どうする家康第28回あらすじ&感想後編 | NobunagAのブログ

NobunagAのブログ

家庭菜園、ゲーム、アイドルなど趣味の話題や、子育て、介護関係のことをつらつらと書いています。

どうする家康

第28話「本能寺の変」後編






本能寺。


信長は若い頃のことを

思い出していた。


父・信秀にはかなわないと

悟った少年時代から

さらに時が経ち、

信長は真っ赤な着物を着た

若者へと育っている。


「懐かしい部屋じゃろうが」


かつて信長が英才教育を

受けていたあの部屋で

信秀は待っている。


「ん?忌まわしき部屋か?」


2本の棒をバシバシと

叩きながら信長を

からかうように言う信秀。


「遊びにも飽きた頃じゃろうが。

かかってこい!」


と、信秀は手に持っていた

棒のうち一本を信長へと

放り投げた。


そして構える。


信長は気のないような

素振りで様子を見ていたが

素早く一閃。


信秀の手から棒が

転げ落ちる。


すかさず拳を握った

信秀だったが、

信長は即座にその首へと

棒を突きつけた。


これが戦場だったら

信秀は死んでいるだろう。


完敗、である。


信秀は楽しそうに笑い出した。


「ハッハッハ…

わしは…もうすぐ…死ぬ。

家督を継げ」


信長はすでに遥かに

自分を超える存在へと

成長している。


そのことを確信した

信秀は信長へと、

後を託した。


「己一人の道を生きろ…」


かつての教えを今一度、

父に確認する信長。


「そうじゃ」


その答えに信長は少し

寂しそうに信秀に

背を向けた。


そんな息子が心配に思ったか

信秀は付け加えてやった。


「どうしても耐え難ければ

心を許すのは一人だけにしておけ」


「一人だけ…」


「こいつになら殺されても

悔いはないと思う友を、

一人だけ」


それが信秀の最後の教えとなった。





寝所に差し込む月明かりを

信長はじっと見ていた。



同じ頃、家康は


「あなた様は兄のたった

一人の友ですもの」


という言葉を噛み締めていた。


そして瀬名の言葉を

改めて考える。


「兎はずっと強うございます。

狼よりもずっとずっと、

強うございます。

あなたなら出来ます」


あなたなら出来ます…


それは信長を討つことを

意味しているのか?


それは瀬名の望みなのか?


家康は木彫りの兎を

両手に抱く。


「待っててやるさ、

やってみろ」


あのときの穏やかな

信長の顔が思い出され

家康は苦しそうに


「うあぁぁぁーッ!!!」


と、叫びをあげた。


家臣達はその家康の

言葉にならぬ思いを

別室で聴いている。




六月二日、早朝。


寝所で休む信長は、

何者かの気配に気づき、

刀を抜く。


一人の覆面の男が、

侵入してきた。


斬り結ぶ信長。


いつの間にか侵入者は

複数に増えている。


そのうち何人かを

斬り倒した信長だが

その隙をつかれて、

背後から刺されてしまう。


内臓を損傷した。


ほぼ、致命傷といえる場所だ。


口から溢れ出る鮮血が、

白い寝間着を染める。


信長は背後の男の

覆面をはがすと、

そこに現れた顔は…

家康…


「…俺の代わりをやる

覚悟ができたか…?

