光る君へ第33回あらすじ&感想後編 | NobunagAのブログ

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光る君へ

第33話「式部誕生」後編



まひろは内裏を出て、

自宅へと戻った。


「冷たっ!」


「ほら、俺がやるからいいよ」


いつものようないとと福丸の

賑やかな声が聞こえる。


「あんたは気にしなくていいよ。

私は冬の海にも潜るんだから」


「ハハハ…」


きぬと乙丸も仲良く

やっているようだ。


「ん〜!?」


まひろに気づいた乙丸が

思わずうなった。


惟規も


「姉上!どうしたの?」


驚いて顔を出す。


「帰りたくなってしまったの」


まひろは明るい声で伝える。


「はっ!追い出されたので

ございますね!」


いとが心配するが


「家で書いたほうが

はかどるからよ」


まひろはそう答えた。


「ああ…賢子と父上は?」


「お二人でお出かけに

ございます」


「涙で別れてまだ8日目だよ」


惟規が呆れながら言う。


「8日もご苦労なさったのですね。

おいたわしい…」


乙丸は乙丸で大げさに嘆く…


「ああ…心配しないで。

帰ってきたら晴れ晴れしたわ。

大根おいしそう」


まひろは挨拶もそこそこに

家に入っていった。


母の形見の琵琶を見る。


「姉上。

いじめられたの?」


と、惟規が尋ねた。


「高貴な姫ばかりで

そんな意地悪な人はいないわよ」


「でも帰ってきたんでしょ」


「また戻るかも」


「えっ?」


「まだ分からないけど…」


「はあ…分かりにくい

女だね。

まあいいけど。

俺は姉上みたいな女子には

ほれないから」


「私も惟規みたいな殿御には

ほれないです」


「ハハハ…だよね〜」


そんな軽口を叩きながらも

変わらぬ姉の様子に少し

安心したのか惟規は

去っていく。



さすがに自宅に戻ると、

落ち着いた環境ゆえに

まひろの筆は進んだ。



寛弘三(1006)年。


内裏ではある問題が起きていた。


「伊勢守に平維衡を任じるなど

もっての外に存ずる」


道長が険しい口調で

公卿たちに告げている。


帝もそれを聴いている。


「維衡はかの国の支配を巡り

一族の平致頼と幾度も

合戦を起こした者。

武力による力争いを許しては

瞬く間に戦乱の世となってしまう」


「されど帝がそうお望みなのですぞ」


右大臣の顕光が述べた。


道長は帝に向き直る。


「そういう者を国守とすれば

どの国の国守もやがては

武力にものを言わせようと

いたします。

右大臣殿はそれでよいと

お考えなのだな」


さすがに直接、帝を責めることは

憚られるため道長は再び

顕光を見た。


「フッ…維衡一人ぐらいでそのような」


「全てはささいなことから

始まるのだ」


道長は声を荒げた。


「まあまあまあ…」


公季が止める。


「除目の大間書には

伊勢守の名を入れずにおく。

本日の除目の儀はこれまで」


道長は立ち去った。


「お先に」


顕光も疲れたように立ち上がる。


伊周は何か言いたげに

座っている。


「左大臣殿の言うことは

なるほどと思ったが。ねっ」


道綱は弟である道長を庇う。


「されど左大臣様らしからぬ

怒り方であったな」


道長の友である公任は

それを心配した。


「平維衡殿はもともとは

右大臣様の家人。

なので右大臣様が推挙

されたのかと」


行成が説明する。


「そこまで知っておって

なぜそなたは帝の仰せのままにと

言ったのだ」


と、斉信。


「帝が仰せなら

致し方ございますまい」


行成は行成で板挟みなのだ。


「わしもそう思った」


と、実資が同意する。


「されど左大臣様は流されなかった。

さすがである。

わしは今、激しく己を恥じておる」


実資は道長の態度に感服していた。


「恐れながら帝には

朝廷も武力を持つべきというお考えは

おありにならないので

ございましょうか」


隆家が口を挟む。


伊周は


「やめておけ」


と、制した。


「ご無礼いたしました。

されどこれから先は

そういう道を選ぶことが

あるいは肝要となるやも

しれませぬ。

よくよく考えるべきと存じます」


基本的には道長に賛同する

ことが増えていた隆家だが、

血気盛んな面はいまだに

あるのだろう。


さらにはその考えも決して

間違っているわけではない

ことは皆の沈黙が物語っていた。



空欄にしたはずの伊勢守の欄に

いつの間にか何者かによって

平維衡の名が書き加えられていた。


帝の裁可を得たということになるため

