光る君へ第13回あらすじ&感想後編 | NobunagAのブログ

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光る君へ

第13話「進むべき道」後編




道長は2人めの妻、

明子のもとに通っている。


「道長様」


「ん?」


「子ができました」


道長は少し嬉しそうに

明子を見つめたが…


「こんな時でも笑顔はないのだな」


と淡々と返す。


「申し訳ございませぬ」


「まあ、無理をすることはないが…」


道長は起き上がる。


「ほほ笑むことすらなく

生きてまいりましたゆえ

こういう顔になってしまいました」


明子は明子で父を失い

苦労して生きてきている。


「けれど道長様のお子を

宿したことはうれしゅう

ございます」


明子は道長の肩に頭を乗せる。


「そなたをほほ笑ませる

すべもない俺もふがいないが

立派な子を産んでくれ」


道長は立ち上がり去ろうとする。


「道長様」


「ん?」


「お願いがございます」


明子は改まる。


「何だ?」


「お父上のお見舞いに

行かせてくださいませ」




「父上、明子女王にございます」


道長は兼家に呼びかけるが、

兼家は何か怯えたような

落ち着かない様子で

扇子をいじっている。


「お加減いかがでございますか?」


明子が話しかけるも、

兼家はぽつりと


「お前は誰だ?」


と聞き返す。


「妻の明子にございます」


道長はもう一度伝えるが…


「ああ、そうかそうか

お父上はご息災か?」


藤原家のために明子の父は

過去に犠牲になっているのに

それも忘れてしまったようで

悪びれることなく尋ねる。


「父は太宰府から帰ったあと

身まかりました」


「ああ…それは気の毒であったのう」


父の変貌した姿に

耐えきれなくなったのか

少し苛立たしげに、

道長は足早にその場を

立ち去ってしまった。


が、それはそれで

別の目的がある明子には

好都合であった。


「その扇はよい作りでございますね」


「ん?」


「その扇を頂戴いたしとう

ございます」


兼家は意味がわからないのか

黙り込む。


明子はそばに近づいて

優しげにねだった。


「父上、それを私に賜りませ」


兼家は扇子を見た。


「これか?ああよい。持ってゆけ」


兼家は明子の膝下に

それを放り投げた。


「フフフフフ…

ありがとうございます」


道長の前ではほほ笑むこともない、

という明子はほほ笑んでみせた。



手に入れた兼家の扇を前に

明子は手を合わせている。


「兼家の扇を手に入れたの。

今度こそ息の根を

止めてやります」


そんな妹に呆れたように

兄の俊賢は


「おなかに子もいるのだから

呪詛などやめておけ」


と止めた。


「摂政様は何もせずとも

間もなくであろう」


明子は兄を睨む。


「兄上はいつから

そのような腰抜けになられたの?

父上が無念のうちに亡くなられた時

兄上は震えるほど怒って

おいでだったのに」


俊賢はため息をつく。


「月日は流れた。

自ら命を絶てぬなら

生きてゆくほかはない。

生きてゆくなら

力のある者には

逆らわぬ方がよい。

それが私の学んだことだ」


いつまでも子供ではないのだ。


俊賢なりにどうすれば

生き残れるかを考え

恨みにとらわれぬように

生きてきた歳月がそこにはある。


明子は立ち上がる。


「分かりました。

兄上の生き方をとやかく言う

気はございません。

ただ私は必ずやり遂げます」



その頃、兼家はうなされていた。


怯えたように目を覚まし、

廊下へ出る。


世界がキラキラとして見え、

夢かうつつかもわからない。


「ここはどこだ…あの世か」


「殿様」


異変に気付いた近侍の者が

声をかける。


「お前は誰だ?

晴明を呼べ…すぐ呼べ!」


兼家はそう命じた。



早朝、晴明はやってきた。


「わしの寿命はどれほどだ」


「陰陽寮のつとめは

夜を徹しますので

朝は力が衰え何も見えませぬ」


はぐらかすように

晴明は答える。


「ならば問いを変えよう。

わしの後継は誰じゃ」


晴明は黙る。


「申せ」


「その答えは摂政様の

お心の内に既にありましょう。

そのお答えこそが

正しいと存じます」


冷たいようだが、

晴明からすれば兼家は

長年、ともにやってきた

友のようなものでもある。


あえてそんなことを聞くな、

もっとも大切なことは

己自身で決めろ、

と言わんばかりである。


兼家は力が抜けたように


「もうよい、帰れ」


と命じた。


「ご無礼つかまつりました」


晴明が去ると兼家は、

すすり泣きを始めた。



橘徳子が


「ひい、ふう、みい、よう、いつ、

む、なな、や、ここ、とお」


と数えている中、

帝が隠れる場所を探している。


幼い帝は小さくなり

定子の着物の中に隠れた。


「お上はどこかな?

