光る君へ第27回あらすじ&感想後編 | NobunagAのブログ

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光る君へ

第27話「宿縁の命」後編




「なんて見事な入内の

お道具でございましょう」


浮かない顔で庭に佇む

彰子の耳に倫子の声が

聴こえてくる。


「彰子の入内はどうしても

盛り上げねばならぬ」


「まことに」


「うむ」


道長はしばし考える。


「あっ、ここに公卿たちの

歌を貼ったらどうであろう」


「え?」


「公卿たちが名入りで

歌を献じたことをしめせば

帝も彰子に一目置かれるであろう」


「それはようございますね」


「うむ」


「ああ清書は…」


適任者がいる。


「行成に頼もう」


倫子は嬉しそうに頷く。


「さぞや見事な屏風に

なりましょう」


「うむ」



斉信はいち早く道長のもとに

歌を持ってきた。


「できたぞ」


「おっ」


道長は嬉しそうに受け取る。


「これはいい出来だぞ。

笛竹のよふかき声そ

聞こゆなる

きしの松風吹きやそふらん」


斉信は胸を張った。



「待たされましたぞ。

肝を冷やしました」


そう言う行成のもとに

歌を届けにきたのは公任だ。


「下手な歌を詠んでは

名折れだからな。

むらさきの雲とそ見ゆる

藤の花

いかなる宿のしるしなるらん」



行成は次々と公卿らの歌を

改めて書き写していく。



大反対したのはほかならぬ

実資だ。


「歌は詠まぬ」


「そこをなんとか…」


源俊賢が説得を試みる。


「学才並ぶ者なき

中納言様のお歌を

左大臣様は切にお望みで

ございます」


「公卿が屏風歌を詠むなぞ

ありえぬ。

先例もない」


オウムが


「センレイ…」


と繰り返した。


生真面目な実資にとっては

左大臣の意向を尊重して

先例にないようなことをする、

というのが気に入らないのだった。


「左大臣家の姫はまだ入内前。

女御にもなっておらぬ者のために

何故、公卿が歌を詠まねばならぬのか」


「それは…」


「左大臣様は公と私を混同されておる」


立ち去る実資。


確かにそれには一理あり、

俊賢はため息をつくしかなかった。



「実資殿らしいな」


「力及ばず申し訳ございませぬ」


道長は俊賢の報告を聞いている。


そこへ行成が恭しく

何かを持ってやってきた。


「御免被ります」


とやってきた。


「何事だ」


「花山院からお歌が

送られてまいりました」


道長も俊賢も声を失い

思わず立ち上がる。


「そもそも奇矯なお振る舞いの多い

院ではあられますが…」


道長は歌を手に取る。


「左大臣様へのおもねりで

ありましょう」


と俊賢は分析するが、

それこそが道長の権勢の

証ともいえた。


「思惑はどうあれ

ありがたく頂戴いたそう」



屏風に歌が貼り付けられていく。


「慎重にな」


「はっ」


道長の思惑どおり

この屏風は公卿の多くが

支持していることの

証しとなり、

道長の政にも大きな意味を

持つこととなった。



屏風を見てほくそ笑む

道長のもとを


「ほう〜」


とバツが悪そうな実資が訪れた。


「中納言殿、いかがされましたか?」


「いやいや、次の陣定にて諮る

新嘗祭のことで…」


「ん?」


「お忙しそうなので

出直してまいります」


「中納言殿」


道長は呼び止めた。


「こちらが彰子様に

お持ちいただく屏風です」


彰子様、と呼んでいるように

道長にとってはもう

彰子はただの娘ではない。


「いやいや…

出来上がったのでございますか」


「中納言殿にお歌を

頂けなかったのは

残念でありましたが

なんとか仕上がりました」


見事な屏風に実資は見とれる。


「公任殿の歌はさすがで

ございますな」


やはり公任の作品は

ひときわ目を引くようだ。


「花山院のお歌もこちらに」


道長が院の名を出すと

さすがに実資も目が泳ぐ…


「ほほう…お〜…」


道長はいたずらっぽく

そんな実資を見る。


「大納言をはじめ

大勢にお歌を頂戴いたしました」


道長は歌をくれた者たちの

名が書かれた紙を見せる。


しかし道長は実資を責めない。


