光る君へ第12回あらすじ&感想前編 | NobunagAのブログ

NobunagAのブログ

家庭菜園、ゲーム、アイドルなど趣味の話題や、子育て、介護関係のことをつらつらと書いています。

光る君へ

第12話「思いの果て」前編



寛和二(986)年。


まひろが為時の妾、

高倉の姫の屋敷を訪れると

中からは読経が聴こえてきた。


読経が終わると、

僧が髪の一部を剃り落とす。


「得度、相成りました」


臨終出家といって、

死の間際に出家させることで

極楽浄土へ行けるようにと

願う儀式である。


「ありがたく存ずる」


為時が礼を述べる。


為時は手を握ると


「これで案ずることはない」


と声をかけてやる。


「良かったな」


頭を撫でると高倉の姫は

微笑んだ。


為時がふと庭を見ると

まひろと目が合う…


と、高倉の姫…なつめの

息遣いが荒くなった。


「どうした?何だ?」


「さ…わ…」


「さわ?

娘に会いたいのだな?」


なつめは苦しそうに頷く。


「まひろ」


少し考えるとまひろを呼んだ。


「はい」


「頼みがある」


「はい」


「なつめには娘がおる。

別れた夫のもとで

育てられている。

会わせてやりたい」


為時はいつ亡くなるか

わからないなつめを見た。


「一人で置いてゆけぬゆえ

お前にしか頼めぬ」


自分との子ではないとはいえ、

妾のためにその娘を

連れに行ってくれ、

と自分の娘に頼むのは

為時も心苦しかったろうが

それを頼めるのがまひろという

立派な娘なのだ。


まひろも父の気持ちは

わかっている。


「分かりました。

その住まいは…」



まひろと乙丸は、

為時から教えられた

さわの住まいへと

走っていった。



「失礼します。

さわさんをお連れしました」


まひろはさわを連れて

無事に戻ってきた。


さわは余命幾ばくもない

別れた母を見る。


「入りなさい」


為時が声をかける。


さわは変わり果てた

母の姿に混乱してしまい

立ち止まっている。


「まひろ」


心情を察した

為時がまひろに声をかけると

まひろはさわの背中を

押してやった。


「なつめ。さわだぞ」


なつめは嬉しそうに

泣いた。


さわも涙を流している。



やがて…


為時に慈しまれたなつめは

穏やかに世を去った。


庭には為時のなつめの絆を

象徴するように、

秋を告げる竜胆の花が

色づき始めていた。



まひろは相変わらず

畑仕事に精を出している。


「大きくなったね」


と野菜に声をかけながら

水をかけてやっていた。


「ありがとう」


まひろは野菜たちに、

話しかけている。


そんなまひろの元を

一人の女性が訪れる。


「あの…」


さわであった。


「さわさん!」



「喪が明けて父は漢学の

指南に出ていますし

家のことは私と弟の乳母で

やっておりますので

一日中走り回っております」


畑仕事で汚れた着物を

着替えながらまひろは

さわを招き入れた。


「お見苦しい姿を

お見せしてしまって…」


「いいえ、すばらしいと

思いました」


さわは笑顔を見せた。


「私は父に女子は何もするなと

言われていますので

何もできません。

そのくせ父は今の母の子ばかり

かわいがり私には

目もくれません」


さわはさわで、

辛い暮らしをしているのだろう。


だが、さわは明るく言う。


「でもまあそれも宿命です。

まひろ様のおかげで

母にも会えましたし

庭仕事、お手伝いさせてください!」


「え…でもお父上に叱られません?」


さわはまひろの近くに

にじり寄る。


「まひろ様にいろいろ

教わりとうございます。

黙っておれば分かりません」


屈託のないさわの笑顔に、

まひろは励まされた気がした。



まひろとさわは、

拭き掃除をする。


ふと、さわを見ると

さわは一生懸命に

廊下を拭いていた。



「ほら」


カブを抜くところを見せてやると

さわは


「よし…」


と、力を込める。


「うわっ!」


一気にカブが引き抜けて

2人は楽しそうに笑った。


「あ〜」



夕刻になるとまひろは

母の形見である琵琶を


「こう…」


と教えてやる。


「こうかな…」


さわは恐る恐る弾く。


琵琶の音色が響いた。


「ここを…」


まひろは新しく妹が

出来たようで楽しそうに

教えてやっていた。



「まひろ様はたくさんの

書物をお読みで文も歌もお上手で

たくさんの殿御が文を