お上、お上。

女御様、お上はどちらに」


「さあ?どちらにいらしたのかしら?」


「お上、お上〜」


楽しんでいた彼女たちだったが


「皇太后様がお越しあそばしました」


詮子がやってきたのを見て

定子は慌てて頭を下げた。


帝は笑顔で定子の着物の中から

顔を出す。


「母上、ようこそおいで

くださいました」


詮子は


「お上、今は何をなさって

いたのです?」


と尋ねた。


「定子とかくれんぼをして

おりました」


「そう、楽しくてよかったこと」


「母上も一緒にやりましょう」


「今度またね」


「今度…いつ?」


帝は少し寂しそうに聞くが

詮子は


「いつかです」


とピシャリと言った。


「お上、間もなく手習いの

刻限にございます」


「嫌だ!」


帝は定子のもとに逃げた。


「お上、手習いを終えたら

また遊びますので

今は手習いに参られませ」


「また游ぶ?」


帝は定子を見る。


「はい、必ず」


「お上、参りましょう」


帝はしぶしぶ徳子に

連れられていく。


去り際に見つめあう

帝と定子。


詮子はそれを見る。 


やがて帝が出ていくと


「何をしに参ったのか

忘れてしまったわ」


詮子はそう述べた。


「どうぞ、こちらへ」


定子が気を使って声をかける。


「よい。思い出したら

出直してまいる。

帝は大人の中で育ったゆえ

遊び仲間がおらなんだ。

そなたが来てくれて

お顔つきも明るくなられた。

これからもせいぜい遊んで

さしあげておくれ」


「はい」


と答えた定子だが、

相貌を崩さない詮子の

真意はよくわからない…



夜。


また兼家が何とはなしに

廊下へ立ち尽くしていた。


「お寒くありませぬか」


気付いた道長が駆け寄る。


「いや…」


「今日はお体の調子が

よろしいのですね」


「民におもねるようなことだけは

するなよ」


ぼそりと兼家は言った。


「え…

あっ…おもねっては

おりませぬ。

民を虫けらのように

切り捨てる、

道隆兄上のような政は

おかしいと申したのです」


このところ覇気がなかった

兼家であったが、

道長の言葉にハッキリと

こう答えた。


「お前が守るべきは

民ではない」


「では父上の目指される

真の政とは何でございますか?」


「政…それは家だ」


兼家は自信をもって

そう言い切った。


「家の存続だ。

人は皆、いずれは

死に腐れて土に還る。

されど家だけは残る。

栄光も誉れも死ぬが

家は生き続けるのだ」


道長は黙って父を見つめている、


「家のためになすこと、

それがわしの政である」


兼家にとっては

出世も栄達もすべては

家、子供らに引き継ぐため…


「その考えを引き継げる者こそ

わしの後継だと思え」


往年の頃を思わせる

力強い父の言葉に


「はっ」


と道長は頭を下げた。




「お父上の官職があれば

いいのだけど…」


「父が官職を得られるまで

私が働かねばなりませぬので」


「こればかりは何とも…。

失礼します」


まひろの仕事探しは、

難航していた…



「女房としては雇えませぬが

下女なら」


いくら困窮しているとはいえ

かつては父が帝の側近くに

仕えていた娘が、

まさか下女とはいかない…


まひろは断られ続けている。




倫子のもとでは久しぶりに

学びの会が開かれていた、


「まひろさんのことも

覚えておいでです?」


としをりが尋ねる。


「ええ。どうしておられるかと

いつも思っておりました」


「まひろさんの父上は

いまだ官職がないのですってね」


「そうなの?」


茅子が聞く。


「しをりさん、

よくご存知ね」


倫子が心配そうに言った。


「先日、出入りの家司の