それどころか褒め始めた。


「中納言殿が歌は書かぬと

仰せられた時の、

自らの信念を曲げず

筋を通されるお姿、

感じ入りました」


実資は言葉もない。


「これからも忌憚なく

この道長にご意見を賜りたく

お願いいたす」


道長は頭すら下げている。


「いやいや…」


これには実資も笑顔を

見せるしかなかった。


「ハハ…院までもか…

ああ、これはこれは」



11月1日、彰子が入内した。



その夜、まひろはふと、

目が覚めた。



読経が読み上げられている中、

伊周、隆家は弓を放っている。



「まだ足りませぬ」


産声が聴こえてきた。


「ああ…ハハハハ…。

はあ…うん」


隆家が笑顔をみせた。



荒い息遣いを聞きながら

ききょうが定子を労っている。


彰子の入内から6日後

定子は皇子を産んだ。



帝の喜びは多大なものがある。


「中宮は無事か!」


「中宮様も皇子様も

お健やかとのことにございます」


行成が報告する。


「ああ…よかった」


「おめでとうございます」


「定子…よくやった」



その報告を聞いた居貞親王は


「皇子か…」


とため息をつく。


「祝いの品を手配いたします」


淡々と告げる道長。


「叔父上も痛手でありましょうな」


「そのようなことはございませぬ」


「叔父上の姫が入内したそうだが

これでは意味もない」


「意味はございます。

皇子のご誕生でますます

中宮様に傾かれる

帝のお心をおとどめ申すには

私の娘が欠かせませぬ」


居貞親王は驚く。


「そんなによい女子なのか

彰子とは」


「おかげさまで」



伊周にとって帝と定子に

皇子が誕生したことは

願ってもない朗報である。


「これで左大臣も

俺たちをむげにはできまい。

皇子様が東宮になられれば

再び我らの世となる」


「あんまりお急ぎにならないで兄上」


定子はそんな伊周が心配だ。


隆家の考えは伊周とは違っていた。


「生まれた皇子様が東宮に

なられるということは

帝がご退位されるということですよ」


伊周は隆家を見る。


「帝が退位あそばせば

姉上の力も弱まる。

焦るとよい目は出ないと

思うがな〜」


そう言って耳の穴をかいた。


いつの間にか隆家のほうが

冷静に政治のことを

分析できるようになっている。


もちろん伊周は気に入らず、

言い返す。


「何だと?」


そんなやりとりをききょうは

黙って聴いている。


「けんかしないで」


定子が止めた。



詮子は皇子の誕生を祝うため

帝のもとを訪れている。


「皇子様のご誕生、

まことにおめでとうございます」


「ありがとうございます」


帝は微笑み頭を下げた。


「皇子様はいずれ東宮と

なられる身。

お上のように優れた男子に

育っていただかねばなりませぬ」


帝はそんな母に真逆のことを述べた。


「朕は皇子が私のようになることを

望みませぬ」


「え?」


「朕は己を優れた帝だとも

思ってはおりませぬ」


「なんと…」


詮子は言葉を失う。


「私が手塩にかけて

お育て申し上げたお上です。

優れた帝でないはずは

ございませぬ」


帝は暗い声で


「朕は中宮一人幸せには

できぬのですよ」


と自分を卑下する。


「それは…そもそも

あちらの家が…」


定子の実家を責めるような

詮子に帝は声を荒げた。


「朕は母上の仰せのまま

生きてまいりました。

そして今、公卿たちに

後ろ指をさされる帝に

なっております」


「ですからそれは

伊周らが悪いのです。

中宮もお上のご寵愛を

かさに着ていい気に

なり過ぎたのですよ。

決してお上のせいでは

ございませぬ」


だが、そうやって

全てを定子のせいにする

母にこそ帝は腹を立てている。


「こたびも母上の仰せのまま

左大臣の娘を女御といたしました。

されど朕が女御をいとおしむ

ことはありますまい」


「いいかげんに中宮に

気をお遣いにるのは

およしなさいませ」


帝はさらに怒った。


「そういう母上から逃れたくて

朕は中宮に救いを求め

のめり込んでいったのです。

全てはあなたのせいなのですよ!」


唖然とする母、詮子。


帝はいたたまれず立ち去ろうとする。


「お待ちください!