だが…簡単には代わらんぞ…」


どこか楽しそうにそう言う信長。


「家康…家康…家康ー!!」


叫ぶ信長。



気がつくと信長は

その覆面の男をも、

倒してしまっていた。


そこにある顔は、

家康ではない。


見知らぬ忍びだ。


異変に気づいた森乱が


「敵襲!敵襲にござる!」


と駆け込んできたが、

乱はすでに致命傷を

負った信長の姿を見て

驚愕した。


「上様…!」


信長は背に刺さっていた

刀を引き抜くと、

フラフラと立ち上がる。


「家康…家康は…家康…家康…」


乱の姿にも気づかぬように、

ただ家康だけを求めて

歩き出した。




本能寺に向かって、

家康のものではない

何者かの軍勢が集まり

辺りは騒然としている。


家康から待機を命じられ、

本能寺を見張っていた服部党。


「…どういうことなんだい…?」


大鼠が驚き問いかけるが、

半蔵にもわからない。




「敵襲!敵襲!!」


「であえ、であえ!!」


本能寺内は混乱に

包まれていた。


すでに多くの兵たちまで

侵入してきている。


信長は血まみれになりながら

庭に出てくると、

三人、四人と次々に

敵兵を討ち倒していく。


槍を突き刺し素手になると


「お乱!!」


と声をかける。


森乱はすかさず、

代わりの槍を放り投げ、

信長はそれを手に取り、

さらに周りの敵を追い詰める。


あまりの信長の強さに、

怯んだ敵兵たちは、

後退りを始める。


そこを一刺し…


まとめて三人をまるで

串団子のように貫き、

怯えてうずくまる相手を

蹴り飛ばすと、

その刀を奪い取り

さらにとどめをさした。


まさに鬼神、

魔王の如き強さである。


「上様をお守りしろ!!」


と声がかかり、

警護の者たちが集まる中、

信長は呆然と


「家康…家康は…」


と、つぶやきながら

再び室内へと戻っていった。




そんな事態も知らず、

家康は家臣達を呼び出していた。


「情けないが…

決断できん…」


「殿…」


平八郎が心配そうに

声をかける。


「ここまで精一杯の

用意をしてきたが…

今のわしには…

到底、成し遂げられぬ」


家康は優しさの象徴、

あの木彫りの兎を前に

語った。


「無謀なることで…

皆を危険に晒すわけにもいかぬ。

全ては…全ては…

我が未熟さ。

すまぬ」


家臣達にも家康の思いは

よくわかっている。


彼らも初めて、

市から信長という男の

隠してきた思いを

知らされたのだから。


信長は家康のことを

嫌っていたわけでもなければ

苦しめたかったわけでもない。


ただ、結果としてそれを

招いてしまっただけだ。


酒井忠次が


「何を仰せでございます。

我らこそお力になれず

申し訳ございません」


と頭を下げた。


「今はまだ、まだその時では

ないということばかり」


と、石川数正。


もっとも信長のことを

討ちたかったはずの

平八郎ももはや考えを

改めていた。


「そうじゃ、いずれ必ず…

そのときはくる」


小平太も平八郎の隣に座る。


「そうじゃ…いずれ必ず」


「いずれ必ず」


万千代も同じように

声をかけた。


平八郎が皆の思いを

代表するように、

力強く述べる。


「いずれ必ず…天下を取りましょうぞ」


いずれ必ず信長を討ちましょう、

ではなかった。


天下を取ろう、

その時期は今ではない。


復讐のためではなく

瀬名に託された安寧な世を

作るために。


忠次も同じ思いだ。


「それまでお方様の思い、

大切に育みましょうぞ」


皆が家康を見つめる。


家康はただ無言で頷き、

その目から一粒の涙が

零れ落ちた。


木彫りの兎は、

それでいい、と

言わんばかりに

家康を見ている。




信長を討つことを諦めた

家康ら一行は堺を

後にしようとしていた。


そこに穴山梅雪が、

ちょうど通りかかる。


「徳川殿!京にお戻りになる

そうで。

我らも郷土へ帰ることと致す」


と挨拶した。


穴山梅雪…武田家臣で

あったとはいえ、

瀬名のことを理解し

尊重してくれた、

家康にとっては大切な

盟友でもある。


「穴山殿、あまり

お構い出来ず、

申し訳ございませんでした」


「いえ、充分に堪能いたしました。

ただ…」


「ただ?」


「…主君を裏切って得た平穏は

虚しいものでございますな」


と寂しそうに言う。


それも、そうか…と

家康も悲しげに微笑った。


自分がしようとしていたのは、

そういうことなのだ。


穴山梅雪は甲斐の民を

守るために、

武田勝頼を見限り

織田・徳川へと味方した。


しかし梅雪は、

勝頼にとっては

身内も同然の間柄だったし

きっと苦しかったに

違いない。


梅雪も、勝頼も。


家康はまさにそれと

同じことをする寸前で

あったのだ。


梅雪はおそらく計画は

知らなかっただろうが、

あの鯉をめぐるやりとりを見て、

家康と信長との間にある

微妙な空気感くらいは

感じていたのかもしれない。


だからこそあえて、

主君を裏切ったところで

後ろめたいだけだぞ、と

こうして伝えてくれたのかも

しれなかった。




そこへ大きな声で


「殿ー!!!」


と走ってくる男がいる。


茶屋四郎次郎だ。


「殿ー!!殿、殿っ…!!」


力尽きたかのように、

倒れ込む。


「四郎次郎、如何した!?」


常ならぬ様子の四郎次郎に

家康が尋ねる。


四郎次郎は辺りに人が

いないのを確認すると

報告する。


「洛内…軍勢が押し入り…

上様…信長樣には…

お討ち死にあそばされました!!」


家康は言葉を失った。


つい先ほど、

自分は謀反を止めたはず…


なぜ?