送ってくるのでしょうね」


書物の整理をしながら

さわはまひろに憧れたように

言った。


さらから見たまひろは、

様々なことができて

魅力的な女性に見えるのだろう。


「文をくれたのは

一人だけよ」


意外な答えにさわは驚く。


「え〜…ごめんなさい」


さわから見たら魅力的なまひろは

男性からは好かれないのだろうか…


「なぜ謝るの?」


「え…よく分からないですけど

謝ってしまいました。

ハハハ…」


「面白いのね、さわさんって」


素直なさわの様子に

まひろも笑顔になる。


「まひろ様に文をくれた方は

どんな方ですか?」


まひろの脳裏に道長との

逢瀬が浮かんだ。


「今、思い出しておられましたね」


さわは興味深そうに

まひろに近寄る。


「私は物知らずのうつけですが

そういう勘は働くのです」


「そんな不思議な力があるの?」


「そのお方は背が高くて…

シュ〜ッとした感じ?」


そういえばそうかもしれない…


「隠してもお顔に出てますよ、

まひろ様」


「ん?」


2人は笑った。




「まひろの婿の話だが

ひらめいたぞ!」


宣孝が大声を上げながら

やってきた。



「そのようなこと

お願いしておりません」


まひろは乗り気ではないが…


「何度申せば分かるのじゃ。

この家の窮地はまひろが

婿取りすれば万事解決するのじゃ」


為時も宣孝の話に

興味を惹かれていた。


「宣孝殿のひらめきを

聞いてみようではないか」


「父上」


「正四位下の左中将、

実資様はどうじゃ?」


「実資様は恐れ多い」


為時が首をふる。


「実資様…」


まひろは考えこむ。


そういえば見たことは

あったはずだ。


「五節の舞の時の?」


「実資様とは身分が違い過ぎる」


為時は不安を抱く。


「わしは蹴鞠の集いで

付き合いがあるゆえ

話はできるぞ」


「いや〜…」


宣孝は勧めるが為時は戸惑う。


「昨年、北の方が亡くなったそうで

ちょうどよい。

実資様は名高い知恵者ゆえ

まひろの賢さに惹かれるやもしれぬ」


宣孝はまひろを見る。


為時も娘をちらっと見ると


「なるほど…」


と得心した。


「あのお方は父上よりも

学識がおありなんですか?」


「うん、学識ももちろん

おありだが実資様の

すばらしいところは

権勢に媚びないところだ。

筋の通ったお人柄なのだ」


花山天皇に仕えながら、

為時も実資という人物を

間近で見てきている。


兼家の陰謀により、

帝が代えられて

為時らが解任されたときも

このようなことはおかしい、と

真っ先に声を上げていた。


「学識があり人望があり

何より財がある。

まひろの婿に願ってもない。

ん〜…願ってもない方だ。

ハハハ…」


宣孝は満足そうに笑った。



だが…


実資は赤痢にかかっていた。


腹を押さえながら、

肩を貸されて歩いている…



「こんなにも」


宣孝は巻物を持参して

実資の屋敷を訪れていた。


「実資様とは蹴鞠の集いで

親しくしていただいておりますが

先日、お目にかかった時はお健やかで

病の気配なぞありませんでした」


「3日前ににわかに…

頂戴いたします」


「どうぞお大事にと

お伝えくださいませ。

今から文をしたためますので

その巻物と共に実資様に

お渡しくださいませ」


宣孝は頭を下げた。


「お会いになれますが」


「いやいや、いやいや、

いやいや、いやいや…

今日はご遠慮いたす」


大げさに断ると宣孝は

文をしたため始めた。


そこへ足音が聴こえてきた。


顔を上げると、

腹を押さえた実資が

息も絶え絶えの様子で

厠へと歩いていた…



「あれは駄目だ。

もう半分死んでおる」


宣孝は実資の様子を報告した。


「なんと…」


「次を探そう」


「もうおやめくださいませ」


まひろは拒むが…


「そなた一人のことではない。

かすみを食ろうて生きていけると

思っておるのか。

甘えるな!」


宣孝はまひろを叱る。


本気で心配しているのだ。



だんだん調子を取り戻した

実資は久しぶりに日記を

書いていた。


「鼻くそのような女との縁談あり」


実資は宣孝がくれた

巻物を開く。


そこには書の他に

絵も入っている。


実資は思わず辺りを見回し、

その絵を眺めた。


「おお…」


そこに描かれていたのは

透けた衣装を着た

女性の絵だ…


「おお…見えておる」


実資は好色そうな

笑みを浮かべた…


