■認知症を知ろう7■
認知症の診断・治療
認知症は治らない病気だから
病院に行く必要はないと
考える人もいるかもしれません。
しかしそれは違います。
認知症といっても
さまざまなタイプが存在します。
もちろん治るケースはレアですが、
治らずとも症状を軽くしたり、
進行を遅らせることはできます。
そのためにも早期受診、
早期診断、早期治療はとても重要です。
治る場合
最初のほうでも述べましたが
正常圧水頭症、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫…
このような病気が認知症を
引き起こしている場合、
外科的な処置によって劇的に改善する
場合があります。
僕の知っているケースでも、
脳に水がたまってしまって
認知症の症状が出てきたという人は、
その水を抜く手術をして
見事に回復しました。
また薬の影響で認知症に
なっている人もいます。
比較的知られているのは、
パーキンソン病の薬が認知症を
悪化させる場合があります。
また、パーキンソン病だと思って
パーキンソン病の薬を出していたら
実はパーキンソン症状を伴った
レビー小体型の認知症だった、
というケースも知っています。
これらはなかなか一般のお医者様では
わかりにくいかもしれません。
可能であれば専門医を
受診することが大事です。
たとえばよく知られる「アリセプト」という薬。
認知症に効く、
と昔から言われていますので
医師から処方されることも多く、
おそらく皆さんも
僕ら介護関係者も
しょっちゅう目にする薬です。
たしかにアルツハイマーに対しては
それなりに効くのですが、
これが前頭側頭型認知症であった場合、
悪化させるという報告もあるのです。
そういった情報は、
認知症専門の先生でないと
あまり知らないことが多いです。
近所の先生、かかりつけの先生との
関係を壊したくない、
そんな理由で認知症をあまり知らない
先生にかかり続けた結果、
病気を悪くしてしまった方もいます。
病院を替えろというのではありません。
内科や総合的な部分は、
今までの先生に診ていただけばいいとして、
認知症については専門医を、
一度でもいいから受診しておけば
そのあとにつながるのです。
専門の先生に診ていただいて
確定診断が出たり、
ある程度状況が落ち着いたら
あとは普段通っている先生に
引き継いでもらうのもいいでしょう。
先生次第でそんなに変わるか?
と問われれば
変わります。
と僕は答えます。
僕は医療関係者でもないし、
病院の先生は怖いな~という
イメージもいまだにあるくらい、
皆さんと同じ普通の庶民です。
だから無理に医療をヨイショしても
意味がないです。
それでも先生次第で変わる、
と断言できるほど、
専門医の力は偉大だという
経験に基づいた実感があります。
認知症にとっては
家族の理解
介護の方法
医療のアプローチ
この3点はとても重要です。
早期受診してからすること
早期受診をして、
初期の認知症だということがわかり、
ある程度治療の方針も固まりました。
そんなときに何をすべきか?
一番大事なことは、
お金の問題を解決しておくこと
です。
いやらしい話、
生々しい話を、
と眉をひそめる方もいると思います。
でも実際に認知症が進行するにつれ、
こういう問題を抱えたままだと
後々まで影響を及ぼします。
それが裁判にまで
なってしまった家もありました。
また、死ぬまでひたすら
お金のことだけを
気にし続けていた方もいました。
とても不幸だと思います。
本人の判断能力があるうちに、
自分の老後はどうするか、
お金をどうするか、
誰に託したいか、
しっかり決めておくべきです。
エンディングノート、
というものも最近注目されてますが、
そういうものを作っておくのもいいと思います。
いつまでも物事を冷静に考えたり、
字が書けるわけでもありません。
出来るときにしておけば、
それに越したことはありません。
いつまでも出来るというのは
今が元気だからそう感じるだけで、
未来のことはわからない。
少なくとも年を取れば取るほど、
出来ないことは増えるのです。
もちろん認知症に限らず、
老いるとはそういうことです。
まして認知症になれば本当に
何の判断もできなくなります。
「私は100歳まで生きるから
お金やら何やらのことなんか、
そのころちゃんと自分で考える!」
と豪語していた元気なおばあさんがいました。
認知症も軽度でしたので、
周囲も
「まぁ、この人は大丈夫かな」
などと軽く考えていたようですが、
90歳のある日に骨折してから
一気に認知症が進み、
何の判断もできなくなってしまいました。
もちろんお金の問題など
自分ではどうにもできません。
こういうことは誰にでも起こります。
認知症になると死ぬのか
これはテキストなどでは
取り上げにくい問題だと思いますが、
誰しもが気になることだと思います。
実は中学校で認知症の講義をしたときも、
「認知症になるとどうなりますか?
死にますか?」
と聞かれたことがあります。
死ぬ病気。
そう思うと怖いというイメージも
強いと思います。
極端な話にもなりますが
ぶっちゃけ、死にます。
ただ…死ぬといっても、
一般的に認知症になるのは
80歳くらいからでしょうか。
そしてアルツハイマーなら
10年くらいかけて進行して、
やがて身体の機能も落ちて
死に至ると言われています。
(大抵は飲み込みの機能が落ちての、
肺炎が多いと思います)
レビー、ピックではもう少し
進行が早いかもしれませんが、
いずれにせよ数年、
というところです。
もしも80歳の方が認知症になり、
85歳とか90歳で、
身体が動かなくなって最終的に
肺炎か何かで亡くなったときに、
それを
「認知症のせいで死んだ!」
と感じるでしょうか?
たぶんそうではないと思います。
多くは老衰だな、
と感じるでしょう。
それは受け容れなくてはならない、
人間に必ず訪れる、
最期の瞬間なのです。
介護の仕事をしていると、
どうしても人の生と死を
目の前で見るので
宗教的な考えに近くなってきます。
死んではならない、
と考えたら怖いですよね。
でも
必ず死は訪れる、
だからその日まで
楽しく過ごしたい。
たとえ認知症になっても。
僕が理想とするのは、
そういう姿です。
認知症が発端とはいえ
老衰としての死までは
誰にも止められないと思います。
ただし気をつけたいのは、
そうした高齢者の認知症ではなく
若年性の認知症であった場合。
たとえば50歳や60歳で発症し、
10年で亡くなってしまうとしたら
やはり恐ろしいことだと思います。
僕の見てきた若年性の方であれば、
10年以上生きておられる人も多いですが、
やはり身体的にはかなり早く
低下する印象もあります。
その場合、先ほど述べたように、
相続のことなども含めて、
やり残し、心残りがないように
本人も周りも心がけることが
必要だと思います。
つづく