道長はそれ以上手出しできなかった。



「心は他の女の方にあったとしても

見初めたころのままに

いとおしく思われているのであれば

それをよすがに思っていればいいものを

そうはならずにたじろぐから

縁は絶えてしまうものなのです」


まひろは自分の物語を

惟規といとに聞かせている。


「面白いよ、それ。

大勢の男とむつんだわけでもないくせに

よく書けるね、そんなの」


感心したのか呆れているのか

惟規は不思議そうに言う。


「むつまなくても書けるのよ」


「あの…」


いとが声をかけた。


「ん?」


「そのような下品な殿御たちのお話

帝がお喜びになりますでしょうか」


下品…といえば確かに

男女のことを書いた話であるから

貴族向けとは言えないのかもしれない。


惟規はそれに輪をかけて


「中宮様ってうつけなの?」


と聞く。


「は?」


「みんな言ってるよ。

亡き皇后定子様は聡明だったけれど

中宮彰子様はうつけだって」


彰子の良さに触れたまひろには

その評価は心外だった。


「うつけではありません。

奥ゆかしいだけ。

ご意志はしっかり

おありになるわ」


まひろの怒気をはらんだ反応に


「そんな怒るなよ」


と、惟規は返した。


まひろは釈然としない。



「除目での伊勢守の件、

叡意により平維衡をこれに

任じることといたします。

されど速やかに交代させたく

存じます」


叡意により、と帝に

言っていることから

あの伊勢守の一件は

帝が決めたことだ、と

道長は分かっている。


しかしやはり道長には

納得がいかなかった。


「恐れながらお身内にも

厳しく接してこられた

お上とも思えぬこたびのご判断。

政に傷がつかぬうちに

取り消さねばなりませぬ」


帝は不服そうに


「さほどのゆゆしき過ちを

犯したとは思えぬが…」


とこぼした。


が、道長にとっては

それこそが危険なのだ。


「お上に初めて申し上げます。

今は寺や神社すらも武具を蓄え

武力で土地を取り合う世と

なりつつあるのでございます。

加えてこの先、

国司となるような者たちが

弓矢を専らとするようになれば

いかが相成りましょうか。

やがては朝廷をないがしろに

する者が出てまいらぬとも

限りませぬ。

そうなれば血で血を洗う世と

なりましょう。

そうならぬように世を導くのが

正しき政。

お上の御ため、この国のためを

思えばこそあえて申し上げて

おります」


道長の言葉には、

偽りはなかった。


帝とてそこまで愚かではない。


「分かった…。

伊勢守は交代させよ」


「ありがたき叡慮

恐れ入り奉りまして

ございます」


道長は深く頭を下げた。



まひろは出来上がった物語を

内裏に届けに来た。


しかし他の女房たちは


「やめたんじゃないの?」


「遊びに来ただけじゃない?」


「え〜?」


と陰口を叩いている。



「帝にお見せする物語が

少し進みましたので

左大臣様にお渡しに

参りました」


まずまひろはそれを

彰子に報告した。


彰子は


「帝がお読みになるもの

私も読みたい」


と自分の思いを告げた。


「えっ」


「帝がお気に召された

物語を知りたい」


彰子なりに帝に対する

興味が強くなっているのだ。


「これは続きでございますので…

ではこれまでのところを

手短にお話しいたします」


まひろは言葉で伝えることにした。



「帝は忘れ形見の皇子を

宮中に呼び寄せて

かわいがられますが

この皇子が物語の主と

なります。

皇子はそれは美しく賢く

笛もご堪能でした」


「帝みたい」


彰子は憧れたようにつぶやく。


「まことに」


「その皇子の名は?」


「あまりにも美しかったので

光る君と呼ばれました」


まひろは笑顔で答えた。


「光る君…。

その皇子は何をするの?」


普段、ほとんど喋らない彰子は

まひろには次々と口を開く。


「何をさせてあげましょう」


「ん〜…」



「続きにございます」


彰子に続いてまひろは

道長のもとにも、

作品を届けた。


「大儀であった」


道長はパラパラとめくってみる。


「これで終わりか?」


「いえ、まだまだ続きます」


彰子が期待を持っているからには

まひろはそれに応えたい。


「これまでわがままを申しましたが

お許しいただけるなら改めて

藤壺で中宮様の御ために

力を尽くしたいと存じます」


ききょうと定子のような

衝撃的な出会いではなくとも

まひろの中には彰子への

不思議な情が生まれている。


「まことか!」


道長は嬉しそうに尋ねる。


が…


「ありがたいことだが…

どうしたのだ?