屋敷に雇ってほしいと

おいでになったのですって。

まひろさんが」


しをりに続いて茅子も


「私の友の家にも見えたそうです」


と言う。


「そんなに困っておいでなの?」


「ええ」


まさか兼家が為時の

官職を阻んでいるとは

誰も知らない。


倫子はまひろのことが

心配でならなかった。



倫子は改めてまひろを

土御門殿に招いた。


「私のことをご心配いただく

心温まる文を頂戴し

胸が熱くなりました。

ありがとうございました」


「私が婿を取ってから

学びの会も少なくなってしまい

まひろさんとも会えなくなって

とても寂しかったのです。

今日は会えて本当にうれしいわ」


倫子は満面の笑みを見せた。


まひろもほほ笑むが、

遠慮がちに言った。


「お雇いくださるという

ご親切なお申し出には

お礼の言葉もございません」


倫子はまひろのことを

土御門殿の女房として

雇おうとまで、

考えてくれたのだ…


「されど仕事はほかで

決まってしまったので…」


まひろは嘘をついた。


道長のいる屋敷で、

働けるわけがない…


事情を知らない倫子は


「まあ!残念…」


と肩を落とす。


「お許しくださいませ」


それでも倫子は優しい。


「それならこうしてたまに

お訪ねください。

まひろさんとお話ししとう

ございます。

今日はまだ内裏から

戻りませんが、

今度、殿にも会ってくださいね」


まひろはぎこちなく笑う。


「道長様は権中納言に

なられたとか。

目覚ましいご出世、

まことにおめでとう存じます」


倫子は嬉しそうにする。


「そうなの。帝のご即位以来

目覚ましい出世ぶりで

私も驚くばかり」


「ああ…よろしゅうございました」


「あ…」


倫子は懐から紙を取り出した。


「これ、殿の部屋で見つけたの

だけれど大切そうに文箱の中に

隠してあったの」


倫子はそれを広げて見せる。


私が書いた漢詩だ…。


まひろは驚く。


「これ、女の文字ですよね?」


倫子は不安そうに聞く。


「さあ…」


まひろはごまかすしかない。


「漢詩だから殿御かとも

思ったのだけれど、

やはり女文字だと思うのよ」


「はあ…」


と、まひろは首をかしげた。


「あの方が送ってきたのかしら?」


「あの方…」


自分以外に誰かいるのか?と

まひろも気になる。


「高松殿の明子女王様よ。

あの方は盛明親王のもとで

お育ちだから漢詩も書けるのよ」


倫子は元々、書が得意ではなく

寂しそうに言った。


「これ、どういう意味か分かる?」


まひろは紙を見る。


「この詩は陶淵明の詩です。

陶淵明とはいにしえの

唐の国の詩人で

この詩は帰去来辞で

ございます」


いつものようにまひろが

スラスラと学を披露すると


「もういい」


と倫子は止めた。


珍しく苛立った様子の倫子に


「あ…ご無礼を」


と頭を下げる。


「あちらとは文のやり取りが

あったのね。

殿、私には一通も文を下さらず

いきなり庚申待の夜に

訪ねて見えたの。突然」


あの時は倫子もその来訪を

喜んだものだが…


こうして過ぎてみれば、

その時もそれ以降も、

文のひとつもくれない、

というのはさすがに

いささか冷たすぎるだろう。


が、まひろはさらに驚いている。


庚申待の夜…。


まひろと道長が道を違えた

あの夜だったのだ。


「でも漢詩ですからやはり

殿御からということに

しておきますわ」


倫子は笑って見せた。


まひろも笑うが…


あの人はこの文を捨てずに

土御門殿まで持ってきていたの…


と、つい道長の思いに

胸を痛めてしまう。


「姫様」


侍女が止めるのを制止して

幼い少女があらわれた。


「あらあらどうしたの?