実直で高潔な実資だが…


しょせんは男だ…。


しかしそんなことを

考えるほどに身体は

回復したのだろう…



まひろは大根を洗いながら

自分のこれからを考える。


見知らぬ人の北の方になる…


妻になってくれ、

という道長の言葉が

思い出された。


妾になってくれ、

と言った道長をまひろは拒み、

ならばどうすればよいのだ、と

道長は怒った…


まひろは頭の中で

その言葉を反芻する。


ならばどうすればよいのだ…



道長は異母兄の道綱と

酒を飲んでいた。


「俺ね、従四位下にしてもらったのは

いいのだがどこ行っても

相手にしてくれぬのだ」


自嘲気味に笑ったあと、

真顔になり道綱は尋ねた。


「どうすればいいと思う?」


「はあ…」


道長にはうまい言葉が

思い浮かばない。


「俺は道長より11も年上だが

うつけだからな」


そう言って道綱は酒を飲む。


「ご自分のことをそのような…」


「東三条殿に行ったと

言ったら母上は怒るかな?」


道綱は道長の隣に座った。


「は?」


「摂政様、

今でも母上のところに

お通いなんだよ。

知ってた?」


「ああ、そうなのですか」


道長は聞き流すように言い、

酒を口に運んだ。


素直な道綱は謝る。


「すまぬな。

嫌なことを言って」


道綱なりに母のことで

苦労をしているからこそ

つい、嫡妻の息子である

道長に嫌味を言ってしまったに

違いない。


「そのようなことで

嫌にはなりませぬ」


「俺にも妾はいるし

それなりに大事にしているけれど

妾の側から見るとまるで

足りぬのだ」


ふいにそんなことを言い出す

道綱に道長は尋ねた。


「それはお母上のお考えですか?」


道綱は首を横にふる。


「何も言わないけど

見ていたら分かる。

嫡妻は一緒に暮らしているけど

妾はいつ来るかも分からない男を

待ち続けているんだよな。

男は精いっぱいかわいがってる

つもりでも…。

妾は常につらいのだ」


母の辛さを見てきたのに

自分も妾にはきっと

そんな思いをさせている…


優しい性格なのだろう。


道綱はそういう女のことを

気にかけているのだ…


道長は妾になれ、

と軽々しく言ってしまった

自分のことを思い出した。


ならばどうすればよいのだ…


まひろと同じように、

道長はその言葉を

思い出していた。


己の世界に浸ってしまった

道長を見て道綱は


「聞いてる?」


と尋ねた。


「聞いております」


道綱は杯を置いた。


「何だよ、いつもしれっと

しおってさあ!」


道綱は道長の頬を挟みこんだ。


母が違っても、

この兄は道長のことが

可愛いのだろう。



兼家は左大臣、

源雅信を招いている。


「わざわざお出ましいただき

申し訳ない、どうぞ」


「摂政様、何用にござりましょうか」


「実は愚息、道長のことで

お願いがございまして。

道長が左大臣家の姫君を

お慕い申しておると

申すのでございます」



嘘ではなかった。


道長はまひろと別れた夜、

父の元を訪れると

願いがある、と申し出ていた。


「左大臣家に婿入りする話、

おすすめくださいませ」



「息子の願い、

なんとかかなえてやりたいとも思い、

左大臣様のお胸の内を

お聞かせいただきたく

お招きしたのでございます」


右大臣だった頃と違い、

摂政となり左大臣よりも

上の立場になった兼家だが

あくまで雅信のことは

立てている。


丁寧にお願いしているところが

兼家の世渡りの上手さでも

あるのだろう。


が、雅信は兼家のことを

警戒もしている…


「それは光栄にございますが…」


雅信が気にしているであろう

ところを兼家は先に潰しにかかる。


「これから道長にも

左大臣家の婿にふさわしい

地位を与えてゆきますので

どうか道長にご厚情を賜りたく

お願いいたします」


「そのような過分なお言葉…」


兼家は構わず畳み掛けた。


「道長にご承諾いただいたと

伝えてよろしいですかな」


「ちょっとお待ちくださいませ。

娘の気持ちも聞いてみませんと」


「どうかお力添えを賜りたく

お願いいたします」


摂政自ら頭を下げられると


「ああ…はあ…」


雅信は困惑するしかない…


雅信の人の良さをうまく

ついて頼み込む…


兼家はやはりやり手だ…



その左大臣家では、

いつもの姫たちの集まりが

行われている。


しをりがまひろに尋ねた。


「何故、下女にいとまを

お出しになったの?」