なぜだ…?


「誰が!?誰がやった!?」


当然、抱くであろう疑問を

忠次が問いかける。


「明智…光秀…!」


「あ…明智…」


「間違いなく…

上様は間違いなく討たれたのか!?」


「おそらく…」


数正の問いに四郎次郎が答える。


「首をとられたのか!?」


「わかりませぬ!」


「まだ生きておられるやもしれん!」


万千代が進み出た。


「京へ戻って明智を討ちましょう」


家康も忍びたちは

待機させている…が…


「相手は大軍勢じゃ!」


と忠次が止める。


明智の謀反ともなれば、

供回りの者と限られた

忍びで構成されている

自分たちとは訳が違う。


「殿!すぐお逃げなされ!

殿は狙われております。

明智が殿の御首を取れとの

号令を発しました。

中には殿が下手人だと

思っている者たちも!

明智の兵、名を挙げたい浪人、

褒美目当ての民百姓…

四方は敵だらけと

思し召せ!!」


その通りだった。


いつの間にやら、

家康らを取り囲むように

怪しい男たちが、

集まりつつあった…。





一方、秀吉のところにも、

信長討たれるの報は

もたらされていた。


「上…様…あー…ッ!!

なんちゅうこんや、

上様!上様!」


秀吉は大げさなまでに


「なんで上様が!

上様、上様ぁ!!」


と喚く。


自身の千成瓢箪を

見つめながら。


そして冷たい声で秀長に命じる。


「…今すぐ毛利と和議を結べ」


秀長が察したように

頭を下げた。


「直ちにひきけえす。

この猿が仇を討ったるがや!

この猿が、徳川家康の首を

取ったろまい!!」


「いや兄様違うんだわ!」


慌てて秀長が止める。


「なんだい?!」


「…やったのは徳川でなく

明智だわ」


「あ、明智…?」


てっきりあの家康との

一大決戦を予期していた秀吉は

呆気にとられた。




明智光秀は香を焚き、

香りを楽しんでいる。


「織田信忠、討ち取りまして

ございます!!」


と報告が入り光秀は

にんまりと笑った。


「残るは家康だけ!

断じて逃すな!

出来れば生け捕りにせい!

…あのくそたわけの口に

腐った魚を詰めて殺しちゃる!!」


冷静だった明智光秀も、

この状況につい、

地元訛が出ている。




家康一行は山中を走っている。


家康はただ討たれたという、

あの男のことを考えながら

ひた走っていた。


(信長…信長…信長…)


「敵襲じゃ!」


との声がした。


すぐに追っ手に囲まれる。


「家康じゃ!家康の首をとれ!」


乱戦が始まった。


家康は、強い。


かつて氏真との一騎討ちでも

個人の武勇は見せたが、

あの三方ヶ原においても

勇猛な武田の兵士達を相手に

見事に切り抜けたのが家康だ。


並の者達では歯が立たない。


(信長…信長…信長…信長!)


刀を落としても、

家康は素手で格闘し

大勢の敵を圧倒している。




信長も最期のとき、

その名を呼んでいた。


友の名を。


「家康…」




(信長…)


「家康…」


(信長…)


家康は地面に転がりながらも、

落ち葉を投げつけて、

相手の目をくらませ

徹底して交戦する。


戦国の戦いとは、

決して綺麗な華麗なものではない。


命を奪うため、

奪われぬために

どんな手でも使う。




「家康」


炎の中を歩く信長。




(信長…!)


家康は相手を蹴り倒した。


信長仕込みの格闘技であろう。




「家康、どこじゃ…

どこにいる…」


自分を討ちに来てくれると

約束してくれたはずの

友の名を呼びながら、

信長は炎の中を彷徨っていた。


「家康…家康…」




後ろから羽交い締め

されながら家康も

友の名を叫んだ。


「信長ァー!!!!!」




荒い息を吐きながら、

戸を開けた信長。


真っ白だった寝間着は、

深い紅に染まりかつての

うつけの狼だった頃の、

家康と戯れたあのときの

信長の姿がそこにある。


信長は多くの敵兵の姿を

確認する。


そして嬉しそうに


「家康よ…!」


と呟いた。


やっと、会える。


が、その兵士達が

指した旗に見えるのは

桔梗の紋…


奥から


「どけい!」


と命じる声がし、

男が現れる。


「…はぁ…」


信長は心底、がっかりしたように

ため息をついた。


「…なんだ…お前か…」


「貴公は乱世を鎮めるまでの御方!