よく気の変わる女子だな」


まひろは周りに聴こえぬよう、

少し道長のそばに寄った。


「中宮様のお好きな色は

空の青らしゅうございます」


「青?」


「はい」


道長も知らなかった…と

いった感じで考えこむ。


「中宮様のお心の中には

表に出てこないお言葉が

たくさん潜んでおるのもやも

しれませぬ。

中宮様ともっとお話ししたいと

存じました」


道長も微笑む。



「お上のお渡りにございます」


帝の来訪が告げられた。


「帝が藤式部に会いに

いらっしゃるの?」


まひろが思ったよりも、

男たちから認められていることに

女房たちは驚くが同時に


「中宮様にはご興味ないもの」


という意地の悪い声も聞かれる。



帝はまひろの前に座ると、

まずは彰子に声をかけた。


「彰子、変わりはないか?」


彰子は頷く。


「藤原為時の娘、

まひろであったか?

久しいのう」


帝はまひろのことも

覚えている。


「高者、未だ必ずしも賢ならず

下者、未だ必ずしも愚ならず

朕の政に堂々と考えを

述べたてる女子は

亡き女院様以外には

おらなんだゆえ、

よく覚えておる」


「恐れ多いことにございます」


「光る君とは敦康か?」


単刀直入に帝は聞く。


物語の流れからいえば、

そうなるだろうが…


「ないしょにございます」


「あの書きぶりは朕を難じて

おると思い腹が立った」


一瞬、皆に緊張が走る。


が、帝は


「されど次第にそなたの

物語が朕の心にしみいってきた」


そう認めた。


「まことに不思議なことであった」


「は…」


そして帝はさらに

どれほどの評価をしているかを

言葉にした。


「朕のみが読むには惜しい。

皆に読ませたい」


「はい。物語は女子供だけの

ものではございませぬ」


誰もが読んでいい、

読んでほしいのだ。


「中宮様にもお読みいただければ

この上なき誉れに存じます」


彰子は嬉しそうにまひろを見る。


道長はそんなまひろの優しさに

感じ入っている。



帝との謁見が終わると、

道長はまひろに


「褒美である」


と、細長い箱を渡す。


「は…」


「フフ…

これからもよろしく頼む」


少し恥ずかしそうに

道長はそう言うと立ち去る。


まひろは箱を開けてみた。


中にあったのは扇…


まひろがそれを広げると、

そこに描かれていたのは、

青い衣の少年と、

赤い着物の少女…。



「鳥が逃げてしまったの

大切に飼っていた鳥が」


「鳥を鳥籠で飼うのが

間違いだ。

自在に空を飛んでこそ鳥だ」



そんなふうに言っていた

青い衣の少年…三郎。


道長。


それを聴いている

赤い着物の少女はまひろ…。


そして扇には、

空を飛ぶ鳥が描かれている。


二人だけの思い出…。


道長もずっとあの日の出会いを

覚えていたのだ。


まひろは扇を抱きしめた。



錫杖の音を響かせて、

僧の一団が物々しく

歩いている。


大和から京の都を揺るがす

一団が向かっていた。



道長は僧らの代表者に会う。


「左大臣、藤原道長である。

何事だ」


「興福寺別当の定澄にございます」


もう一人の僧、慶理が


「興福寺の僧ら3000は

既に木幡山に集まっております」


と告げる。


「我らの訴えを直ちに陣定に

おかけくださいませ。

それがならねばこの屋敷を取り囲み

焼き払い奉ります」


強訴、である。


伊勢守の件でも

道長が危惧していたとおり

こうして武力に物を言わせる

連中が増えてきていたのだ。


「やってみよ」


道長は引かずに応えた。


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平維衡の名前が出てきていたが、

やがては伊勢平氏の祖となる

重要な人物である。


そしてこの伊勢平氏こそが

後に平清盛を生み出し、

平和だった内裏を武力により

支配するようになり、

やがては源平合戦に繋がっていく…


まぁ、その頃は朝廷側も

