​この話は
中途障がいになった僕の20年の歩みです。


僕は全盲で車いす。


少しずつ外へ出ることが増えていった僕だが


初対面の人に障がいを持った経緯なども


もちろん聞かれることが増えていった。


肢体不自由があり車いすだけでなく


全盲という僕にほとんどの人は


「大変でしたね。辛かったでしょ?」


と言ってくれる。そんな言葉に僕は


「そんなことないですよ。医師にも言われたんですが、よくこの状況で鬱になることなくここまできたねって言われるくらい平気なんですよ」


と答えていた。


実際、医師にそう言われたことがあったのは


事実だったからだ。


でも違う。全然平気じゃないのにね。


けど、こうやってカッコいい障がい者を


演じ続けるのが当たり前になっていた。


外に出る日は時間を気にした生活をしていたが


それ以外は相変わらず乱れた生活だった。


僕がそんな乱れた生活をしていることを


知っているのは家族と彼女ぐらいだった。


そのひと回り以上年上の彼女との


付き合いも続いていたが


彼女は仕事が忙しいというのを理由に


付き合い始めて5年ぐらい経った頃から


会うのが月に一回になり、3ヶ月に一回になり


半年に一回と段々減っていった。


最後のほうはメールや電話のみになっていき


メールの返信がないこともあったり


電話に出ることも少なくなっていった。


そんなこともあり、僕は別れ話をしようと


何度も連絡をとるが連絡がつかない。


そんな彼女との付き合いも


9年近くになろうとしていた。


そんな時だった。


僕が現在の彼女(さち)に出会ったのは・・・。


それは2018年、10月のことだった。


僕は隣の市の障がい者が集まる会に参加した。


僕はいつものようにみんなに挨拶し


少し雑談をしたあと


その会の仲間とタバコを吸いに外に出た。


そして、その会が終わるギリギリに戻ると


「はじめまして。〇〇と申します。〇〇でグループホームを開設しまして、私はそこで施設長をさせて頂いています。まだ入所される方がいないので、挨拶回りと情報収集でこちらにお邪魔させて頂きました」


と一人の男性が声をかけてきた。


その時にその男性と一緒にいたのが


彼女(さち)だった。


彼女(さち)は、そのグループホームの


サービス管理責任者だった。


僕が全盲である事に気づかなかった二人に


肢体不自由だけでなく全盲であることも伝えた。


そして、僕は自分の住んでいる町の


障がい者が集まる会の会長であること


今度そちらにも来てくださいということも伝えた。


この後もう一度この場所での障害者が集まる会で


彼女(さち)と会うことがあり


3回目で僕の町での集まりに来てくれるのだが


彼女(さち)は初回と2回目にあった僕に


あまりいい印象をもっていなかったのだった。



つづく