「父が官職を失いましたので

人も雇えなくなりました。

それで何もかも私がやっております」


茅子もしをりも、

下を向いている…


「あ…でも畑仕事もやってみると

楽しゅうございますよ。

うりも菜っぱも大きくな〜れと

毎日毎日語りかけますと

本当に大きくおいしく

育つのです。

床を拭くのも板目が

時に龍に見えたり、

川の流れのように見えたりして

飽きません」


まひろは楽しそうに語るも、

高貴な家の出である

茅子やしをりはなんと

返したらいいかわからず

黙っている。


倫子はそんな二人を

チラリと見ると、

笑顔になりながら


「板目、私も見てみましょ」


と立ち上がった。


「あ…私も」


「では私も」


倫子が歩き出すと、

しをりと茅子も

あとに続いた。



「これはまるで

えぼしのよう」


倫子が板目についている

汚れを見ながら言う。


「これは龍のよう」


「あっ、まるで

川の流れのよう」


茅子もしをりも、

楽しそうに見始めた。


「おやめなさいませ、姫様」


赤染衛門は止めるが


「これはまるでうりのようだわ」


倫子が言うと2人も笑った。


「本当」


まひろは気付いた。


倫子はまひろが孤立しないよう

助けてくれたのだ。



「ではまた」


「おつつがなく」


しをりと茅子が帰っていく。


「またの日に」


まひろは倫子に礼を言った。


「先ほどはお助けくださって

ありがとうございました」


「まひろさんこそ、

堂々としていてお見事でした」


倫子は窮地に負けないまひろを

褒めてやった。


「これからもずっと

この学びの会にはいらしてね」


「はい」


まひろは笑顔になる。


「私、まひろさんが

いらしてくださるようになってから

この会が大層、楽しみになりましたの」


「私も最初は居心地が悪いと

思いましたが、

このごろはここに寄らせて

いただくことが

癖になってしまいました」


「癖?ウフフ…」


倫子もまひろも、

心から笑い合う。


立場も身分も違うが

2人には友情が生まれている。


そんな2人を猫の小麻呂が

見つめていた。



「父から土御門殿の左大臣様に

こちらをお届けせよと

預かってまいりました」


道長は雅信のもとを

訪れていた。


「おお…ご苦労であった」


雅信は文を開く。


「此者道長也、摂政」


と書かれている。


なるほど、この目の前の

若者が道長…


「素早いのう、

摂政様は」


困ったように雅信は言う。


「広く立派なお屋敷で

ございますが

こちらで姫様方の集まりが

あると聞きました」


「娘のための学びの会だが

遊んでおるようなものらしい」


「今日もやっておられるのですか?」


「何故そのようなことを…」


「何故と聞かれましても困りますが…」



そんな二人の様子を遠くから

倫子は母の穆子と

見ている。


「涼やかだこと」


穆子は道長を気に入ったようだ。



しかし、雅信は気に入らない。


文を見ながら


「なめておる」


とため息をついた。


「父上」


倫子がやってくる。


「いかがいたした」


「父上、私は…

藤原道長様をお慕いしております」


必死な倫子の様子に

雅信は口をぽかんと開けた。


「打毬の会でお見かけして以来、

夫は道長様と決めておりました」


「待て…待て…

そなたは猫しか興味が

なかったのではないのか?」


そんなはずがないのに、

雅信はそんなことを言った。


「そのようなこと

申したことはございませぬ」


「そうなのか…」


「道長様をずっと…

ずっとお慕いしておりました。

それゆえほかの殿御の文は

開かなかったのでございます」


困った雅信は、

荒い息をつくしかない…


「道長様をどうか私の婿に。

倫子の生涯一度のお願いで

ございます」


「摂政家でなければ

よいのだがのう…」


雅信は可愛い娘との

板挟みになり、

情けない声をあげた。


「かなわねば私は生涯、

猫しかめでませぬ」


倫子は膝をついた。


「父上のお力で

どうか道長様を私の婿に…。

お願いでございます」


「道長殿から文が来たことはあるのか?」


「いいえ。私が道長様のお目に

留まっているかどうかも

分かりませぬ」


「留まったようではあるがのう」


娘の様子を探るように

雅信は答えた。


「そのようなことを

摂政様が仰せであった」


「まことでございますか!?」


嬉しそうな倫子。


倫子は父にすがるように

