鎌倉殿の13人最終回感想中編 | NobunagAのブログ

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最終回「報いの時」中編

やはり最終回だけに
書きたいことが多すぎて、
再び長くなりそうなので、
3回に分けます…



大江広元は泰時は
六波羅探題となり、
自信をつけたようだと褒める。

小四郎も嬉しそうにするが、
先の帝の件については、
二人はやはり殺してしまうしか
ないだろうと話す。


そんな折、小四郎が以前、
運慶に依頼していた
自分に似せた仏像が届いた。

しかしその仏像は、
仏とはとても思えない
顔の崩れた異形のものだった。

部下たちに運慶を
捕らえさせた小四郎は

「さんざん待たせた挙げ句に
これは何だ?」

と怒りをにじませる。

運慶は悪びれることもなく

「今のお前に瓜二つよ」

と答える。

「お?斬るか?
斬りたきゃ斬ればいい。
どのみちお前はもう、
引き返すことはできん」

運慶は挑発するように笑う。

「殺すまでもない、
連れて行け…」

運慶が去ったあと、
小四郎はその仏像を
壊してしまおうと刃を向ける。

が、その場に昏倒してしまう。


医師の見立てでは、
小四郎が倒れた原因は
アサの毒…とのことだった。

「毒を盛られたというのか…」

小四郎に思い当たるのは
ただ一人だ…


介抱にきたのえを問い詰める。

「あら、バレちゃった」

のえはあっさり認めた。

「そんなに政村に家督を
継がせたいか」

哀れむように言う小四郎に
のえは怒りをぶつける。

「八重は頼朝様と戦った
伊東の娘…比奈は北条が
滅ぼした比企の出…
そんなおなごたちが
産んだ子供がどうして
後を継げるのですか!」

「もっと早くお前の本性に
気づくべきだった」

小四郎は自嘲するように笑った。

その言葉を受けてのえは答えた。

「あなたには無理。
私のことなど少しも…
少しも見ていなかったから!
だからこんなことになったのよ!!」

これ以上口論しても
仕方ないとばかりに
小四郎は執権が妻に
毒を盛られたなど、
許されないこと…
ここから出ていけと告げた。

「死に際は大好きな
お姉様に看取ってもらいなさい」

そう言うのえに小四郎は

「行け!!」

と怒鳴った。

しかし踵を返し再び
小四郎に近寄るとこう言った。

「私に頼まれ毒を手に入れて
くださったのは、
あなたの無二の友、
三浦の平六殿ね」

小四郎は愕然とする。

「夫に死んでほしいと
相談したらすぐに
用意してくださいました。
頼れるお方だわ」

この言葉は何よりも
小四郎の心を打ち砕いた…


政子と実衣は自分たちの
生涯を振り返っていた。

「全成殿の血を絶やしたくなかった」

今、思えばどうかしていた…

実衣は本音を漏らす。

あなたはそんなこと考えなくていい、
人には身の丈というものがある…

そう諭す政子に

「悪気がないのはわかるけれど
今のは言わなくていいこと」

と釘をさした。

「誰だってね、
一生に一度くらいは
人の上に立ってみたいと
思いたくなるものなの」


「まぁ、一杯やってくれ」

小四郎は平六を呼び出していた。

「のえが身体に効く薬を
用意してくれてな、
それを酒で割るとうまい」

渡された杯を見て、
平六は躊躇する。

自分が渡したはずの毒だ。

自分は身体の調子が良いからと
遠慮する。

「ひと口だけでも飲んでみろ」

執拗に勧める小四郎。

「長沼宗政が白状したぞ。
また裏切るつもりだったらしいな」

目論見がバレたことにも
平六は動じない。

もし裏切ればこっちが
負けていた。

自分が裏切らなかったから
鎌倉は勝てたともいえる、と
いつものように切り抜けようとする。

しかし小四郎の狙いは
そんなことではない。

「飲まないのか?」

とまた小四郎は酒を勧める。

「それとも他にも飲めない
訳でもあるのか?」

もはや友に全て悟られている…

察した平六は覚悟を決めた。

「では、いただくとしよう」

ひと口で飲み干す。

「俺が死んで…
執権になろうと思ったか?」

問いかける小四郎。

「まあ、そんなところだ」

「お前には務まらぬ」

「お前にできたことが
俺にできないわけがない!」

平六は小四郎に詰め寄った。

「俺は全てにおいて
お前に勝っている…
子供の頃からだ!!
頭は切れる、見栄えは良い、
剣の腕前も俺のほうが上だ!
…お前は何をやっても不器用で…
のろまで…そんなお前が今じゃ
天下の執権…俺はといえば!
…結局、一介の御家人にすぎん…
世の中不公平だよな!!
いつかお前を越えてやる…
お前を越え…越えて…やる…
いかん!!!」

