光る君へ第17回あらすじ&感想後編 | NobunagAのブログ

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光る君へ

第17話「うつろい」後編



詮子と道長らが今後の策を

講じている一方で、

伊周の側も動いている。


「内々に先例を調べさせておりました。

父上のお命のあるうちに

兄上は帝から内覧のお許しを

得られませ」


定子がそう勧める。


内覧とは帝に奏上する

文書や帝が宣下する文書を

事前に読むことができる

関白に準ずる職である。


「20年ぶりでも何でも

やってしまえばよいのです。

父上から帝にお願いしていただいて。

私からも帝に強くお願いして

おきますから」


伊周は頼もしい妹を見る。


「されど定子はすごいな。

男であったら俺なぞ、

かなわぬやも」


帝の后に仕える臣下ではなく、

昔の兄としての姿に戻って

伊周は素直にそう口にした。


「あの女院様から我が身を守り

帝をお守りしているうちに

強くなりました。

内覧にってしまえば

関白になったも同じですから

ともに力を尽くしましょう」



密かに道長らと、ともに

動いていた道兼であったが

兄の道隆から急な呼び出しを

受けていた。


「火急の御用とは

何事でございますか」


「こちらへ参れ」


道兼は3歩ほど進み出る…


が、道隆はよく見えないのか

さらに手招きした。


道兼が遠慮して動かずにいると

道隆は這うようにして

その近くへと座る。


そして探るように、

道兼の手を握った。


意外な行動に道兼は固まる。


「もしわしが倒れても

いまだ懐妊せぬ中宮様も

貴子も伊周も隆家も…

支えてやってくれ」


政治色を抜きにした、

必死な訴えである…


「酷なことをしないでくれ」


道隆は見下していたはずの弟に

涙ながらに頼み込む。


「どうか…どうか、どうか、どうか…

伊周を…我が家を…頼む」


その手を握りしめながら、

泣いて頭を下げる

初めて見る兄の弱い姿に

道兼は答えを失った。



桜が咲き始めた。


荘子の胡蝶の夢を

書き写しているまひろ。


「姫様!あの…」


遠慮がちに告げる乙丸が

連れてきたのは…


「まひろ様…」


あれ以来、交流が

途絶えてしまっていた

さわであった。


まひろは驚いて出迎える。


「ご無沙汰いたしました。

その節のことはお許しくださいませ」


頭を下げるさわを


「どうぞお上がりくださいませ」


とまひろは屋敷の中へと

招き入れた。



「ご息災でした?」


「はい。私は何があっても

病にはならない頑丈な体なのですが

実は兄弟を疫病で亡くしまして…」


「それはお気の毒なことで

ございました」


疫病の被害はこうして

彼女たちの身近なところで

着実に起きている。


「あまりにはかないことで…。

人に許された年月は

実に短いのだと知りました」


「本当にそうですね。

私が文字を教えていた子も

その親もついこの間、

疫病で逝ってしまいました。

私もかかってしまって、

危うく…」


「えっ」


さわは驚く。


「今、生きていることも

少し不思議な気がします」


「まひろ様!」


さわはまひろの手を取った。


「再びまひろ様にお目にかかれて

本当にうれしい。

生きていてくださって

ありがとうございます」


兄弟を失っただけに

まひろと仲違いしたままで

もしお別れになっていたらと思うと

恐ろしくなったのだろう、

さわはあらためてまひろに

礼を述べた。


「私もお目にかかれて

うれしいです」


笑顔を見せるまひろ。


「石山寺の帰り道のことは

どうかお許しくださいませ。

このとおりでございます」


さわは深々と陳謝する。


「そんな…。

私も…」


「頂いたお文をいちいち

お返ししましたことも

申し訳ございませんでした。

実は頂いた文は全て

書き写して持っております」


「えっ!」


意外な言葉にまひろは

驚きを隠せない。


全て?