平穏なる世では無用の長物!

そろそろお役御免…」


長々とした口上を

述べる光秀を信長は遮る。


そんなことはわかっているのだ。


だから自分は家康にこそ、

この天下を、

命を譲ろうと思ったのだから。


「やれんのか!!!

キンカン頭!!!!」


キンカン頭とは、

頭の天辺だけが

禿げている、

という蔑称でもあった。


光秀の顔色が変わるが

信長はさらに叫んだ。


「お前に俺の代わりがぁ!!」


「くそたわけが!!

信長の…首をとれい!!」


光秀が号令すると、

敵兵が一斉に襲いかかってくる。


すでに自身も傷を

負っているであろう森乱が


「上様」


と、新しい槍を手渡した。





「信長ァー!!!」


そう叫ぶと家康は、

再び目の前の相手を蹴り、

後ろで押さえていた敵を

吹き飛ばした。


そしてさらに前からくる

相手を巴投げの要領で

後ろへと投げ飛ばす。


これも、信長から

教えられた技だった。



(あなたがいたからじゃ…)


「この世は地獄!

俺達は地獄を生き抜くんじゃ!」


若い頃、信長はそう言って

厳しく激しい稽古を

家康に施した。


「周りは全て敵ぞ!

弱ければ…

弱ければ死ぬだけじゃ!」


信長は信秀から教わったことを

家康のその身にも叩きこんだ。


「ほらかかってこい!

どうした白兎!!」


信長との年齢差は

8歳ほどある。


大人と子供に近い。


信長はあしらうように、

家康を痛めつけたが

家康も負けなかった。


「違う!竹千代は

兎ではない!違う!」


そう叫ぶと若き日の家康は、

信長を地面に引きずり倒した。



そのときと同じように、

家康は相手を地面に

押さえつける。


(あなたに地獄を見せられ

あなたに食らいつき、

あなたを乗り越えねば、と…)



「竹千代は虎じゃ!

虎なんじゃぞ!」


信長を抑え込むことに

成功した子供の頃の家康。


あのとき信長は、

嬉しそうに微笑った。


「竹千代。

地獄を生き抜け」


ここが大事だ、と

ばかりに家康の胸を叩いた。


「そしていつの日か、

わしがお主の首を奪い、

お前のことを食ろうてやる!

覚悟しておけ!」


そんなふうに戯れる。


だが、家康は言った。


「竹千代が、そなたを

食らってやる!」


信長はそれを聞くと

心から嬉しそうに褒めた。


「そうじゃ!それでええ!」


信長は大笑いすると、

何度も家康の肩を叩いた。


あの日、信長には

生涯の友が出来たのだった。




家康はあのときのように、

相手を絞め落とす。


(弱く臆病なわしが

ここまで生き延びてこられたのは

あなたがいたからじゃ…)




奮戦していた森乱も、

二人から腹を突き刺され

ついに絶命寸前。


信長は結局、もう

戦うことなく背を向けると

炎の中へと歩みだした。




家康は相手を絞め落とすと、

突き飛ばして荒い息をついた。


「殿!ご無事で!?」


「お怪我は!」


それぞれ戦っていた

家臣達が戻ってくる。


「皆、大事ないか?」


逆に家康は尋ねた。


家康は、強い。


それが改めてわかる戦いだった。


家康自身が戦いながら、

それを思い出したことだろう。


「皆の者、誰も死ぬな」


家康はそう命じた。


「生き延びるぞ!」


家臣達はその声にまた

走り始める。


あとに続こうとした家康は、

京…本能寺の方を見やった…





信長は炎の中へと、

ただ一人ゆっくりと歩く。



(さらば、狼…

ありがとう…我が友…)



家康は心の中で信長に

別れを告げた。



その声はもうすでに

あの世へ渡っていたであろう

信長には届いたろうか。




信長は最期まで光秀には

自身に槍もつけさせなかった。


覇道を歩みし魔王のような男。


結果、誰も信長を殺すことは

出来なかった。


彼を終わらせてくれるはず

だったのは「友」である

家康、ただ一人だけだった。


が、その家康は来なかった。


それは「友」による裏切りか?