腕をつかんだ。


「どうかお願いです。

どうか、どうか…どうか…」


ついには泣き出した倫子に、

娘が可愛くてたまらない

雅信にはもはや、

否とは言えなかった。


「ああ…よしよし、

よしよし…

ああ…泣かんでもよいではないか。

わしは不承知とは言っておらぬのだから。

ああ、よしよし…」


穆子が言質をとった、

とばかりに


「よかったわね、倫子」


とやってくる。


「何だ?お前…」


「父上は今不承知ではないと

仰せになりましたよ。

この話、進めていただきましょう」


倫子は母に抱きつく。


「あなた、よろしく

お願いしますね」


穆子は否応なしに、

ぴしゃりと言った。


「泣くほど好きでは

致し方ないのう…」


こう女たちに推されては、

雅信も納得するしかなかった。


__________________


為時が妾にしていた、

高倉の女さんことなつめは

亡くなった。


為時なりにちゃんと最期まで

大切にしていたことは

臨終出家までさせてあげて

いることからもわかる。


思えばこの真面目で、

世渡りが下手で実直な為時が

まひろが幼い頃から

この妾のところにだけは

ずっと通っていたわけだが…


なつめには別れた夫との間に

娘、さわもいたが

離れ離れになっていた…


もしかしたらなつめは

若い頃から身体が弱くて

娘を育てることすら難しく

夫から見捨てられて

しまったのではないだろうか。


為時はそんな彼女のことを

見捨てることができずに

妾とすることで養ってきた…


家が困窮して妻のちやはが

毎日、願掛けにも行っているのに

妾のところに通うため

たびたび家を留守にする

為時のことは幼いまひろが

非難していたとき…


母のちやははまひろが

大人になればわかる、

父上は私のことも

まひろのことも好きだと

言い聞かせていた。


もしかしたら優しい為時

だからこそこの妾のことを

支えなくてはいけない

理由があったのだとしたら

その言葉にも納得はいく。


いや、なんのことはない、

いくら真面目な為時でも

妾くらいはいるのが、

この時代の文化だったのだ、

と言い切っても問題はないのだが…


こうした理由があったほうが

ドラマにの為時らしいとも言える。


少なくともなつめが

亡くなったときに、

画面には竜胆の花が

映し出されていたのは

この為時となつめとの絆は

やましいものではない、と

暗示している演出だったのでは

ないかと思う。


おそらく為時の若い頃が

明かされることはないだろうから

このあたりはそれぞれの

解釈で良いと思うけれど。



さて、為時がさわを連れてこい、と

実の娘に頼み込むシーンには


「これはやってはいけない」


「ダメな父親」


と批判している人が多少いたが、

全然、違うと思う。


後にさわはまひろにとって

妹のような友人のような

関係になっていくのだが、

まひろは母の形見であるはずの

琵琶まで触らせて、

弾き方を教えている。


そういう娘だからこそ、

為時はさわのことを

呼んで来てくれるように頼んだ。


これはまひろのことを

信頼しているからに他ならない。


まひろはこれまでも、

手伝えることがあれば手伝う、

と為時に言ってきたが

為時はさすがに妾のことで

娘に手伝わせるのは悪いと

遠慮してきた。


が、最期のときを迎えるにあたり

まひろにだけ頼めることを託した。


それはきっとまひろへの

強い信頼があるからで

まひろもそれを理解したから

さわのもとへ走った。



この、さわというキャラは

元になる人物が歴史上も

存在しているし、

おそらくは紫式部の

友人、従姉妹とされている

筑紫の君、かなと思う。


血縁関係が入り組んだ

時代であるから元をたどれば

さわが従姉妹であっても

おかしくはないだろうし

そこをうまくドラマとして、

落とし込んでいると思う。


少なくとも為時がなつめという

妾を持っていたことは

まひろにとって不幸を

もたらしたのではなくて

友に出会うきっかけとなった。


後半においてまひろは、

道長の妾になってもいいと

思うようになるのだが、

そのきっかけとして

為時は妾のなつめのことも

ちゃんと愛していた、

そのことをまひろは理解した…


その流れを作るためにも

為時となつめの話は必要だった。


ドラマとして非常によく

出来ていると思う。




さて、まひろの婿話に

突然、実資様が出てきて

驚いたが…


「あれは駄目だ、もう半分死んでおる」


などと