お上はそのように

この母を見ておられたのですか」


「はい」


「私がどれだけ…

どれだけつらい思いで

生きてきたか…私が…」


「もうお帰りくださいませ」


「私は父の操り人形で

政の道具でそれゆえ私は…」


帝は振り向くと


「朕も母上の操り人形でした」


と応えた。


「父上からめでられなかった

母上の慰みものでございました」


詮子の目から涙がこぼれる。


「そのような…私は…」


「女御の顔を見てまいります。

母上のお顔を立てねば

なりませぬゆえ」


そう告げる帝。


2人の間は御簾で隔てられ

それが2人の心の距離を

物語っているかのようだった。



くしくもその日、

入内から間もない彰子は

早くも女御となり

その披露目が盛大に行われた。


帝は彰子が持参した

屏風に目をとめる。


そばには道長をはじめ

多くの公卿たちが集まっていた。


帝は彰子の前に座る。


「女御の宣旨を賜り

ありがたき幸せにございます。

幾久しくよしなにお願い申し上げます」


と、道長が礼を述べる。


彰子は黙って頭を下げている。


「面を上げよ」


彰子の前に顔を上げる。


その姿もまた操り人形のようだ。


帝は苦笑しつつ


「そなたのような幼き姫に

このような年寄りですまぬな」


と言った。


彰子は帝を見る。


公卿らもそのやりとりを

聞いている。


「楽しく暮らしてくれれば

朕もうれしい」


帝は笑顔を見せてやった。


「はい」


短く彰子は答えたが、

それだけだ。



「よりにもよって

女御宣下の日に皇子が

生まれるとは。

我が運も傾きかけておる」


道長は晴明にぼやいた。


「傾いてはおりません。

何の障りもございませぬ」


「このごろ体調もよくないのだ」


晴明は驚くべきことを述べた。


「ならば女御様を中宮に

なさいませ」


「え?」


「太皇太后昌子様が

先頃、お隠れになりましたゆえ

皇后の遵子様を皇太后に

祭り上げれば皇后の座は空きます。

そこに中宮定子様を入れ奉り

そして彰子様が中宮になられれば

皆もひれ伏しましょう」


淡々と告げる晴明。


「一人の帝に二人の后なぞありえぬ!」


道長は否定する。


「やってしまえばよいのです」


「なんということを…」


「国家安寧のために

あなたは彰子様を差し出された。

一帝二后は彰子様のお力を

より強めましょう。

左大臣様のお体も回復されます」


自信をもって言い切る晴明。


道長は


「一帝二后…」


とつぶやいた。



乙丸らが読経を唱える中、

まひろのもとにも

赤子が生まれた。


「お方様…」


まひろは我が子を見る。


道長の子…


娘の誕生である。


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前編感想にも書いたが、

ドラマだと割り切ってしまえば

かなり興味深い展開である。


まひろには道長との子が生まれ…


そのまひろもやがては、

一帝二后としてより強く

帝と結ばれていく彰子に

仕える女房となる。


有名な源氏物語は、

実はなかなか定子のことが

忘れられない帝の気を引き

彰子のところに通ってもらうため

書き始めた作品である、

とも伝わっている。


だから光源氏のモデルの一人は

一条天皇であるともいえるし

まひろ…紫式部の書いた

源氏物語こそが帝と彰子との

仲を取り持つきっかけとなった、

という説もある。


こうした通説に加えて

まひろの娘の父親が

道長だったら?


という視点も加わることで

かつては友でもあり

頼れる先輩ともいえた

道長の妻、倫子との関係性も

当然ながらクローズアップ

されていくはずだ。


倫子まは…本当に出来たお人で

史実上は道長より高い官位を

得ていた時代すらもある

素晴らしい妻なので

当然、悪妻などではない。


そういう倫子さまに対して

まひろは娘のことを隠し切るのか

真実を告げるのか…


そのあたりの葛藤が描かれれば

物語の深みは増すはずだ。


今回、一時的に批判が強くなっているが、

一部の


「大河ドラマはこうあってほしい」


はわかる反面、

過去の大河ドラマとて

ほとんどが創作が中心だし

史実なんか無視してるような

作品はたくさんある。


「昔はそうじゃなかった!」


は完全に嘘で昔のドラマほど

小説が原作だったりして

フィクションが多い。


昔はよかった系はマボロシの

書き込みなのでそれは

無視してかまわない。


あくまでドラマとして

面白いかどうか、

それが大切なことだ。


今回、思い切ったフィクションへ

舵を切ったとは思うのだが

それはハードルを上げた反面

そのうえで完成度の高い

ドラマさえ見せてくれれば

一気に歴史に残る名作となる。


これは大きなチャレンジでもあり

紫式部が源氏物語という大作に

チャレンジしたのと同様に、

大石静氏からしてみたら


「失敗できない挑戦」


を己に課したともいえる。


その度胸は批判されるべき

ものだとも思えないし、

今後も楽しく見守りたいとは

思っている。