違うだろう。


家康には「友」は討てないのだ。


それもあいつらしい、

と思っただろう。


一人、信長は炎の中へと還る。


狼は、消えた。



__________________________________________



手負いであっても、

信長は非常に強かった。


それなのになぜ、

最初の刺客にいきなり

刺されてしまったのか?


これを疑問に思う人は

いるだろう。


普通に考えれば薄闇の中での

狭い室内での戦闘については、

当然、忍びのほうが有利な

はずではある。


にしても、あの信長が

あれだけあっさり

刺されるのは納得が

いかない!!


と思うのもファンというもの。


おまけにその後の信長が

猛烈に強いのだから

おかしいじゃないか、と。


あれは演出的な意図としては、

白い寝間着の信長が

刺されたことでその白が

血で赤く染まることにより

かつての


「うつけ」


すなわち家康と楽しい時を

過ごした時代へと、

戻っていくことを狙って

いるのではとは思う。


返り血で良いのでは?


というのは最初感じたが、

それだと


「弱っていく狼」


を表現できない。


が、演出の都合で

急に弱くなったり

強くなったりしてたまるか!


もわかる。


じゃあ、なぜ刺された?


簡単に言うとあのときの

信長というのは


「死んでもいい」


と思っていたからだろう。


元々は明智軍の忍びが

入ってきたことが、

想定外なのである。


信長は家康と約束をしていた。


だから入ってくるとしたら、

自分に恨みを秘めた

家康自身であると

思っていたはずだ。


好きで刺されたいとも

思わないだろうけれど、

死んでも良いと思って

戦っているのだから、

隙はいくらでも出来る。


そのうえで一度、

刺されておくくらいで

家康との強さのバランスは

取れると思ったのではないか?


だからこそ


「これではまだ代われないぞ」


とけしかけた。


家康は強い。


それは信長が知っている。


なにせ自分が育てたような

相手なのだから。


信長自身はもっと強いが、

背中も刺されているし

本気で戦えばさすがに

手負いではやがて

家康に負けるだろう。


おそらくはそれが、

信長の理想の死に方だった。


ところが、

気がつくと信長は

その刺客を逆に倒して

しまっていた。


弱すぎるのである。


相手が家康でなかったことに

気がついた。


ここからの信長が

強くなったのは


「家康に会うまでは死ねない」


という理由が出来たからだ。


まぁ、あんなに出血して

動けるか!


というツッコミはあるだろうが、

そこはもうドラマだから

あまりそれを言うのは、

野暮というもの。


ただ、自分は人の死を

実際に何度も見ているけれども

ものすごい出血をしていて、

普通は亡くなるだろう、

という状態でもかなり

保つ人というのはいる。


人の身体、生命は不思議だ。


今にも亡くなりそうなのに

ギリギリ生きていながら

家族の姿を見たあと、

亡くなる人もいる。


あるいは


「もう頑張らなくていいよ、

よくここまで頑張ったよ」


と言ってあげることで、

やっと息を引き取る人もいる。


ドラマの信長というのは、

そういう尋常ではない状態で

戦っていたと思えばいい。


絶対にあり得ない、

とは言い切れないのだから。




信長を討つことに、

あれだけこだわっていた

平八郎。


彼の思いというのは、

もっとも家康に近かったのかも

しれない。


内心はどこかで本当に

それでいいのか?


という思いを抱えていたはずだ。


けれどもだからこそあとには

引けないという思いがあって、

何度、小平太に言われても

頑なだった。


が、市から信長が抱えてきた

孤独であったり家康への

本当の思いを聞いたときに

家康がそうであったように

平八郎は心が揺れた。


だから計画を諦めた家康に

賛同すると同時に平八郎は


「いずれ必ず信長を討ちましょう」


ではなくて


「天下をとりましょう」


に目標を変えた。


これは非常に大きな

ターニングポイントだろう。


行動する動機が復讐では、

その後が長続きしない。


しかし天下をとる、

民の安寧のために、

というポジティブな方向へ

彼らは舵を切ることが出来た。




穴山梅雪は別れ際、

裏切って得た平穏は寂しい、

と伝えた。


梅雪はおそらく計画は

知らなかっただろう。


だがあの鯉のやりとりで

あまりに冷徹になっている

家康の姿を見ている。


もしかしたら家康は

信長を討とうとしているの

ではないか?