さわはそれをまひろに見せた。


「あ…まことに私の文と同じ…」


「まひろ様の文を写すことで

まひろ様に追いつきたいと

思っておりました」


まひろが蜻蛉日記の作者、

寧子と書の話で盛り上がって

いたのを見て、

嫉妬してしまったさわ…


が、そのさわは一生懸命

そんなまひろに追いつこうと

まひろの文を真似て、

文字の練習を重ねていたのだ。


「フフフ…」


まひろは思わず笑った。


「そんなことできっこないのに…」


まひろはさわの書いた文を眺める。


さわはまひろに飛びつくように言った。


「まひろ様。私の友は

まひろ様だけなのでございます。

いろんなことがあって

そのことがよく分かりました。

まひろ様、また私と

仲よくしてくださいませ。

末永く、末永く私の友で

いてくださいませ」


まひろとさわは笑いあった。



夜になりまひろは

あらためてさわが書いた

文を見た。


私の書いた文が、

さわさんの心を…。


書くことの何が…。



その頃、書を読んでいた道長は

ふと月を見上げた。



まひろは居ても立ってもいられず

筆を持った。


何を書きたいのかは分からない。


けれど筆を執らずにはいられない。


そんなまひろを、

月が見守っている。


その月を道長は

離れた場所から見ていた。



いよいよ、体調優れぬ道隆は


「病の私に代わり全ての政務を

内大臣伊周に委ねることを

お命じいただきたく

伏してお願い申し上げまする」


声を絞り出すように

帝に懇願している。


「何とぞ内大臣に内覧のご宣旨を」


なりふり構わなくなった道隆に

帝は冷静に告げた。


「しばし考えて後に宣旨を下す」


道隆は首を振る。


「今、お約束いただかねば

安んじて養生もできませぬ。

どうか今、お心をお決めくださいませ。

今、ここで宣旨をお下しくだされ」


帝は


「下がれ」


と短く命じた。


「はっ…」


道隆が肩を落として去ると


「蔵人頭はどう思うか」


帝は尋ねた。


「すぐには関白のお申し出を

お受けにならぬお上は

まことにご聡明だと存じました」


「関白の言うことを

むげに断るわけにもゆかぬ。

されど言いなりになっても

ならぬとも思う」


帝はあれ以来、

成長していたのだ。


「まことに」


それでも優しい帝は

悩んでもいる。


「伊周のこと朕は嫌っておらぬ。

しかし何分まだ若すぎる」



定子のもとを道隆が訪れる。


何かに憑かれたように


「皇子を産め…」


とつぶやきながら近づいてくる道隆。


「早く皇子を産め!」


「いかがされました?」


いつもと違う父の様子に

定子は戸惑う。


ただならぬ様子に、

ききょうは他の侍女に目配せし、

他の者に聞かれぬよう

御簾をおろした。


「お前は帝の唯一無二の

后であろう。

ほかの姫の入内も阻んでおるのに

何をやっておる」


「帝はまだお若くておいでですので」


「とっくに元服されておる

ではないか!」


道隆は怒りをぶつける。


「わしが摂政から関白に

なったのも帝を一人前と

認めたからだ」


「それなりにつとめております。

帝の毎夜のお召しに

お応えしております」


そんな言いづらいことまで

定子は答えるが道隆は


「足りない…足りない…足りない…

足りない…足りない…足りない…。

まだまだ、まだまだ足りない!」


よろめく道隆。


「皇子が出来れば

帝は我が一族の真の味方となる。

皇子がないゆえ帝のお心が

揺れるのだ」


まるで定子のことを

道具のように言う

道隆をききょうは睨んでいる。


「皇子を…皇子を産め。

皇子を…皇子を産め。

皇子を…皇子を産め。

皇子を…皇子を…」


定子が見つめる中、

道隆の呪いのような声が響いた。



後に一条天皇は伊周に

内覧を許すが、

そこには関白の病の間という

条件がつけられていた。



「ねえ、3月20日に

大納言、朝光殿が亡くなったんだって」


道綱がこっそりと

道長に話しかける。


「皆さんもうご存知です」


「あっそうなの?

疫病らしいな、怖いことだ」


高位の貴族たちは疫病には

かからないという神話が、

崩れつつあった。


「この前の陣定の時は

まだかかっておらなんだと

思いたいな」


「かかればあっという間らしいから

陣定の時はまだかかって

おられなかったでしょう」


公季が希望的観測を口にした。


「我らはもう屋敷から

出ない方がよいのではないか?」


感染症対策、と考えれば

間違いではないのだが、

真面目な実資は口を挟んだ。


「屋敷に籠もっておっては

政はできませぬ」


「それはそうだが…」


道綱が困ったように

情けない声をあげた。


「恐ろしいなあ…。

恐ろしくない?」


「疫病が内裏に入り込んだことは

全て関白様の横暴のせい。

長徳などという元号にし、

息子を内覧に据えた積悪の所業、

許し難し」


当時の感覚からすれば

実資が言うように、

政治が悪かったから

罰が当たったと考えるのも

やむを得ないことである。


「そんなこと…

聞こえたら大変だよ」


道綱は慌てる。


「私は間違ったことは

申しておりませぬ!

内大臣、伊周殿に明日はない」


「それはそうだけど…あっ、来た」


当の伊周が歩いてくる。


聴こえていたのか、

いないのか…


伊周は黙って席につく。


そんな伊周を道長は見つめた。



伊周を内覧に…


その願いを叶えてもらった

道隆であったが、

それでも心配は尽きない…


道隆は帝のもとを訪れると

いきなり御簾を開けて、


「伊周を…関白に」


と帝に迫った。


あまりに不敬な行動に

周囲が色めき立つ。


「お上、伊周を関白と

お定めください!」


「関白様!」


俊賢が止める。


「お上…伊周を関白に!