「じいさんはやめておきましょう」


的な扱いをされているのに

エロ絵には興奮して

生気を取り戻しているあたりが

実資というより秋山竜次であるw


実資は宣孝や為時が

褒めていたように

少なくとも仕事上は実直で

筋の通ったいい男なのだが

こういう抜けたところもあるのが

人間臭くていい。


日記に


「鼻くそのような女との

縁談あり」


などと書いているのもいい。


これまで日記、日記と

キーワードとして出てきたが…


ろくなこと書いてないじゃないか、とw


もっとも史実上は実資が残した

小右記という日記が、

今でも残っており貴重な

一次資料となっている。


紫式部は実資のことを

嫌っていたかというと

そうでもなくて、

実資の生真面目さを

褒めるようなことも

書いている。


が、ドラマ上は鼻くそ女

あつかいをされているので

後年、それがバレるのも

面白いだろう。


そもそもこのドラマの

実資とまひろが結婚したら

実資の日記は後年、

大作家となるまひろから

ダメ出しされそうだし

また、そんなことをしてる

この夫婦はききょう、

清少納言から毒舌で

叩かれそうである。


だから結ばれなくて

良かったのだろう…!



道綱の描写もよかった。


道綱はただ明るいだけでなく

母の寂しさを見てきたし

実際には妾の子として

辛い思いもしてきたから

つい優しい道長には

お前の父は俺の母のところへ

今も通ってるんだぞ、と

嫌味を言ってしまう。


でも、そんな自分をよくないと

思い直してすぐに謝っているし

何より普段から嫡妻の子である

道長を慕ってもいる。


そしてそんな自分すらも

妾を作っていて、

その妾に母のように

辛い思いをさせていることに

胸を痛めてもいる。


妻をたくさん持つことは

決して楽しいことでもない。


そのことを道長に

教えてくれる良い兄貴でもあるのだ。




倫子さまが天才的な

アイドル様すぎて、

ものすごくいい人であるために

胸が痛む、という

凄まじい展開である…


道長の嫡妻となる倫子さまは、

まひろのライバルになることは

最初からわかっていたことだ。


が、そういう存在ならば

もっともっとどこか

意地が悪い、だとか

まひろに嫌がらせを

してくるお姫様…


少なくとも高貴な生まれなので

まひろのような下級貴族を

見下している、くらいの

描写があったならば

視聴者だって


「あの倫子とかいう

クソ女のせいで!」


と恨めるので気楽なのだが…


しかし倫子さまには、

そんなクズのような部分が

まったくないのである…


まひろの家が困窮し、

畑仕事や掃除など

本来は姫様がやることでは

ないことをしている、

というどうしても周りの姫から

浮いてしまう話題を出すと…


それをさりげなく助けるため、

左大臣である自分の家にも

板目に汚れがある、

というのをネタにして

皆が笑えるような雰囲気を作り

まひろを助ける。


貧乏であることを恥じない

まひろのことを立派だ、

と褒めてあげてまひろが

来てから私はこの会が

楽しみになった、と

心から彼女を歓迎しているのだ。


もはや聖人である。


聖なる存在すぎる。


倫子さまは悪いことなど

何ひとつしていない。


まひろが道長を好きだ、

なんて知らないからこそ

父上にどうか道長と

結婚させてほしい、と

頼んでいるだけ。


単なる善人なのである。


ただの善人を描き通す事で

これだけ視聴者を痛めつける

鬼畜のような脚本を書く

大石静は恐ろしすぎる…!!




あと、後半でわかるが

聖なる倫子さまに比べて

道長はけっこうなクソ野郎である。


まぁ、でも道長なりに

まひろのことを忘れよう、

と思ったなら…やや

許せなくもないが…


いや、やっぱりゲスだな。


でもこの道長が光源氏の

モデルとなるのならば

こういう面があるのも、

また人間らしくはあるだろう。



なにせ倫子さまが、

純粋すぎて何一つ

悪いことはしてない、

というのが魅力的だし

その純粋さの陰では

路傍の花は踏み潰されていく、

というのが悲しい現実でもある。


何度も言うが、

倫子さまは悪くないのだ。


生まれたときから

スーパーアイドルで

一番星を宿しているから

他の女は引き立て役に

なってしまうだけ。


…でも、そんな倫子さまは

心から幸せ?


本当のことを知ったならば、

まひろと同じように

とても傷つくことだろう。



小麻呂よ、お前は倫子さまを

守っておくれ…!!