呂律が回らなくなる平六。

「これだけ聞けば満足か!?」

床に倒れ込んだ。

「よく、打ち明けてくれた」

小四郎は満足げに頷いた。

「礼に俺も打ち明ける。
これはただの酒だ。
毒は入っておらん…」

「本当だ、喋れる」

平六はあっさり回復した…

「俺の負けだ」

「平六…この先も太郎を
助けてやってくれ」

小四郎はこれまでと変わらず、
平六に泰時のことを頼んだ。

殺そうとしたはずの
友からのまっすぐな言葉に
平六は呆れる。

「まだ俺を信じるのか?」

「お前はいま、
一度死んだ」

その言葉を受け、
平六は改めて正面から
小四郎に向き合うと答えた。

「これから先も北条は三浦が支える」

「頼んだ」

そこにはかつての友としの
二人の姿があった。

「良い機会だから
もうひとつだけ教えてやる」

酒を注ぎながら平六は言った。

「大昔、俺はお前に教えてやった…
おなごは皆、きのこが好きだと」

「しっかりと覚えている」

「…あれは嘘だ。
でまかせよ」

小四郎は目を丸くする。

「早く言ってほしかった…」

「フッ…」

二人は微笑み合うと、
酒を酌み交わした。




運慶が作った仏像は、
一見、ガネーシャ…
日本で言うと大聖歓喜天の
出来損ないにも見えた。

ガネーシャは象の頭をした
インドの神様であり、
異形ではあるけれども
福の象徴、そして
快楽などを司る神様
でもある。

その反面、障害の神様
とも言われていて、
様々な面を持っている。

公式にはあの仏像は、
邪鬼の頭ということに
なっているし、
運慶自身も小四郎のことを
揶揄するように煽っていたから
あまり良い意味は
込めていないのだと思うが…

ガネーシャのなり損ない、
みたいな意味では
運慶から見た小四郎は
自分の欲や快楽に
飲まれた怪物であり
神様になりきれない存在、
ということだろうか。

ただ、小四郎は運慶のことを
俗物だとか批判しつつも
自分によく似た人間だと
認識していたと思う。

そういう運慶ならば、
自分が抱えてきた苦しみや
葛藤をしっかりと
表現してくれると期待したはず。

少なくとも物語中盤までは
運慶は小四郎を悪くなった、
と評しながらも、
その裏にある苦労を
理解してくれていた。

ところがその運慶からも
自分は見放された。

そんな小四郎の孤独は
より深くなってしまったのだろう。

運慶の没年が小四郎と同じ、
そして数ヶ月早いことから
もしかしてこの流れでは
運慶が処刑されてしまうのか、
とも思ったのだが
そこまではされなかったのは
幸いではある。



