■認知症鉄道事故裁判について■
認知症の方の徘徊を
家族が24時間365日、
監視することは
まず不可能であろうという
判決がなされ、
今回の件については
損害賠償責任は発生しないと
判決がなされました。
この件については
きわめてまっとうな
判決が出たと思います。
恐らくは認知症に関わる
ほとんどの方、
とくに在宅介護をされている
家族の方々にとっては
ほっと胸を撫で下ろした方も
多いと思います。
僕も介護業界、
とくに認知症に携わる
仕事をしている立場としては
喜ばしい判決だとは
感じています。
しかしその一方で、
忘れてはならないことも
あります。
それは鉄道会社の側からすれば
やはり被害そのものは、
受けているのだということ。
つまり今回のような
裁判を持って、
訴えた側である鉄道会社は
認知症に無理解な、
悪魔のような会社であると
感情的に断じては
いけないということです。
ものすごく簡単かつ、
バカバカしいけど
わかりやすい事例をあげます。
あるとき僕は、
自分の子供達にあげようと思い、
おまんじゅうをふたつ、
自分のケアマネ部屋に
保管していました。
しかしふと確認してみると、
ない!!
どこにもない!w
で、とあるピック病の
利用者さんの手や口元に
まんじゅうについていた
粉がいっぱいついているわけです。
怪しいよねw
実に怪しいのですよ。
しかし食べましたか?
などと聞いても認知症ですから
食べたこと自体忘れてますし、
とくにピック病の人は
善悪の判断もできないのだから
他人のものを食べていいか
悪いのか、
それ自体がわからないのです。
これはね、僕からすれば
ものすごい葛藤があるわけですよ。
まずまんじゅう食われた
被害者ですからね。
それも自分のまんじゅうなら
ともかく、
カワイイ我が子に
あげるためのまんじゅう。
それもなるべくわからないように
多少隠しつつ保管はしたんです。
当然、その場にいた
スタッフのことを
責めたくなるじゃないですか。
なんでちゃんと見てないんだとw
しかし一方で、
スタッフの言い分はわかるのです。
どんなに見守りしたって
あっという間なんだから
防げませんよと。
その通り。
たぶん僕も防げません。
まあ結局この件が
どうなったかというと
不問に付すわけですよ。
たかがまんじゅうですから。
まんじゅうだからね、
それで済むんです。
しかし対象が何であるかなんて、
わからないわけです。
もっと高価なものを
盗んでしまうとか、
壊してしまう、
そういうことも当然あります。
他人の服を破いてしまう、
ゴミ箱に捨ててしまう、
ウンコまみれにしてしまうことも
あるのです。
もちろん我々は
それを防ぐためにいるのだから
当然極力見てるようには
しています。
でも夜勤中など
一人の時間もあり、
他者の部屋へ訪室してるときや、
あるいはスタッフだって
トイレくらいは行くから、
目が離れる瞬間は
やっぱりあるんですね。
事件、事故というのは、
そういうときにこそ
起きるわけです。
今回の鉄道事故についても
奥様が10分ほど居眠りを
してしまった間に、
外へ出てしまったといいます。
常に監視をするのは
本当に難しく、
認知症の方は
そんな相手の隙をつくのが
とても上手です。
だからこそ、
見ている方の責任を
問うことはもちろん、
あってはならないのですが、
被害を受けたほうからすれば
では誰が補償してくれるのかって
話にもなるんですよね。
認知症の方が個人で
損害賠償保険に
入っておくという手はあります。
今日の新聞にはそんなことも
書かれていました。
しかし、まずそういう
契約がきちんと行える人が
どれだけいるのだろうかという
話です。
さらにいえば、
認知症の症状が
ひどい方の中には
家庭環境自体が恵まれてない
という方も非常に多いです。
保険に入るということは
当然ながら保険料を
払わねばいけないのですが、
それ自体払えない、
払ってくれる家族もいない、
などという家庭がいくらでも
存在します。
僕自身はこういうときには
国が補償してあげてほしいと
思います。
介護保険が損害賠償を
兼ねたっていいじゃないかと。
まぁ、現状は無理ですよ。
介護保険自体が
全然足りてないから、
介護報酬もカットされて
施設がガンガンつぶれているのが
現実ですからね。
しかし認知症の人とはいっても
立派なわが国の国民なのです。
国が守ってくれなくて
どうするんですか?
認知症の人が事故を起こした、
家族の責任は問わない、
被害を受けた鉄道会社は
泣き寝入りしなさい。
これでは鉄道会社だけでなく
今後、認知症の方から
なんらかの被害を受ける人は
みんな認知症の方を
避けるようになってしまいますよ。
実は今回の判決は、
危険な側面もはらんでいるのです。
みんなが認知症の方を
受け入れられる世の中に
するためには、
認知症の方のすることに対して
常に我慢をしなさい、
ということを求めたら
いけないのです。
そんなことを強いられるなら
関わりたくないと思うのが
普通の人間です。
僕ら介護スタッフとか、
介護家族はそうじゃないとしても
普通の人は違うんですよ。
ものすごく極端な話ですが
たとえば精神疾患のある人が
事件を起こしてしまった。
法的には罪に問えない。
しかし感情的に許せるか?
許せない。
それが人間です。
認知症の人を認めよう、
関わろう。
もし何かがあったら
国も補償しますよ、
そんな仕組みにしなければ
いけないと思います。
認知症の方が暮らしやすい
世の中というのは、
なにも過剰に認知症の方だけを
守ることがベストなのでは
ありません。
認知症の方が起こしてしまう
事件だったり事故だったり、
そういうことも想定しながら
被害を受ける人がいたら、
その方たちも補償が
受けられるような体制も
整えていくべきです。
認知症の方を守り、
家族を守り、
周囲の人も守る。
それが大事なのです。
今回の判決は認知症の方と、
その家族は救われたと思います。
その点では大いに評価できる
判決です。
しかしながら大きな課題も
残した判決であるということを
忘れてはいけません。