お上!」


「関白様!」


取り押さえられながら

道隆は叫ぶ。


鬼気迫る道隆の様子を

帝は驚きながら見つめる。


「お上…伊周を関白に!」


「関白様!」



桜は散り菜の花が咲いている。


道隆は死の床にあった。


その手を貴子が握っている。


「まだ死ねない…」


「殿はまだ大丈夫でございますよ」


貴子は明るく励ました。


「伊周は?」


「伊周は内裏に上がっております」


内裏、という言葉を聞いて

道隆は若き日を思い出す。


「そなたに会ったのは

内裏の内侍所であった」


道隆の表情が少し和らぐ。


「スンと澄ました女子であった」


「道隆様はお背が高く

キラッキラと輝くような

殿御でございました」


恋したあの頃を思い出し

貴子は微笑む。


「忘れじの行く末までは

難ければ

今日を限りの命ともがな」


貴子の歌を道隆は口にする。


「あの歌で貴子と決めた」


道隆は楽しそうに言った。


貴子はその手を握りしめる。


庭には2匹の蝶が戯れるように

飛んでいる。



長徳元年4月10日。


藤原道隆は43歳で世を去った。


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摂政、関白というのは

教科書でも習うが、

内覧、というのは

知っている人は少なかった

かもしれない。


関白と内覧では、

格式としては関白のほうが

上ということになるのだが、

実務としては内覧のほうが

自由が効く部分もあり、

後に道長はあえて関白には

ならずに内覧で通している。


が、少なくとも関白にせよ

内覧にせよ、

天皇の意志を左右する

大切な役職であるため

20歳やそこらの伊周を

その役割に、というのは

さすがに専横が過ぎるというもの。


帝は一度断った後に、

あくまで道隆が養生してる間

という条件つきで、

伊周を内覧とした。


この判断は機転も聞いており、

帝からすれば定子のことは

本当に愛してはいるにせよ

その身内ばかり贔屓しては

いけない、という

しっかりした意志を

持ち始めたことがうかがえる。



さわさんは…なんというか

ヤンデレチックというか…


まひろの文を写して

文字の練習をした、は

理解は出来るけれども

全部写して持ってた、

までいくとストー…いや、

それだけ思いが強いのだろう。


良くも悪くも、

思い込みが強いから

仲が良いときは良いが

こじれるとめんどくさい…


さわが登場したときは

明るくて裏表がなさそうで

良い子だなと、思ったけれど

一筋縄ではいかないのが

このドラマであるw



しかし寧子の時と同じで、

こうしたさわとのやりとりも

まひろが


「何かを書きたいと思う気持ち」


を抱くきっかけとなっている。


だんだんと作家としての

まひろは目覚めつつあり…


実際、源氏物語を書く前から

その草案のような話を

作っていたというから

こうして次第に筆を取っては

何かを書く、という

行動を取るようになるのだろう。



娘でもある定子に、

皇子を産めと迫り、

毎夜、帝の招きに応じている、

とまで言わせてもなお、

足りない…と叫ぶ道隆は

恐ろしいものがあった。


普段、温厚で若い頃は

颯爽とした自慢の父であったから

余計にその変化に、

定子はもちろん見ている我々も

胸が痛むシーンだ。


こうした醜態を見せないように、と

御簾を下げさせたききょうの機転や、

それでも道隆の背中を睨む姿は

清少納言そのもの、といった感じで

非常に良かった。



道綱は相変わらずヘタレで、

実資は(政治の時は)実直。


この辺が良いアクセントに

なっている。


というよりこの2人がいないと

暗すぎてきつい…


もはや政治パートの癒やし枠である…。



道隆はさんざん、

哀れな姿を晒してしまったが

最期は妻の貴子に看取られて

一抹の救いは感じさせる

美しい亡くなり方だったと思う。


43歳は若いのだが、

当時はこの年で亡くなる人は

決して少なくはなかった。


「忘れじの行く末までは

難ければ

今日を限りの命ともがな」


忘れない、という言葉が

永遠に続くわけではないから

その言葉を聞いた、

今この瞬間に死んでもいい…


そんな歌を作った貴子の

愛の深さに道隆は惹かれた。


出会いの場面は描かれては

いないけれども、

この夫婦に燃えるような恋が

あったことを感じさせる

素敵なやりとりである。


キラッキラと輝く殿御でした。


その言葉から分かる通り、

貴子にとっては道隆こそが


「光る君」


だったのだろう。


誰の心の中にも、

光る君はいて…


この物語のタイトルを

2人のやりとりに託した

印象的な場面である。


道隆も貴子もべつに、

悪人なわけではない。


ただ、懸命に家を守るために

その命を使った。


なぜならば愛する人と、

作り上げたものだから、

ということだろう。


道隆の晩年は、

失敗もしてしまったけれど

こうした兄から学ぶことも

道長にはたくさんあるはずである。