のえは不幸だとは思う。

あなたには見破れない、
私を見てくれていなかったから。

これは図星だろう。

そもそも後半明かされたように、
平六がおなごはきのこ好き、
などと小四郎に吹き込んだのが
一番の災いだったw

のえという人を見たとき、
どう考えても小物というか…

少なくとも小四郎と
覇を競ってきた男たちと
比較してしまうと、
思慮が浅く愚かには見える。

が、そんな愚かで
頭も良くない女の本性は
小四郎には見破れなかった。

窮鼠猫を噛む、という
言葉があるが、
まさにそれだろう。

小四郎は強敵に対しては
万全を期して挑んできたが
一番身近にある、
小さな悪意には無防備だった。

まぁ、女を見る目がないと
言ってしまえばそれまでで
八田殿も騙されていたからな…

ただしのえにもっと
愛情を注ぐことができていたら
たとえ家督は泰時に…
となったとしても、
ここまでのえの不満を
蓄積させることは
なかったかもしれない。

小四郎は家督を泰時に
譲っただけではなく、
のえの兄を巻き込んで
しまったことを
謝罪もしなかったし
朝敵となることについても
のえに相談もしなかった。

この扱いのひどさは、
小四郎自身が行って
しまったことである。

考えてみれば小四郎の人生で
八重や比奈に見せた優しさを
のえには少しも見せなかった。

これが彼の人生の中で
失敗なのかもしれない。

そのことが報いとなって、
自分に跳ね返ってきて
しまっているのが、
この状況である。

小四郎の中でもそれは
充分、理解もできるだろうし
だからこそのえに
ここから立ち去れとは言っても
命を取ることはなかった。

もちろん、のえを
罰して殺すなどすれば
執権が妻に毒を盛られた、
という醜聞を晒すことにも
なりかねないから、
政治的な配慮もあった
かもしれない。

いずれにせよ、
のえとの関係性というのは
愛し合う夫婦のそれではなく
形式的なものでしか
なかったのだろう…



小四郎と平六の会話は、
政子と実衣との会話と
対をなしていると思う。

実衣は分不相応なことを
望んでしまった。

そんなことをしなくても
幸せだったはずなのに、
と政子は思うかもしれないが
人はそう単純ではない。

何かの機会があれば、
自分が上に立ちたいと
思ってしまう瞬間は、
誰にでもある。


平六が不幸だったのは、
見栄え…はどちらが上かは
知らないけれども、
その他は彼の言う通りで
あったことだろう。

平六は常に二手三手先を
考えながら動ける男だった。

謀略に関する知恵は、
小四郎に負けていない。

数多い御家人たちが、
次々と倒されていく中で
三浦が生き残れたのは
まさに平六の才覚によるものだ。

剣の腕前に関しては、
戦いの強さという意味では
義経や畠山重忠が
目立つ存在だったが、
実は平六はかなり強かった。

善児を撃退したり、
トウとの戦いでは
彼女をあしらいながら
俺の女になれ、と
軽口を叩くくらいの
余裕すら見せている。

少なくとも個人の武勇では
小四郎よりも一段上だろう。

年を取ってからも
剣の稽古をしている姿が
見られていることから
普段から鍛錬も続けてきた
はずである。

そういう平六が一介の
御家人の立場に過ぎないのに
少し年上とはいえ、
自分よりも劣る(と思っている)
小四郎が執権の座にいるのは
納得がいかないという
気持ちになってしまうのは
仕方ない面はある。

小四郎自身は、
努力を重ねてきたとは
思うけれども…

傍から見たときには
小四郎だけにとどまらず
北条家そのものが、
政子が頼朝に気にいられた
結果として成り上がったに
過ぎない。

平六の三浦家は親の代から
北条とは親友同士、
そして姻戚関係にもある。

何かひとつ選択が
違っていたならば
三浦が北条の上にいた
可能性はあるわけで、
世の中は不公平だと
平六が感じるのも、
理解できなくはない。


平六が毒を飲んだことについては
ここまでバレてしまったなら、
いっそ小四郎と共に死んでやろう
という思いに至った他に、
あえて毒ではないとわかりつつ
本音をさらけ出した、
の2パターンが考えられると思う。

前者であれば破れかぶれ、
というよりもそれが
平六なりの誠意でもあり
覚悟であるだろう。

いくら狡猾とはいえ
平六もこの時代を生きた
一人の武士である。

策を仕掛けるときには
己の命くらいは
賭けていたはずだ。

また、後者であれば
小四郎の策に乗るふりをして、
弱った友に自分の思いを
正直に話そうという
気持ちになったのかもしれない。

どちらであっても、
平六らしい行動だと思う。

彼もまた悪人ではあるが、
葛藤を抱えながらここまで
きたはずである。

小四郎を友だと慕う気持ちも、
裏切ってでも上に立ちたかった
三浦の当主としての思いも、
どちらも本当だろうから。


本来ならば鎌倉の命運を
左右する決戦で、
裏切ろうとしたこと。

そして、執権である
小四郎の毒殺に関与したことは
万死に値する謀反だろう。

しかし小四郎は、
平六が酒を飲んだ姿を見て

「一度、死んだ」

とした。

つまり平六は許された。

そしてここまでされてなお、
自分の命をも狙った友に
最愛の息子の将来を託す、
と頼み込んでいる。

なぜかといえば、
平六ほど狡猾に、
そして上手にこの鎌倉を
うまく立ち回って、
生き延びた男は
他にいないからだ。

現にこうして、
自分の命まで狙われても
小四郎自身が、
平六を許したいと
思えるほどの存在なのである。

そういう男であるから、
これまでも頼ってきたのだし
自分が仮に命を落としたとき
泰時を助けてくれるのは、
平六しかいないではないか。

上皇よりもずっと
的確に自分の命を狙い、
脅かしたたった一人の男、
それが平六だ。

恩讐を超えて男として、
彼を認めているのである。


この二人の友情というのは、
とても複雑だろう。

これが平六でなかったなら
小四郎は容赦なく、
首をはねただろう。


それにしても、
平六が子供の頃についた

「おなごはきのこが好き」

というつまらない嘘が、
何十年経って実を結び、
きのこ好きを装った女に
彼が騙され、
後に毒を盛られる…という、
小四郎の命を奪う
きっかけへとつながった。

まったく予想も
していなかった結果へと
結びついたのだが、
ある意味では平六は天然で
最強の策士といえるだろう…