今、お客様なのに」


この子はまさか…と、

まひろは視線を落とす。


「まひろさんよ、

ご挨拶して」


少女、彰子は倫子の背に隠れる。


「ごめんなさいね」


「お初に。まひろと申します」


「この子、うちの殿に似て

人見知りするのよ」


子供にも倫子にも、

何の罪もないのだが

さすがに倫子と道長との

子供を見ているのはつらい…


「倫子様、私そろそろ…」


「あら、そう。

働くのは無理でも

また遊びにいらしてね」


倫子は微笑んだ。


「ありがとうございます」


「お帰りです」




まひろが廊下を歩いていくと…


一人の男が前からやってくる。


道長が帰宅したのだ。


2人は思わず見つめ合った…


鳥の鳴き声だけが

あたりに響いている…


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寿命を尋ねる兼家に

安倍晴明は塩対応であった…


さらに後継者に関しては

あなたの心の中にあるだろうと。


これは冷たいようでもあるのだが、

晴明からしてみたら、

兼家という人はおそらくは

共に歩んできた同士のような

一面もあったのではないだろうか。


後継者、という最後の

大切なことまで

俺に決めさせるなよ、と。


あなたはそこまで落ちぶれては

いないはずだろう、

という晴明から檄でも

あったのかもしれない。


が、直後、兼家がすすり泣いて

いるのを見ると晴明という

友にまで見捨てられた、と

感じてしまったのだろうか。


兼家が認知症のようになったのは

4年前に倒れたときにおそらく

一過性の脳梗塞のようになり

脳のどこかに疾患が生じた

可能性が高い…


それに加えて政敵でありつつ

おそらくは友でもあったろう

さきの関白、頼忠はすでに

亡くなってしまい…


左大臣の雅信は道長の

義父となったことで

無理に争うような敵では

なくなってしまった。


位人臣を極める、というが

兼家はまさにその状態だが

生きる目標、というものを

失ってしまったともいえる。


実際に自分は仕事で

認知症の方を見ているが

こういうことをきっかけに

何かが壊れてしまう方は

かなり多くて…


兼家もそういう状態に

なってしまったのかもしれない。



兼家は歴史上は長男の道隆に

自分のあとを譲るのだが…


しかしドラマにおいても、

道長にのみ


「政とは家の存続だ」


と自分の思いを託している。


一方の道長は家の存続より

民を救いたい思いを

強く持っているのだが…


このあたり道長がどんな

政治家になっていくのかは

先が楽しみな部分だ。



さて、倫子とまひろの面談は…


倫子はあの漢詩をまひろのものと

見破ったのか、

そうではないのか…?


ネットでも意見が割れているが

自分は見破ってはいないと思う。


倫子がまひろが陶淵明が云々、と

解説を始めたときに珍しく


「もういい」


と遮ったのは、

倫子がまひろが文の主だと

気付いたという見方も多いのだが…


そうではなくて


「倫子がかけてほしかった

言葉とは違った」


からかな?と、思う。


倫子は本気で意味を知りたかった

わけではなく


「これは恋に関する詩では

ないから大丈夫ですよ、

やはり殿御からでは?」


くらいの友としての励ましを

もらいたかったのでは

ないだろうか。


でも、まひろはいつものごとく

知識披露のような言い方を

してしまったから、

さすがの倫子も少しだけ

イラッときた。


だけどすぐに、これが

まひろなんだと思い返したから


「殿御ということに

しておきますわ」


と笑って見せた。



というほうが、

個人的にはしっくりくるかな。


これに関しては、

本当に気づいたのかどうかは

今後、ハッキリするかも

しれないし、

もしかしたら廊下での

道長とまひろの様子で

ピンとくるかもしれないが…


少なくとも倫子は


「またいらしてね」


と優しく声をかけているので、

まひろに対しての敵愾心は

ないのだとは思う。


ま、それについても

俺の希望的観測も入っているけれど。



後年、まひろは道長と倫子の娘、

彰子に閊える立場ともなるし

せめて倫子との友情だけは

最後まで続いてほしいな、と思う。



道長は倫子に文をあげていないが、

おそらく明子にもあげていないはず。


道長という人は、かつて

まひろと再会したときに


「好きな人がいるなら

歌を書いてあげる」


と言われても


「歌なぞいらぬ」


と返していたくらいに、

歌で女子の気を引きたい、

と思うタイプの男では

ないのだろう。


そんな道長が唯一、

苦手な歌や書を学んででも

気を引きたかった相手は

まひろ一人だったのだと思うと

なかなか切ない。



そして結婚してもなお、

まひろの文を隠し持っていることも。


女は記憶の上書き、

男は別フォルダに保存、

というやつである…