後白河法皇という、

なかなかの怪物を生み出し

源平勢力に対抗するようには

なっていくのだが。


とはいえ本来の貴族、

公卿の役割というのは

帝…天皇家を危険にさらさないこと、

民のためにもいくさを

可能な限り防ぐこと、である。


道長はそうした原点を

ちゃんと忘れていない。


「武力か物を言うことを許したら

やがてそういう世の中になる」


と危惧しているのは、

現代人のような思考で

浮いているようにも

感じたという意見もあったが、

そうではなくて…


公家というのは単に

歌をうたい蹴鞠をしている

麻呂の集団ではない。


こうして道長のように

いかにしていくさをなくすか、

武力に物を言わせるような者を

諌めていくのかも、

大切な視点だった。


だから本当の道長だって、

こういう人だったかもしれない。


隆家は朝廷も武力を

備えたほうがいい、

と考えていたようだが

後の平家の台頭を考えると

これも間違ってはいない。


隆家はやがて刀伊の入寇では

自身の武力でもって活躍する

公卿らしからぬ人物だし、

平安時代のこのあたりは

平和な時代から力が物を言う

時代へと転換する過渡期。


隆家の存在などは

特異点のようなものだ。


だが、いくさなどないほうが

民のためには良い、

というのは当然であり…


この道長らの時代が終わり

平清盛が台頭し始めると

そこからはもう、

徳川家康が戦乱を治めるまで

実に600年にわたる、

戦いの世が続いてしまうのだから

道長がそんな時代が来ないよう、

手を尽くしていた、

というのは良い描写だった。



彰子さまはずいぶん、

まひろに心を開いている。


帝が読む物語を私も読みたい。


これはそのまま、

彰子自身の中に帝への

興味というものが

わいてきている証拠だ。


元々、まだ子供なのに

入内させられていたのだから

やがては年頃になるにつれ、

自分と帝は夫婦なのに

どうして帝は私のところに

来てくれないの?


赤染衛門からも男女の

あれこれは聞いていたろうから、

なぜ、帝は私に興味を持って

くれないのだろうか、

私には魅力がないのだろうか?

と、若いながらにだんだんと

悲しい疑問を抱き始めても

無理はない年齢になっている。


それはどうしても、

帝自身の定子への愛が

強すぎたがゆえに、

帝自身も苦しんではいたと

思うわけだが…。



まひろの物語は惟規が聞いても

面白い内容だが、

いとからすれば下品な話、

でもある。


だが、それは一見の感想であり

読み込んでいる帝はそこに

唐の故事や仏の教えが

取り入れられていることに気づくなど


「マニアックなこだわり」


に満ちた魅力的なものだった。


そしてそこに描かれている

登場人物はどこか、

帝のようでもあるし

敦康親王のようでもあり…


彼らがどう生きるべきか、

生きるとはどういうことか、

それを問いかけてくる

素晴らしい作品であった。


帝は


「皆に読ませたい」


と感じたし、おそらくは

これによって他の女房たちも

まひろに一目置くようになり

中にはまひろのファンも

生まれるのではないだろうか。



それにしても道長が

まひろに褒美としてあげた

扇はあまりにも胸キュンすぎる

最高のプレゼントであった…。


二人の出会い、

二人しか知らない瞬間を

描いた扇。




空にはあの日まひろが

追い求めていた鳥も

描かれている。


あの日、空を飛ぶ鳥を

追いかけていた少女は

いま、彰子という

翼を得て羽ばたこうと

しているのだ。


道長は鳥は空を飛んでこそ

鳥である、と

あの頃と同じように

見守っている。


さすがにこんな素敵なものを

贈られたら惚れ直して

しまうではないか…


男の俺でさえ

なんて粋な贈り物を!!と

感動させられた…


ちょっと…初めて

道長、かっこいいじゃん…って

思った…


そして、男の脚本家では

なかなかこれは描けない。


やはり、時にはこうして

女性脚本家、女性が主役の

大河ドラマもいいものだ。