


人前で女の子の頭をずっとは撫でないだろうと。


それから僕はタバコを吸いに出てなかなか


戻って来なかった。


2回目に会ったときには同じテーブルに座り


みんなでトランプの7並べをやることになった。


そのときちょうど福祉の専門学校生の女の子が


実習で来ていて全盲の僕のサポートをするために


僕と一緒に組んでトランプをしてくれた。


僕はその専門学校生と相談しながら楽しく


トランプをしていた時、僕はその専門学校生に


「〇〇さんて、満島ひかりの声に似てるよね」


と爽やかな笑顔で顔を近づけ話していたらしい。


前回、頭を撫でていた彼女がいるのに?


こんなことがあったので、なんかチャラそうと


彼女(さち)は思っていたのだった。


そして、3度目に会ったのが


僕が会長をしていた障がい者が集まる会だった。


その時、初めてちゃんと彼女(さち)と


話しをしたのだった。


その日は11月下旬でクリスマス会をやっていた。


途中、雑談の時間になると


僕はタバコを吸うために外へ出るため


彼女(さち)に連れていってほしいと頼んだ。


そして、僕がタバコを吸っている間


僕たちは色々な話しをした。


彼女(さち)の年齢はこの時


僕の3つ年上の40歳。


バツイチで高校生の息子が二人いた。


それを聞いた僕はビックリした。


声の感じや話し方を聞いていて僕は


彼女(さち)は年下だと思っていたからだった。


彼女(さち)は、障害福祉の仕事をするのは


その時責任者を任されていたグループホームが


初めてだと言う。


元々は介護福祉士としてお年寄りの介護を


15年程やっていたというのだ。


僕の障がいについても話すと


「大変でしたね」と言う彼女(さち)に


「そんなことないですよ。医師にも言われたんですが、よくこの状況で鬱になることなくここまできたねって言われるくらい平気なんですよ」


とまたカッコつけてしまった。


もしかしたらこの時、彼女(さち)は


無意識のうちに何かを


感じとっていたのかもしれない。


全盲と肢体不自由という障がいを持ちながら


前向きに生きる凄い人だなと


彼女(さち)は思いながらも


どこか寂しそうな僕を・・・。


彼女の僕に対する『チャラい障害者』のイメージは


その時消えたようだった。


そして僕自身も彼女(さち)に対して


今まで出会った女性とは


どこか違うものを感じていた。


安心する感じというか


落ち着く感じというのだろうか


上手く説明はできないのだけれど


不思議とずっと一緒にいたいと思っている


僕がそこにはいたのだった。


タバコを吸い終わった僕は彼女(さち)と


クリスマス会に戻りクリスマス会が終わると


挨拶をし別れた。


家に帰った僕は彼女(さち)のことが


気になっていた。


また会いたいと・・・。


もっと話がしたいと・・・。


その想いは日に日に強くなっていった。



つづく