くらいは感じたのかもしれない。


もちろん単純に自分の心境を

述べただけかもしれないが。


ただ、梅雪の言ったことは

実際に家康がやる予定だった

信長への謀反をしてしまった

明智光秀の命運を暗示する

内容でもあった。




最後の最後、

信長が戦いを放棄したのは

とても良かったし、

まず助からないと思うが

あえて生死不明なのも

良かった。


史実でも信長の首は

見つからなかった、

と言われている。


あの状況下において


「首を渡さない」


というのは明智光秀にとって

大きなダメージともなる。


信長の首さえあれば、

もう信長は死んだのだ!と

世間に喧伝できるのに

それができない。


現に実際は信長生存説すら

当時もささやかれていた。


しかしドラマとして

良かったのは、

信長という人が明智光秀に

ついては一切、

眼中に置いていないことだ。


麒麟がくるのときには、

その明智光秀(十兵衛)に

固執し


「(十兵衛なら)是非もなし」


だったのが今回は


「(家康なら)是非もなし」


だっただけ。


あるいはそう思っていたのに、

戸を開けたら光秀がいました、

ではそれこそ


「(どうでもいいから)是非もなし」


だったのだろう。


是非もなし、是非におよばず、

名台詞がないことに

批判もあったようだが、

あの光秀を見たときの

ため息こそが


「是非もなし」


を表していたはずだ。


また、敦盛を舞わなかった

ことに関してもそうだろう。


家康が相手であったなら、

海老すくいの礼だとばかりに

舞いたかったかもしれないが、

信長にとっては光秀相手では

そんな気にもなれなかった、

ということだろう。


戦意すら失っているのだから、

どうしようもない。




自分は信長という人は、


「倒せない人」


であってほしかったので

死のシーンがなくて良かったと

思っている。


自分にとっての信長とは、

ゴジラのような破壊神、

というイメージもある。


ほとんどの場合、

人間はゴジラを完全に

殺すことができない。


戦い、暴れ疲れたゴジラは

大抵は海へと還っていく。


シン・ゴジラにおいては、

凍結させられたことで

人間がいったんの勝利は

得たものの再生を

予感させるラストだった。


もちろん織田信長という人は、

実在した人間なので

怪物でもなんでもないのだが

それでも何人の手も届かない

孤高の存在であってほしい。


少なくともフィクションの世界では。


自分にとって、

今回の本能寺の変は

理想的な信長の消え方を

描いてくれたと思う。




信長、家康、と呼び合うのは

BLがすぎるだとか

批判もあるようだが…


そもそも劇中においては

信長の家康に対する感情は


「恋愛」


ではなくてあくまでも


「友情」


である。


面白いからネタとしては

恋愛的に自分も扱うが、

テーマは「友」への思い、

のほうが適切だろう。


ひたすら孤独だった信長は、

父から一人だけなら

友を作ってもいい、と

言われてそれを支えに生きた。


その相手が家康だった。


高圧的に出てしまったのも、

離れてほしくなかったからだし

瀬名や信康の死については

信長が命令したわけではない。


ある意味では家康の

逆恨みみたいな面もあったが

信長はそれを受け入れている。


なぜなら「友」だからだ。


「友」に恨まれたなら、

こいつになら殺されてやろう、

それが信長の気持ちだった。



ではその家康が来なかったことに

信長は絶望したのか?


これは解釈が分かれるだろうが、

光秀がいたことに失望はしても

家康がいなかったということは


「自分を討つのをやめてくれた」


「共に天下を支えていこうと

考え直してくれた」


ということは信長にも

伝わったはずだ。


それは家康にとっても

信長は「友」だからである。


信長は「友」とは自分を

殺してもいい相手だが、

家康にとっての「友」は

殺してはいけない相手。


だから家康は

「友垣のような家臣」に

囲まれている。


最期に家康に会えなくて

寂しかったとは思うが、

そのことに信長は

絶望はしていなかっただろう。


自分を討ちに来なかった

家康のことをあいつらしい、

と感じただろうし


「俺とお前は一心同体」


と言った相手だ。


一心同体、とは二つのものが

絆で一つになっていることを

意味している。


信長が家康になら

殺されてもいいと思えたのは

自分が死んでも自分と同じ

一心同体の存在、

家康がいるから、である。


ならば家康を残して、

自分が消えていっても

その志はちゃんと

家康が継承してくれるのだから

後悔はなかったはずだ。



通説とは違うところも

大きかったが、であればこそ

いつもとは一味違う

面白い本能寺の変だった。


岡田准一さんの好演には、

本当に感謝しています。